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Nothing’s Carved In Stoneのライブが到達した新たな領域へ 『BRIGHTNESS』リリースツアー最終公演を振り返る

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Nothing's Carved In Stone

Nothing's Carved In Stone「BRIGHTNESS TOUR」 2024.7.15 Zepp DiverCity(TOKYO)

約5年間にわたる自主レーベルでのインディペンデントな活動を経て、Nothing's Carved In Stoneが再びメジャーレーベルとタッグを組んでリリースした最新作『BRIGHTNESS』。往年のミクスチャーやヘヴィロックといったメンバーの根底にあるサウンドのモダンな再構築と、外部アレンジャーを招いて拓いた新境地がクロスオーバーした同作を携えた全15本のツアーが、7月15日(月・祝)Zepp DiverCity(TOKYO)でファイナルを迎えた。

暗転するやいなやフロア前方の人口密度が急上昇し、SEに合わせて鳴り出すクラップ。競り上がってくるいつものバックドロップ。1曲目は『BRIGHTNESS』収録曲「Freedom」だった。“超”が付くヘヴィな重低音がリズムを担う上で、生形真一(Gt)のソリッドなギターリフが冴えを見せる。村松拓(Vo/Gt)の歌はその真ん中を堂々と突き抜けてくる。アグレッシヴなサウンドと<君は自由だ><You are free>というストレートなメッセージにフロアは激しく波を打つ。

日向 秀和(Ba)

生形 真一(Gt)

大喜多崇規(Dr)による爆撃のようなドラムから突入した「You're in Motion」ではCO2ガスがバンバン打ち上がり、続く「Chaotic Imagination」ではフロント3人が最前まで歩み出て喝采を集める。タイトル通りのカオティックな轟音ではあるものの、どこか素軽いメロディがきちんと届いてくるバランスが秀逸だ。さらには大喜多のドラムソロから、ここで早くも「Rendaman」。ぐいぐい推進していくアグレッシヴな曲調に乗り、日向秀和(Ba)が演奏の切れ間にモンキーダンスをして煽り、笑みをこぼす余裕も見せる。そんな最初のブロックから既にバンドの絶好調ぶりが手に取るようにわかった。

「『BRIGHTNESS TOUR』ファイナル、帰ってきました。めっちゃ磨かれてます。誰一人置いていかないです。最後までよろしくお願いします」

村松がその自信とやる気と決意のほどを端的に表した後は『BRIGHTNESS』からの「Challengers」が来た。テクニカルなギターリフが躍るハイテンポな入りと、どっしり構えたサビのスケール感のコントラストは、ライブで聴くといっそうドラマティック。ここらで一旦ペースを落としてもおかしくないタイミングで繰り出された「Spilit Inspiration」では、イントロからすかさず盛大なオイコールが巻き起こるが、「もっといけるだろ‼︎」とオーディエンスにさらなる覚醒を促していく村松が頼もしい。それにしても、ギターの速弾きと高速スラップが飛び交う間奏部分は何度聴いても至高である。

Nothing's Carved In Stone

作品に込めた自分たちのいろんな想いが前向きな力に変わってほしい、と『BRIGHTNESS』のテーマについて言及するMCに続いては「Will」。スタジアムロックの風格で鳴らされるメロディアスなサウンドと<We wish for your happiness>というシンプルなメッセージを力強く歌うコーラスは、新たなアンセム誕生を告げるとともに、彼らが光源となってアルバムタイトルの意味する“輝き”を放っていることを肌身で感じさせる、象徴的なシーンとなった。アルバム内でも一際重厚な「Blaze of Color」からマッドなダンスナンバー「Idols」へと繋いでフロアを揺らしまくったところで投下したのは「Bright Night」。ヘヴィかつダンサブルで、生形と日向の両翼が存分に弾きまくる「これぞナッシングス!」という快感が存分に詰まったタイプの曲の、これが最新形である。

ほとんどペースを落とさないままライブはもう後半だが、「命削ってやってます」という村松の言葉が大袈裟ではないと思えるくらい、全然止まらないナッシングス。ここで「多分お前らが一番大好きな曲やるから!」と演奏された「Isolation」がフロアの熱狂ぶりに拍車をかけ、リフトやダイブをする観客も一人や二人ではない。会場中から送られた大音量の歌声には、村松がガッツポーズで応える。生形のピックスクラッチが狂騒の合図となる「Out of Control」、一際光量を上げて演奏されたパワーポップ調の「Around the Clock」、2番のサビを会場全体で歌った「November 15th」と繋いでいき、終盤のハイライトとなったのは「Dear Future」だった。『BRIGHTNESS』収録曲の中で最初に世に出た、いわば現在のナッシングスのモードを象徴する楽曲だけあって、イントロからシンガロングが起きるなど既に浸透度は抜群。こちらが聴き慣れたせいか、練度が上がったせいなのか、真っ向勝負なロックサウンドの随所にダンスやファンクの要素も顔を覗かせている。

大喜多 崇規(Dr)

村松 拓(Vo/Gt)

本編ラストはアルバムでも最終楽曲の「SUNRISE」。AORや80'sのポップスにも通じる余白を活かした大人でタイトなサウンドで締めくくり、アウトロのシーケンスが鳴らし続けたままで静かにステージを後にしていく4人を盛大な拍手が見送った。時計を見れば、19曲やったのにまだ1時間半。濃密にもほどがある。

アンコールは「Walk」から。<今を生きる 前を向いて><雨に打たれても 風に吹かれても/明日は来るはずさ>──。目の前の一人ひとりをエンパワメントするメッセージは『BRIGHTNESS』収録曲たちともリンクする。というより、近年ずっとナッシングスの歌う内容の中核であり続けてきたものが、『BRIGHTNESS』の存在と制作過程によってより明確化され説得力を増したのだと思う。だからなのか、ライブ全体を通して振り返るといつも通り超絶テクニックの応酬がバンバン行われていたのに、そちらにはあまり意識がいかなかった。それよりも熱と愛情のこもったリリックや、それを届ける歌や演奏に滲むパッションの方に耳目を奪われた。過去のライブとの決定的な違いはそこだ。

「また会いましょう」そう晴れやかな表情で言葉を添え、最後に演奏したのは「Perfect Sounds」。そして終演後、同曲のタイトルを冠したライブの開催も発表された。内容はレア曲だらけのワンマンである。ナッシングスは普段からけっこう珍しい曲や懐かしい曲をやってくれるタイプのバンドだが、それでもなかなかお目にかかれない曲はたくさんある。で、そういう曲はかなりの割合で変態的(褒めてます)だったりもする。ということで、今度はテクニックやプレイ面に思いっきりフォーカスして楽しんでみたい。

取材・文=風間大洋 撮影=RYOTARO KAWASHIMA

Nothing's Carved In Stone

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