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島田昌典 aikoや秦 基博、Chageなど数々の名曲を手掛けるプロデューサーに聞く、それぞれのアーティストとの思い出とプロデュース哲学

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島田昌典 撮影=鈴木恵

ひょっとして、その姿や顔は知らなくても、きっと、その音は誰もが知っている。アレンジャー/プロデューサーの島田昌典は、30年以上にわたる音楽生活の中で、aiko、YUKI、秦 基博、いきものがかり、back numberなど多くの名曲に名を刻んできた。11月3日(水・祝)、ぴあアリーナMM【神奈川】で開催される『LIVE from “Great Studio” 2021 ~島田昌典 あざみ野サウンドの世界~』は、その日に還暦の誕生日を迎える島田を囲んで、8組の豪華アーティストが集う大イベントだ。一期一会の一夜にかける思いについて、それぞれのアーティストとの思い出について、そして、プロデュースの哲学について。神奈川県あざみ野にある自宅を兼ねたプライベートスタジオ“Great Studio”にて、珈琲を飲みながらゆっくりと語るひととき。ライブの予習として、楽しんでほしい。

――島田さんのツイッターを見ていると、“リハーサル絶好調!”という様子が伝わってきます。

非常にいい感じで来ていますね。ゲストアーティストの曲をリアレンジして、大編成のストリングスも入ります。打ち込みは無しで、演奏は全て生演奏です。かなり奇跡の、スペシャルな夜になると思います。

――島田さんが主役になるライブは、2014年、音楽生活30周年を記念した武道館公演以来になりますか。

7年前に武道館で公演をやらせてもらった時に、“次は還暦の時にやろうか”みたいなことを言ってしまったんですが、それが本当に、みなさんの協力のもとに開催できることになったんです。コロナで、アーティストもスケジュールが見えない中で、調整していただいて、みなさんのご協力で開催できることになったので本当に感謝です。

――主役となると、やはり気分は違いますか?

自分自身は、裏方ですからね。プロデューサーやアレンジャーが前に出るのは、僕自身はあまり好きではなくて。楽曲がもともとあったように自然に聴こえるアレンジ、プロデュースが好きなので、一歩引いてずっとやってきたんですが、こうやって前にどーんと出てみると、アーティストって本当に大変だなと(笑)。ステージの中心にいるということは、命がけで魂を削ってやっていると思いますし。なので今回は、燃え尽きるような気持ちで、自分の集大成的な感じでやりたいと思っています。僕自身はこうやってスタジオにずっといるので、お客さんの前で演奏することは少ないんですけど、今回こうやってみんなと一緒に音楽を奏でることができるのは、本当に幸せなことですね。音楽は空気を振動させるものなので、みなさんに僕たちのバイブスが伝わって、またお客さんから僕たちにそれをいただく、そういう空気をリアルタイムで作って、一緒に音楽を作れるのがライブだと思っていますので、それができることが本当にうれしいです。

――今回は、8組のゲストアーティストが登場します。一人ずつ紹介してもらえますか? まずは、最も付き合いの長いaikoさんから。

aikoちゃんはインディーズの頃から、24年ぐらいの付き合いですけど、音楽的には自分自身の半分がビートルズで、半分はaikoちゃん、的な感じがありますね。すごく長い時間ですから、どう説明していいかわかんないですけど、一緒に戦って作ってきたと思いますし、アレンジ、プロデュースということではなく、曲を一緒に頑張って作ってきたという感じです。こうやって一緒にやるのはなかなかないことなので、セットリストも、僕が“この曲をやりたい”と言って、その中から一緒に選んでもらったりして、そのへんも楽しんでもらえたらうれしいですね。特別なアレンジでやりますので。

アンティークのオルガンの上にはビートルズ「Yesterday」の譜面(レプリカ)も

――アンダーグラフは、どうですか。

彼らのデビュー曲「ツバサ」と、アルバム1、2枚ぐらいのプロデュースをさせてもらっています。今のスタジオに移る前のGreat Studioでレコーディングしたんですけど、メンバー全員が1台の車に乗って、片道2時間ぐらいかけて来て、それを毎日繰り返して一緒に作りましたね。「ツバサ」は本当に印象的な曲で。当時の彼らはとても苦労していて、なんとかヒットさせようと一生懸命作った覚えがあります。おかげさまでヒットして、次につながっていったという、印象的な曲ですね。もう20年近くなるんですかね? こうしてライブで一緒にやるのは初めてなので、時空を超えて、演奏しながらウルっと来そうな感じがありますね。

――石崎ひゅーいさんとは、どんなお付き合いですか。

ひゅーいくんとは、一度テレビのセッション番組で一緒にやったんですが、その時のパフォーマンスが本当に素晴らしくて、すごく感動しました。なので、11月3日、是非一緒にセッションさせていただけないでしょうか?と、僕からラブコールを送らせてもらって、ご快諾いただいてご一緒させていただけることになって。本当に楽しみなステージになると思います。いまからワクワクしています。

aikoのレコーディングでも使用されたチェンバロ

――JUNNAさんは、この中では一番若いアーティストということになりますか。

JUNNAちゃんと最初に出会った時は、彼女が13歳の頃に出たとあるテレビのオーディション番組でした。僕が審査員をやっていて、その時に出会ったんですけど、そのオーディションには残念ながら受からなくて。それから時間が経って、15歳でマクロスシリーズ『マクロスΔ』の劇中音楽ユニット”ワルキューレ”のエースボーカルとしてデビューして、今回一緒にできるという、不思議な縁だなと思います。彼女は歌が本当に素晴らしくて、パワフルな歌唱から、繊細な声色まで持っている。今回のバンドとのアンサンブルも素晴らしくて、本番がすごく楽しみです。

――プロデューサーとして、若い世代のアーティストと接することも多いと思いますけど、どんなことを意識していますか。

そんなに年齢は気にしないんですけどね。ただどうしても、知らない音楽があったりするし、それは言葉で言うよりも音で表現して伝えていく。そこでお互いに感動したり、気持ちが伝わったり、そこで会話ができるといいですよね。僕自身もそうでしたけど、若い時はがむしゃらですから、目の前のことに一生懸命になってしまうこともありますが、何年か経って“あの時、先輩がこういうことを言ってくれたんだ”って、あとあとわかってくることもあるので。音でバイブスを伝える中で、感じて、経験していけば、成長していくんじゃないかなと思います。音楽の理論は勉強できますけど、音楽で感動することは、人から教えられることとは違うことかなと思いますし、感動したことをどんどん追及していく、積み重ねだと思うので。そのきっかけになったり、環境を若いミュージシャンに作ってあげたり、出会ったり、そういう形がいいかなと僕は思います。

――そして、高橋優さん。

高橋優くんは、デビューした頃から注目していたんですが、最初の出会いはテレビのセッション番組で、僕が曲をリアレンジして一緒にやらせてもらった時に、本当に素晴らしいパフォーマンスをなさっていたんですね。そのあと「産まれた理由」という曲をアレンジさせてもらったんですが、本当に曲が素晴らしくて、涙を流しながらアレンジしていた覚えがあります。詞の世界観が素晴らしいですよね。その時は、楽器を録ったあとにすぐ歌も録音して、勢いのままボーカルを録って、このスタジオでミックスダウンをした覚えがあります。

――島田さんは、歌詞を大切に、言葉に寄り添うアレンジャー/プロデューサーという印象があります。

歌詞のワンフレーズから情景が見えたり、空気感だったり、そこは大事にしますね。歌詞の世界観は大事です。でもそこのバランスというか、歌詞に乗って一緒に行ってしまうと、トゥーマッチな部分もあったりしますし、いちリスナーとして聴きながら、俯瞰してやっていかないと、バランスが悪くなってしまうんですね。たとえばaikoちゃんの曲も、悲しい歌詞でもアレンジはすごくポップで明るかったりしますよね。一緒になって悲しいところに行かずに、明るいロックなアレンジに行くとか、敢てそういうことをやったりもします。

Chageのレコーディングで使用されたピアノ

――そしてChageさんは、8組の中で唯一、島田さんより先輩のアーティストになります。

Chageさんは本当に、ハッピーオーラ満載な方です。去年アルバムを1枚やらせていただいて、今度またクリスマスのシングルをご一緒させていただいたんですが、レコーディングは本当に楽しいですね。大先輩なので、最初はすごく緊張していたんですけど、Great Studioにいらっしゃる時にはいつも“ただいま”って入って来られます(笑)。だから“おかえり”って感じで(笑)。本当に素晴らしい方で、音楽が大好きで、やりたいことに手を抜かず、心が広くて、“島ちゃん、何でも好きなことやっていいよ”と言って、僕も好きなようにやらせてもらうと、“いいよ! いいよ!”って言いながら、本当に楽しくやらせてもらいました。いいリハーサルもできていますし、今回一緒にセッションさせていただけるのが本当に楽しみですね。

――wacciはどうでしょう。

wacciは、最初に見た時はそんなに派手な感じもしないし、隣のお兄さんたちという感じだったんですが。wacciの素晴らしいのは、曲を聴くだけで本当に安心できるというか、心が疲れている時に聴くと癒されるというか、そういうバイブスが出ていますよね。自分がいつもいる日常のことをテーマにしているので、音を聴いていると情景が浮かんできますし、それは聴く人によって変わるので、いろんな人の情景がばっちり出てくる。日常の出来事をうまく切り取って曲にする、それが本当に素晴らしいと思います。楽器の演奏もうまいし、アレンジ力も持っていて、素晴らしいバンドに成長してきたなと思っています。「別の人の彼女になったよ」があれだけヒットしたのは本当に良かったなと思いましたね。

――そして秦 基博さん。

秦くんは、ボーカリストとしてのパフォーマンスがハンパないです。外国の方の歌い方というか、喉の使い方で、すごく繊細な歌い方もできるし、エモーショナルなシャウトもできるし、ファルセットもできる。表現の幅が広くて、最初に聴いた時はその歌声にびっくりしました。それと曲が本当に良くて、最初にご一緒させてもらったのは「青い蝶」という曲だったかな。曲の作り方や詞の世界観に、独特の秦 基博節がある、日本でほかにはいないボーカリストだと思います。僕自身、自分の中での三大ベストアレンジみたいなものがあって、「朝が来る前に」という曲は、自分の中のベスト3に入るような楽曲になったんじゃないかなと思いますね。元々の曲が素晴らしいですし、アレンジ的に、プロデュース的にも完成度が高い楽曲ができたんじゃないかと思います。

――楽曲から引き出されるアレンジがあるんですね。

そうですね。アレンジしている時は、ああでもないこうでもないといろいろやるんですが、「朝が来る前に」に関しては、歌にくっついて、歌を聴きながらピアノを弾いていたら、いろんなフレーズが自然に出て来たので、歌と一緒になってアレンジした感じです。ストリングスの入れ方も含めて、奇をてらったことはしていないんですが、ただ一か所、間奏で転調するところがあって、あそこが自分自身はグッと来るなと思ってます。

――当日、やってくれますか。

どうでしょう(笑)。それはみなさんに、本当に楽しみにしてほしいですね。

――8アーティストのセットリストは、島田さん発信なんですね。

そうですね。自分自身がアレンジに絡んでいない曲もあって、それは僕から“これをやってみたい”とリクエストしたりとか、しましたね。そのへんは、お楽しみにしていただければと思います。あとは、自分自身を育んできた音楽というものを、インストでメドレーにしたり、かなり盛りだくさんな内容になっています。そのへんも楽しみにしていただくと、面白いと思います。

――楽しみです。そして、お客さんに呼び掛ける言葉があるとすれば?

それぞれのアーティストのファンの方は、それぞれの楽曲やパフォーマンスを知っていると思うのですが、こうやって8アーティストが一緒に聴けることはなかなかないと思うので、聴いたことのないアーティストも聴けるという。そこも一緒に楽しんでもらって、新しい発見というか、“すごいな、楽しいな”と、そのアーティストを知ってもらえるとうれしいです。あとは、やっぱり生演奏ということが大事で。今回はすべて生演奏ですし、その時のタイム感でリズムが揺れたり、その時の気持ちで音楽はどんどん変化していくんですね。伸びたり縮んだり、盛り上がったり、そのへんも楽しんでいただけるとうれしいですね。

Great Studioの壁面を埋めるコレクションの数々

――ぜいたくな時間になると思います。

これは本当に一期一会なので、もうないと思います(笑)。音楽というものは、始まると、時間軸上でどんどん過ぎていくので、そこで起きる出来事を心に留めていただきたいと思います。今回は映像を残さない予定なので、しっかりと心で、耳で、体で、感じてもらいたいと思っていますね。あと、お客さんの中には僕と同世代の方もいらっしゃると思うので、一緒に還暦を祝いましょうと(笑)。

――いいですね(笑)。年齢層は、ものすごく幅広くなりそうです。

赤いちゃんちゃんこがサプライズで出るんじゃないかって、勝手に思っているんですけどね。最後はそれで締める(笑)。でも一生に1回ですからね。楽しみたいと思います。

――最後に、個人的にすごく気になっているのが、オリジナルグッズの「Great Studio珈琲」なんですけども(笑)。

グッズの珈琲、めちゃくちゃおいしいです(笑)。還暦に引っ掛けて、僕が6種類の豆を選んで、ブレンドさせてもらいました。30種類ぐらいの豆を試飲させてもらった中から、気に入った6種類を選んだんですが、やってみないとわからないということで、パーセンテージを調整しながらブレンドしてもらったら、偶然なのか奇跡なのか、本当においしいコーヒーができたんですね。リハーサルでミュージシャンにもスタッフにもすごく評判が良くて、僕も毎日飲んでます。やっぱり、味覚と情景って、人間の記憶に残ると思うんですね。音楽と珈琲で、リラックスして、チルな感じで楽しんでもらえればと思います。

取材・文=宮本英夫 撮影=鈴木恵

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