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プロへのルートのあるジュニアユースクラブを辞めたい息子、諦められない母問題

サカイク

プロへのルートもあるクラブなのに、ジュニアユースをやめたいと言われた。小学生時代はバリバリ活躍してたのに中学以降出場時間も減り、頑張っても評価されないのが理由と言う。

親としては今つらくても数年後素晴らしい未来があるのではと期待するし、プロへのルートがあるので居続けた方が良いと思うけど、どうしたらいい? と悩むお母さんからのご相談。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、今できる4つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<古い価値観の夫にけなされる息子を助けたい問題

 

<サッカーママからの相談>

息子は中学生なので、サカイクの本来の対象からは外れていると思いますが迷ったので相談を送らせていただきました。

先日、中学1年生の息子に今所属しているクラブをやめたいと言われました。

今のクラブには小学4年生から所属し、今年ジュニアユースに上がりました。

保育園から小学3年生までは地元のスポ少に所属していましたが、このクラブに行った理由は、息子に「プロサッカー選手になるにはどうすればいいの」と聞かれた事がきっかけです。

やめたい理由を聞くと、「いくらやっても監督、コーチに評価されない」とのことでした。

ちなみに小学年代はバリバリ活躍していました。

私も普段の練習を毎日見てるわけではないのですが、週末の試合を観に行くと出場時間が他の子たちに比べて極端に短いようでした。

ただ、カテゴリが上がってまだ半年程ですのでやめるには、もったいないような気がしています。オフの日も走ったり自主トレをしている息子を見ると一年、二年後には状況はかわり素晴らしい未来があるのではないかと思ってしまいますし、プロへの道もあるクラブなので、夢を叶えるためにはここにいた方が良いのかなとも思います。

一方で息子の今の苦しい、悔しい気持ちは痛いほどわかります。

このまま辞めさせるべきでしょうか? 何かアドバイスありましたらよろしくお願いいたします。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

対象と外れているなんて、まったくそんなことはありません。小学生のサッカーママやパパたちは、お母さんの悩みを共有することで、中学生になったらどんなことがあるのかがわかります。勇気を出してメールしてくださり、ありがとうございます。

さて、息子さんは所属するクラブを辞めたいと言う。でも、お母さんはプロにルートがある(と言われている)このクラブにいるほうが夢を叶えられると考えている。母と子の気持ちはすれ違うばかりのようです。私の息子も都内で強豪と言われるジュニアユースクラブに所属していましたが、10年ちょっと前のことであり、現在のクラブ事情に詳しいわけではありません。息子さんの置かれた現状も、メール文だけの理解です。したがって、あくまでもひとつの参考として受け止めてください。

 

■アドバイス①無理に引き留めると親子関係の悪化、自己肯定感の低下を招く恐れがある

お伝えしたいことは四つあります。

ひとつめ。息子さんがどこでサッカーをするかは、お母さんが決めることではありません。あくまでも、息子さんが自分で考えて決めることです。彼のほうから「どう思う?」と尋ねられれば、意見を述べてもいいでしょう。

しかし、メールの文面からすると、お母さんは息子さんの進路をご自分が決めなくてはいけないと感じているのではありませんか? それで、とても慎重になってしまい、私の意見を聞きたかった。そんなところではないでしょうか。

子ども自身に決めてもらったほうがいい理由は、お母さんが無理に引き留めてこのクラブでサッカーをさせたところで、最後まで試合に出られず、練習も楽しくなく、暗黒の3年間を過ごしたとしたら、うまくいかなかったことを恐らくお母さんのせいにするでしょう。

例えば「僕はほかのクラブでやりたかった。サッカーを楽しみたかった。試合に出られないのに上手くなるわけないだろう」と言われるかもしれません。うまくいかないことを親のせいにしてしまうのです。加えてサッカーでも高校や大学の進路でも、お母さんは自分の意思を尊重してくれない、何を言っても聞く耳を持ってくれない人だと意見を言うことを諦めてしまうかもしれません。

さらに言えば、意思を尊重されないことは、彼の自己肯定感を一気にダウンさせます。一番近くにいて自分を一番知っている人から信用されない、信頼されない。心配されてばかりで自己決定させてもらえない「ダメな僕」という受け止めになるのです。

 

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■アドバイス②中高生は自己肯定感を重ねて自己を完成させる時期、自分で判断させるのが大事

子ども時代、特に中高生の思春期は、自己肯定感をきちんと重ねて自己を完成させる時期です。何があっても自分は大丈夫。自分で考えて、自分で判断する。失敗したらやり直せばいい。トライすることが何より重要です。そのためには、親は「成果よりもプロセスを見る」ことが大切です。

したがって、子どもの「今サッカーが楽しいか、楽しくないか」という感情を大切に扱ってあげてください。これが2つめです。

息子さんは試合に出られないことが辛い。楽しくないのです。お母さんはもったいないと思われているようですが、現実的に試合に出られそうなのか、そうではないかは、息子さん自身が一番身にしみてわかっていることでしょう。お母さんから「もったいないじゃない」と言われて(言っているかどうかはわかりませんが)、息子さんは「サッカーしてるのはお母さんじゃないだろ?」と憤りを抱いているかもしれません。

 

■アドバイス③プロ選手たちの親が、子どもが小中学生の頃に思っていた事

3つめ。お母さんは、息子さんは何のためにサッカーをしているとお考えですか? そこをあらためて考えてみましょう。

サッカーのみならず、スポーツはプロになるためだけにやるわけではありません。ご存知かと思いますが、プロになるのは非常に狭き門です。一説によると、大学まで続けたとしても、卒業後にプロになれる確率はわずか1%。高校生の時点ではさらに激しい競争率になります。

プロになった選手の親御さんに話を聞くと、多くが子どもが小中学生の時点では「プロになって欲しい」と強く思っていたわけではありません。ただただ目の前の子どもが自分から楽しくサッカーをしていた。一所懸命に取り組んでいる、頑張っている。だから応援し支え続けてきたと皆さんおっしゃいます。そばで「プロになるぞ!」と言う子を笑顔で見守っている。親の目標ありきではないのです。

 

■アドバイス④子どもを思うなら今大事にしてほしい事

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

そして4つめ。ジュニアユースクラブのありように詳しいわけではありませんが、わずか13歳や15歳でプロになるルートがあるとは思えません。スーパーな子であれば、どこにいても必ず選抜チームなどにかかるので、関係者の耳に入るはずです。誰かのコネクションやコーチ同士の関係云々でプロになれるほど甘い世界ではないと私は思います。

私に相談メールを書いてくださるくらいなので、お母さんのお子さんへの愛情はとても深いと思います。であれば、自由にしてあげましょう。尊重してあげましょう。愛すればこそ、手を放してあげてください。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。

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