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長浜駅前0分で出会える琵琶湖の魚たち!“小さな水族館”に詰まった“大きな魅力”

しがトコ

オサカナラボ

【小さなびわ湖水族館 オサカナラボ/滋賀県長浜市】

学生や観光客が行き交う長浜駅前。
電車や迎えを待つ人たちがくつろぐ「えきまちテラス」の1階で、そっと寄り添うように光を灯しているのが「小さなびわ湖水族館」です。

およそ60種類、50個以上の水槽が並ぶ本格的な展示ですが・・・
観覧はすべて無料。誰でも自由に眺めることができます。
どうしてこんなところに水族館が?取材しました。

境界線のない空間で生まれる“偶然の出会い”

取材で訪れたのは日曜日。
多くの観光客でにぎわう施設の一角に、その水族館はありました。

「たまたま駅前に立ち寄ったら水族館があって。琵琶湖の魚を見る機会ってないので、面白いですね」。

そう教えてくれたのは、兵庫県明石市から夫婦で訪れたという男性。

「カメが大好きで亀を見てたよ。この水族館に来てチョウザメも好きになった!」
「ウーパールーパーが好き!」
敦賀から家族で観光に来ていた姉妹は、すっかり生き物たちのトリコです。

そんな、通りがかった人たちの日常に“小さな発見”を提供してくれる
「オサカナラボ〜小さなびわ湖水族館〜」。

皆さんは、琵琶湖にしか生息していない生き物が数多くいることをご存知でしょうか?
琵琶湖固有種をはじめ、絶滅危惧種から外来種まで。
ここでは、普段の生活の中でなかなか出会うことのない湖の魚たちと
目と鼻の先で挨拶することができます。

(琵琶湖固有種の代表 立派なヒゲのビワコオオナマズ 大きいものは1mを超す)

(琵琶湖の固有種 全長3cmほどの愛らしいビワヨシノボリ)

(美しい朱色のラインが特徴のニジマス)

運営は「近江淡水生物研究所」

「こんなに種類がいると思わなかったってみんな言ってくれるんで。めちゃくちゃ嬉しいです」。

そう語るのは、水族館を運営する「近江淡水生物研究所」代表の向田直人さん。

__みんなが休憩する場所のそばに突然現れて驚きました。
しかも無料なんですね。

「関心のない人にも来てほしいから、そこはこだわりました」。

来るもの拒まず去るもの追わず。
どんな人でもフラットに受け止めてくれる空気感に、思わず心が和らぎます。
無料の先で出会える世界とは一体。向田さんに案内していただきました。

すぐそばにあるのに見えていない。湖面の下に広がる魚たちの暮らし

水族館の入り口、まずは一番大きなこちらの水槽。
ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、琵琶湖と関係が深い3種のフナたちが出迎えてくれます。
ニゴロブナとゲンゴロウブナは琵琶湖固有種なんですよ。

こんな風に、フナたちが群れをなして泳いでいるのがリアルな琵琶湖の姿。

ちなみに、滋賀県の伝統料理・鮒寿司の原料になっているのはニゴロブナで、骨まで柔らかく肉質が発酵に適しているんだとか。

__ニゴロブナ、どれだろう。

「体が細長いのがニゴロブナ。
お腹から背中までの高さ・体高が長いのがゲンゴロウブナ。
顔の三角形がシュッととんがってるのがギンブナ…」

__ええっと、もう一回いいですか?

「ニゴロブナは柔らかい顔してるんです。
目の位置がちょっと低い。ほんのわずかな差なんですけど」。

これこれ!と笑顔で教えてくれる向田さんですが…
残念ながら違いを見分けることはできず。
3種言い当てられたあなたは、真の滋賀県民を名乗れるかもしれません。

それにしても、フナだけでもこんなに種類がいるとは驚きました!

琵琶湖ファンを魅了するナマズ

琵琶湖を語る上で外せないのが、ナマズ。
日本に生息する4種類のナマズのうち、2種類は琵琶湖にしか生息しない固有種!
滋賀県はまさにナマズの聖地なんです。

一種は、冒頭に登場した「ビワコオオナマズ」。
そしてもう一種は、竹生島周辺の岩場など、
湖北のきれいな場所にしか生息していないという「イワトコナマズ」。

「展示のほとんどが、琵琶湖で獲れた魚です。長浜港で釣りしてるおじいちゃんたちが『こんなん釣れたで、いらんか』と連絡をくれたりして。
皆さんの協力のおかげで、充実した展示ができていますね」。

無料と侮るなかれ。人も魚も心地良い、愛のある展示

思わず時間を忘れて見入ってしまうほど、魚たちの表情が愛らしい!

この感動を子どもたちにも心置きなく味わってほしいと、水槽は大人の腰あたりの高さ。つまり、子どもの目線に合わせています。

そしてもうひとつ感じたのは、展示の美しさ。

汚れのないクリアな水槽の中で、魚たちの表情もイキイキと気持ちよさそう…!

毎日の餌やりはもちろん、水槽ごとに週1回の掃除。
魚たちが元気に過ごせるように、向田さんは仕事の合間を縫って水族館の管理を行っています。

そんな向田さんのもとには、多くの魚好きたちが集まってくるようになりました。

「下は中学生から、上は60代まで。この水族館に来て『手伝いたい』と言ってくれた人もいます。長浜バイオ大学の学生さんたちも手伝ってくれていて、助かりますよね」。

故郷を離れ、憧れの滋賀県へ。琵琶湖は“環境問題の聖地”

じつは、向田さんは奈良県出身。小さい頃から生き物が大好きで、琵琶湖のそばで暮らすことを夢見て、滋賀県で就職しました。

「大学では公害問題について学んでいました。その中で、琵琶湖っていうのが環境問題の聖地だと思えたんです。ラムサール条約に登録されたり、有害な洗剤を使わない『石けん運動』が全国に先駆けて行われたり、本当にすごい環境先進県だと。琵琶湖を守るために何かしたい、そういう思いもあって、琵琶湖の端に住みたいとずっと思っていたんです」。

理科の高校教師として長年生徒たちに環境問題について教えてきた向田さん。
教えるだけでなく、自分でも何か行動したい。
30年勤めた教師を辞め、2018年から長浜に水族館を作る活動を始めました。

始まりはたった一つの水槽

最初は、道の駅・湖北みずどりステーションに1つの水槽を設置したところからスタート。(※現在はありません)
口コミが広がり、長浜駅前のえきまちテラスにも設置してほしいと頼まれて、エスカレーター下に3つの水槽を設置しました。

「でも3つだけやと、ほんとにちっちゃい。子どもも思わずバカにするぐらいで。それが悔しくて、テーブルを置いて、水槽をどんどん増やしていって…。評価してくれる人もちょこちょこ出始めて、気がつけば50個以上ある水槽を設置するまでに規模が拡大していました」。

伝えたいのは、人間が生きていくための「多様性」

「まずは、琵琶湖にこんなにいろんな種類の魚がいるのか、ということだけでもいい。“生物多様性”という言葉の入り口になってくれたらいいなと思っているんです」。

いろんな生命が共存しているからこそ、自然環境のバランスが保たれ、私たちの日常が成り立つ。
向田さんが発信するのは、「人間が生きていくための環境保全」です。

「いま、人間の利便性のために多くの魚の数が減ってしまっているんですよね。生き物好きだけじゃなくて、普通の生活をしている人も『いろんな生き物が住める環境を維持しないといけないよね』とみんなが思うようになれば、行政も動きやすくなると思うんです。そのきっかけとして、水族館はすごく重要な役割を果たしてくれると思っています」。

__向田さんにとって琵琶湖とはどんな存在なんでしょうか。

「滋賀県民はもっと琵琶湖を誇りに思っていいと思います。世界に20個ほどしかない古代湖の一つで、縄文土器も出てくるほど歴史がある場所ですから。そんなすごい琵琶湖を間近に生活できていることが嬉しいんです。この環境を守っていくことに、僕の残りの人生を捧げようかなと思っています」。

優しい笑顔の奥に、情熱を秘めた向田さんの言葉。
長浜から、琵琶湖の多様性を発信していく。
向田さんが生み出した活動の波は、穏やかに、そして確実に、広がっています。

駅前を歩けばふいに琵琶湖と目が合う、そんな小さな水族館。
皆さんもぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

(取材・文 福田玲子 / 写真・辻田新也)

『オサカナラボ〜小さなびわ湖水族館〜』の情報

場所 JR長浜駅(東口)直結 えきまちテラス長浜1階 営業時間 9:00~20:00 お問い合わせ 050-7107-3438

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