シーズン初期のワカサギ攻略法!名手が教える、当歳魚を爆釣させる誘いと仕掛け【山中湖】
山梨県・山中湖といえば、いわずと知れたワカサギドーム船のメッカ。 雄大な富士山を眼前に眺める極上のロケーションに加え、ワカサギの味がよいことでも人気を集めている。となれば、たくさん釣りたい。できれば、食べ応えのある大型も。 そんな釣り人の想いを叶えるヒントを『フィッシングハウスなぎさ』の尾崎渚さんが教えてくれた。
写真と文◎編集部
解説◎尾崎渚(フィッシングハウスなぎさ)
高水温期の山中湖ワカサギ攻略
ドーム船のメッカ・山中湖で船長として毎日就航しているのが、『フィッシングハウスなぎさ』の尾崎渚さんだ。よく釣らせる船長であり、自身も1日で2500尾以上の釣果を叩き出したスゴ腕アングラーだ。
山中湖のワカサギ釣りは毎年9月1日から解禁し、翌年6月30日までと長い期間楽しめる。取材でお邪魔したのが10月3日。ようやく涼しくなってワカサギ釣りらしい雰囲気になってきたタイミングだ。気になる釣況はどうだろう。
「悪くないですね。数は多いと思います。先週はバラつきがあって、トップが581尾、711尾、324尾と来て、昨日が222尾と渋かったです。でも今日はいい反応が出ています」
サイズはどうだろうか。
「シーズン初期は4~5cmの当歳魚がメインですが、その倍の7~8cmの良型、さらに10cmを超す大型も入り、大中小がバランスよく釣れています」
各地を釣り歩いた尾崎さんが味に太鼓判を押す山名湖のワカサギ
ゆっくりと桟橋を離れた船は水深10.6mのポイントでアンカーを下ろした。通常の海の乗合船と違い、よほどのことがない限りポイントを移動することはなく、午後2時の沖上がりまで同じところで釣る。 基本的にワカサギは左右あるいは前後から群れがやって来るため、人気の釣り座は最初に群れと遭遇する四隅になる。とはいえ、後方のトモ(船尾)側の隅に座って、群れがミヨシ(船首)側から入ってくれば、ミヨシからバタバタ釣れて、トモまで来る頃には反応が途絶えることも。その点、胴の間はどちらから群れが来ても、それなりの反応が得られる。
「ボクは空いている席に入るんで、結果的には胴の間専門ですね(笑)」 この日も左舷の胴の間に入った尾崎さん。「はい、やってみてください」とアナウンスをしてから、ゆっくりと道具を広げ始めた。
山中湖のドーム船は自走式の動力船。フィッシングハウスなぎさのドーム船の船長である尾崎さんは毎日、反応を見ながらアンカーで固定するポイントを決める
エキスパートの仕掛け選び
10m前後のポイントが多い山中湖では、オモリはスリムタイプの1.5号をほぼ周年使用しているという。
「あまり軽いシンカーだと速い動きを出しにくい。細長いシンカーは同じグラム数でもスッと落ちてくれる。特にシーズン初期はゆっくり落ちるよりもスッと素早く落ちる仕掛けに反応がいいです。シンカーに下バリは付けていません。理由は、シーズン初期は底付近にニゴイなどの外道が多いからです。今日もそうですが底は少し切ってます。つまりベタ底にはワカサギは薄い。なのに釣れないハリが下に1本ついているのは邪魔でしかありません」
ただし、11月半ばを過ぎて水温が15度よりも下がるとしだいにワカサギは底付近に密集して動きもスローになる。10度より下がれば完全なベタ底ねらいになって下バリの有効性は増すそうだ。
ハリは小型メインなら狐タイプ
この日使用した仕掛けは『ワカサギ連鎖ベーシックII』(がまかつ)。
「もとからあるベーシックもよく釣れる大好きな仕掛けですが、ベーシックIIはイトの素材がアユ用ナイロンハリスになったことで耐久性が非常に向上しました」
ハリは袖タイプと狐タイプの2種類があり、それぞれ全長64cmの5本バリと全長76cmの6本バリがある。
「シーズン初期はワカサギのタナがバラける傾向にあるので6本バリもいいですが、紅葉シーズンも過ぎればタナは底付近に固まり、釣れるのも下から2~3本に集中しますから5本バリで問題ありません。特に不慣れな人ほど5本バリを使ってください。圧倒的に捌きやすくトラブルも少ないので手返しよく釣れますから」
「ハリは狐タイプがワカサギの口先に掛かりやすく簡単にハリを外しやすいので手返しを追求するのに合っています。シーズン初期の山中湖では1号以上は少し大きいから0.5号をチョイスしています。ただし同じ0.5号なら保持力があるのは袖タイプです。小型メインなら狐タイプでいいですが、大きな魚が3割くらい混じる状況なら袖タイプをおすすめします。ただし袖タイプのほうが魚は外しにくいので手返しはやや落ちます」
『ワカサギ連鎖ベーシックII』のハリはいずれもナノスムース(がまかつ独自の複合表面処理加工)が施されているため摩擦ゼロ感覚の刺さりのよさを実現。
「釣果を一番左右するのはハリです。このハリはエサを刺した段階で貫通力の違いを誰でも実感できます。当然、ワカサギの口にもスムースに刺さり、小型でも大型でもスッと刺さって追い掛けもしやすい」
ナイロンラインは当歳魚の多い状況に有利
そして、ワカサギ仕掛けにおけるナイロンラインのメリットを聞いた。
「フロロカーボンの張りは仕掛けが捌きやすいメリットもあるんですが、食い渋りや秋の山中湖のように当歳魚の多い状況ではその張りがプラスになることは少なく、むしろ水を押さないしなやかなナイロンの優位性が高いです」
ただし、しなやかであるがゆえに、『ワカサギ連鎖ベーシック』ではたくさん釣るとハリスの縮れなどが多少気になるため、早めの仕掛け交換を心掛けていたという。ところが今回、1日やって交換したのはたったの1回。その1回も大量の藻が絡んでしまったタイミングだった。
「まあ、あそこで藻が絡んでいなかったとしても、多少ハリスにクセが付き始めていたのでいい交換のタイミングでした」
張りのあるフロロカーボンと比べると多少はヨレやすいとはいえ、一般的なナイロン仕掛けに比べたら圧倒的に耐久性が高いことをまさに実証したのだった。
アワセのタイミングは水温で変わる
「水温が10度を切ると釣り方が一変します。底付近で誘ったら穂先を止めて待って、アタリが出たら即アワセの釣りが効くようになります」
言い換えれば、10度を切るまでは即アワセの釣りではないということだ。
「水温が高いのでワカサギが活発で動きも素早い。アタリが穂先に出てからアワセを入れてもアタリを弾いてしまうことが多いです。そもそもまだ魚も小さいので穂先に出る目感度で掛けにいくのは難しいですし、アタリを取ろうとすると穂先の動きが止まりがちになりアタリが遠のきます。当歳魚は特にそうですが、水中でチャッチャカチャッチャカと絶えず動いているエサに興味を惹かれるのでアタリが増えます」
穂先に出るアタリでアワセを入れるのではなく、絶えず水中でエサが動き続けるリズムを優先。その一連の動作でオートマチックに掛けていく
シーズン初期の誘い方は、リズムが重要!
この日の尾崎さんの誘いは基本的に次のとおりだった。
1.大きく1回誘ったら台の上に置くが穂先が弾んで、揺れている
2.揺れがしだいに小さくなっていき、止まる直前でまた大きく誘う
3.これを左右交互に同じリズムで繰り返す
一見すると置きザオにも見えるが、水中のエサは絶えず動き続けているのでアタリが途切れない。
竿については、「バラしたくないからと胴調子を選んでしまいがちなんですが、この時期は仕掛けを小刻みに素早く動かしたほうが魚の食いが立つので先調子がおすすめ」とのこと。
大きな誘いを1回入れたら叩き台に置く。するとその後も穂先が動き続けて活性の高いこの時期の魚を誘い続ける
大型はねらって釣る
「アタリでアワセを入れるのではなくリズムで掛けていく。もちろん、追い食いを待ったり、魚探の反応を見て、デカそうなワカサギの群れが寄ってきている状況なら、しっかりそのタナに合わせて、このときは誘いのあとちょっと待って感度でアワセを入れます。だからボクはデカい魚はねらって釣っています」
もちろん、基本は小さな当歳魚がメインのため目感度の釣りは難しいが、魚探に映る魚群に濃い黄色の塊が多く見られるときは大型のチャンスという。
こうして14時の沖上がりの20分前には納竿し、帰港の準備を開始する尾崎さん。おそらく開始と終了の間際、途中のオマツリなどのトラブル解決などで1時間ほど釣り時間が少ないなかで560尾を釣り、当然のようにサオ頭であった。
終わってみれば560尾でサオ頭(スソは60尾)。数もさることながら大型の割合も多いのがよくわかるだろう
山中湖のドーム船の魅力はなんといっても富士山および逆さ富士を一望できる景色のよさ。家族でのレジャーとして挑戦するのもおすすめだ
※このページは『つり人 2025年12月号』の記事を再編集したものです。