野村萬斎や粟谷明生が出演 11月3日に「山口薪能」が野田神社能楽堂で
狂言師・野村萬斎や能楽師・粟谷明生らが出演する「山口薪能」が、11月3日(月・祝)に野田神社能楽堂(山口市天花1)で開かれる。午後6時開演・8時45分終演予定。主催は同実行委員会(TEL083-922-0666)。
暗闇の中、能舞台の周囲にかがり火が灯される中で演じられる薪能は、厳かで幻想的。パチパチと薪の燃える音、虫の声、風の音、炎の揺らめき…。その幽玄な世界・空間は、会場でしか感じられない特別なものだ。
最初の演目は、舞囃子(ばやし)「天鼓(てんこ)」。能「天鼓」の見どころを抜き出した演目で、喜多流能楽師の出雲康雅がシテ(主役)を務める。中国・後漢の時代。不思議な鼓をもつ少年・天鼓は、皇帝に鼓を差し出すことを拒否しために殺されてしまう。ところが、その鼓は誰が打っても音を出さない。そこで皇帝は、天鼓の父・王伯を召しだして鼓を打つよう命じる。すると、この世のものとは思えない音色が鳴り響いた。感動した皇帝は王伯に褒美を与え、音楽法要で天鼓を弔うことに…。
続いて、和泉流狂言師・野村萬斎がシテ・太郎冠者を演じる、狂言「寝音曲(ねおんぎょく)」が上演。太郎冠者と主人のとぼけたやり取りが楽しい、太郎冠者狂言の代表曲だ。主人に謡を所望された太郎冠者は、いつも謡わされてはかなわないので、酒を飲まなければ声が出ないとか、妻の膝枕でなければ謡えないなどと言ってもったいをつける。どうしても謡が聞きたい主人は、太郎冠者に酒を飲ませ、自分の膝に寝かせて謡わせる。上手に謡った太郎冠者は、今度は起き上がって謡うよう命じられるが…。
最後の演目は、能「黒塚」。シテの里女・鬼女は喜多流能楽師の粟谷明生が演じる。那智の山伏・祐慶は、お供の山伏らと共に全国行脚に出て、陸奥の安達原へ着く。日暮れになり、中年の女が1人で住む粗末な小屋に一夜の宿を借りる。女は、もてなしに糸を紡ぐ糸車を回して見せ、世の無常を嘆く。夜更け、女は留守中に決して自分の寝室をのぞかないようにと念押しして、裏山へ薪を取りに外出する。ところが好奇心に駆られた従者は、寝られぬままに約束を破って女の部屋を見てしまう。すると、そこには死骸が山のように積まれていた。女は、安達原の黒塚に住むと噂の鬼だったのだ。驚いた一行は一目散に逃げ去る…。鬼女の恐ろしさだけでなく、孤独な老女の哀しみや、裏切られた思いが描かれた作品だ。
全席指定で、S席とB席は完売。A席(8000円)のみ販売されている。YCAM、山口市民会館、ローソンチケット、チケットぴあ、イープラスで購入できる。
10月5日と12日には能楽堂の裏側を見る「バックステージツアー」
関連イベントとして、会場となる野田神社能楽堂の「バックステージツアー」が、10月5日(日)と12日(日)に開かれる。普段入ることのできない同能楽堂内を見学できる、めったにない機会だ。
時間は午前11時、午後1時、3時からの各日3回で、定員は各回15人。参加料は1000円(資料代等含む)で、応募者多数の場合は抽選となる。
申し込みは、メールかはがきで、参加者(複数の場合は代表者)の氏名・住所・電話番号またはメールアドレス・参加人数・参加希望日時を、山口薪能実行委員会バックステージツアー係(〒753-0091 山口市天花1-1-2 野田神社内、yabugashiri@gmail.com)へ伝える。締め切り(必着)は、10月1日(水)。