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成人式を「ひとりひとり異なる色でパッチワークのように」好きな服でイベントに参加した人の思い

OTEMOTO

成人式は人生に一度きりの日だから、自分の好きな服をまといたい。東京・代官山で2024年1月7日、成人式イベント「SEIJIN-SHIKI」が開かれ、全国から新成人ら約120人が参加しました。2023年7月にゲイであることをカミングアウトしたAAAの與真司郎さんらも祝福のメッセージを寄せました。

このイベントは、オーダースーツを販売する株式会社keuzes(クーゼス)が主催し、2024年は2回目の開催。2022年〜2024年に新成人となる全国の若者から参加を募りました。

keuzes代表の田中史緒里さんは、着たい服が見つからなかったため成人式に参加することをあきらめた経験があります。「振袖を着たくないと親に言いづらい」「好きな服で参加したいけど周りの目が気になる」など、成人式に関する悩みを聞くことが多かったことから、好きな服で気兼ねなく参加できる成人式イベントを企画しました。

初対面の人とも知り合えるよう、歓談の時間が多く設けられた
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

2回目の参加者も

この日は、メンズスーツを着こなした人、カジュアルスタイルの人など、思い思いの服装や髪型の新成人たちが参加。「サポーター」として参加した性的マイノリティ当事者のインフルエンサーらが拍手で迎える中、笑顔でランウェイを歩きました。

昨年に続いて2回目の参加の人も少なくなく、田中さんは挨拶で「この場でできたつながりを続けていきたい」と語りました。

「正直、服装や考え方の固定観念は世の中にはまだたくさんあり、なかなか変わりません。でも、スーツを着て外を歩いたり、こうしたイベントに参加してくれたりする人がいると、その人の姿を見て、『私も好きな服を着てもいいのかも』と感じる人が増えていきます。この場に来てくれた人たちが、誰かに勇気を与える存在になるはずです」

連絡先を交換し合う参加者
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

仲間づくりの場に

会場では、1年後の自分に贈るタイムカプセルレター、記念撮影のブース、トークセッションなどの企画も。初めて会った参加者同士も連絡先を交換したり写真撮影をしたりし、式の後には交流会が開かれました。

1年後の自分に贈る手紙を書く。昨年もほとんどの参加者が自分あてに手紙を書いていた
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

新成人を祝福し、2023年7月にゲイであることをカミングアウトしたAAAの與真司郎さんからのビデオメッセージが放映されました。

「僕は昨年、大きな決断をして自分がゲイであることをカミングアウトしましたが、今は後悔なく過ごしています。皆さん、できるだけ後悔しないように生きてください。あきらめず、自分を信じて生きてください。応援しています」

ビデオメッセージを寄せたAAAの與真司郎さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

AKB48元メンバーの岡田奈々さんからのメッセージには、涙を拭う参加者もいました。

「新成人の皆さん、自分であることに胸を張れる大人になってください。この世界は嫌なことばかりではありません。ありのままの自分を受け止めてくれる人は必ずいます。弱い自分を見せ、周りに頼ることを恐れないでください」

記念写真を撮る参加者
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

福島県から参加した会社員の夏さん(20歳)はこの日、地元の成人式には出席せず、このイベントのほうを選びました。振袖を着るのが嫌だからだと親に伝えたら、「行っておいで」と送り出されたといいます。「ラフな格好で参加したい」と、シャツとネクタイの上にカジュアルなデニムのセットアップを合わせました。

「同級生に会いたくなくて避けてばかりでしたが、これからは恐れずに堂々と好きな服装をして地元を歩けそうです」

Xで知り合いだった高校生のもなかさん(18歳)と初めて対面し、「今日は思いきり楽しみます」と話しました。

「昨年書いた『1年後になりたい自分』の目標を達成した人も多かった」と田中さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

振袖を着たくないのに

イベントの最後に新成人を代表し、グレーのメンズスーツを着て参加した、たいちゃんが挨拶しました。

新成人代表として挨拶する、たいちゃん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

たいちゃんは、成人式には女性は礼装の振袖で出席するのがマナーだと知ってから、「振袖を着たくないけれど、着たいと思える日がくるかもしれない」と「本音を封印してきた」といいます。

「家に届く振袖のチラシや、『みんなは振袖の色、何色にする?』という友達の会話さえも自分を責め、自信を失わせていきました。いつしか成人式に対してプラスのイメージを持たなくなりました。『成人式に行きたくない』ではなく『行かない』に変わりつつありました」

「特にマナーや決まり、伝統、これらの言葉から『女性はこうあるべき』と言われている気がして、自分が振袖を着ている姿がより想像できなくなりました。『なんで似合いもしない、着たくもない格好で祝われないといけないんだろう』と、どんより雲の世界にぽつんと取り残されたようでした」

Akiko Kobayashi / OTEMOTO

成人年齢が早まり、焦りを感じていたとき、keuzesを知り、この日のイベントに参加することを決めました。

「さまざまな思いを持った人たちが、自分が一番自信を持って着たいと思っている服をバチバチに着こなしている姿を誰かに見てもらいたいし、自分もそんなキラキラした新成人をこの目で見たいと思いました」

「会場で、ひとりひとり異なる色で輝く皆さんを前にした瞬間から、『成人』や『成人式』に対して抱いていた上滑りした感覚は、根が生えるように心に植え付けられていきました。会場のどこを見てもおのおのが自信にあふれ、輝いて見えるパッチワークの布のように、自分の好きなものを、好きな姿を、何の抵抗もなく表現できています。自分自身が自らを愛し、一緒に前を向いて大人という階段を歩んでいきましょう」

服装にこめた決意

SEIJIN-SHIKIを主催したkeuzesは、成人式や結婚式でメンズスーツを着たかった田中さんが、サイズが合う服を見つけられず、「自分のために女性が着られるメンズスーツをつくりたい」と始めたブランド。

全国に出張して個別に採寸しており、最も価格を抑えたスーツでも8万9000円と決して安くはありません。それでも、初めてスーツを買う20代前半の人たちからの注文が多いといいます。

SEIJIN-SHIKIを主催したkeuzes代表の田中史緒里さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

「お金を貯めてまで最初の1着をオーダーする背景には、フォーマルなシーンでありのままの自分を表現したい、スーツをきっかけに周囲にカミングアウトしたい、といった大きな決意がこめられていることもあります」(田中さん)

冠婚葬祭や就活、成人式など、既存のドレスコードが求められがちなフォーマルなシーンでこそ、ありのままの自分を表現できるように。田中さんはこのように話しています。

「固定観念を持っている人とそうでない人が交わることで、より『普通』の範囲は広くなっていくと思います。女性らしい服装やスーツが苦手な人、服装で性別を表したくない人もいるということが知られてほしい。あなたが『変』なわけじゃないから、あなたのままでいてね。新成人の皆さんにはそう伝えたいです」

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