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呪われた東京五輪?森喜朗会長辞任で「招致の顔」4人全員消える

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森喜朗氏(右から3人目)と猪瀬直樹氏(中央)Ⓒゲッティイメージズ

コロナ延期、新国立の白紙撤回、盗作疑惑も

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が2月12日、女性蔑視発言の責任を取って辞任を表明し、これで「招致の顔」だった安倍晋三前首相(66)、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長(73)、猪瀬直樹元都知事(74)といった中心人物がいずれも不本意な形で表舞台から消えることになった。

「呪われたオリンピック」―。新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの延期や中止の懸念が高まっていた2020年3月中旬、麻生太郎財務相がこう発言して波紋を広げた。

「五輪は40年ごとに問題が起きる」という趣旨の発言だったが、過去の歴史を振り返ると、東京で予定された1940年の夏季五輪は日中戦争の拡大で返上に追い込まれ、1980年のモスクワ五輪は当時ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して米国や日本などの西側諸国がボイコット。実際に2020年東京五輪は新型コロナの影響で史上初の1年延期となった。

新国立競技場の当初計画案からの白紙撤回、大会エンブレムの盗作疑惑、五輪招致に絡む贈収賄疑惑など国際的なトラブルに発展したケースも多く、繰り返される混乱に世論の逆風は収まらない。開幕まで半年を切ってトップ不在の異常事態となり、招致段階から旗振り役として深く関わってきた主役たちが全員去ったことが暗雲垂れ込める五輪を物語る。

「安全五輪」公約の安倍晋三首相は退陣

2013年9月7日、東京五輪が決定した国際オリンピック委員会(IOC)総会(ブエノスアイレス)。投票に先立って行われた最終プレゼンテーションで、安倍首相(当時)は東日本大震災による東京電力福島第1原発の汚染水漏れについて「状況はコントロールされている。私たちは決して東京にダメージを与えない」と言い切り、世界に安全をアピールした。しかしこの「公約」は科学的な根拠がないとして、国内外で猛烈に批判された。

2016年リオデジャネイロ五輪の閉会式では、次回開催の東京をアピールするためスーパーマリオに扮して登場。2020年3月にはIOCのバッハ会長との電話会談で史上初の延期に合意した。

森会長は安倍氏に2年延期を促したとされるが、1年延期にこだわって決断したのも安倍氏だった。「人類がコロナウイルスに打ち勝った証し」とのフレーズを繰り返し「安全、安心な五輪」実現への思いは強かったが、2020年8月、持病を理由に辞任した。

猪瀬直樹元知事は招致成功直後に辞職

東京都の猪瀬元知事は五輪招致活動期間中に「4000億円の基金が現金で銀行にある」「世界で一番安全な都市」と繰り返し、IOC総会での最後のプレゼンにも登場。ユーモラスな身ぶり手ぶりを交え「2020年の東京では、誰もがいつでも時間通りに目的地に到着できる」と整備された交通網をアピールした。

しかし招致成功直後の2013年12月、医療法人「徳洲会」グループから都知事選の前に現金5000万円を受け取った問題の責任を取り、辞職。その後、公職選挙法違反の罪で有罪となった。

「スポーツ界の顔」竹田恒和氏は五輪招致疑惑の捜査対象

「東京に投票を!」。IOC総会の最終プレゼンに登壇したJOCの竹田恒和会長は「スポーツ界の顔」として声を張り上げて呼び掛けた。

父の恒徳氏が明治天皇の孫で「プリンス・タケダ」と呼ばれ、53歳の若さでJOC会長に就任。IOC委員でもあり招致委員会の理事長という、まさに「招致の顔」として世界各国を駆け回り、ロビー活動でも奔走した。

最終プレゼンでも日本が過去の五輪、パラリンピックでドーピング違反者を一人も出していないとし、クリーンさでライバルのイスタンブール、マドリード2都市との違いを強調。だが皮肉にも国家的イベントの招致成功をピークに、竹田氏の立場は暗転した。

招致を巡る贈賄容疑でフランス当局の捜査対象となり、一貫して潔白を主張しているが、2019年にJOC会長やIOC委員の役職も退任に追い込まれた。

元首相の森喜朗氏は女性蔑視発言で辞任

元首相の森氏は招致委の諮問機関となる評議会の議長を務め、政財界の幅広い人脈を生かして招致活動を支えてきた。

組織委会長には設立の2014年1月から就任。病とも闘いながら7年にわたって大会準備に尽力したが、女性蔑視発言が国内外から批判を浴びて志半ばでトップを退くことになった。

プレゼン登場のアスリートは何を思う?

宮城県気仙沼市出身のパラリンピック陸上選手、谷(旧姓佐藤)真海(サントリー)はIOC総会の最終プレゼンで壇上に立ち、骨肉腫による右脚の切断、故郷の被災という困難を通じて「スポーツの力」を訴えた。母となった38歳のアスリートは陸上走り幅跳びからトライアスロンに転向し、招致に貢献した東京パラリンピックの出場を目指すが、混乱続きの現実に今、何を思うのか―。

滝川クリステルさんはフランス語を交え、日本国民が持つ「おもてなし」の心を紹介。フェンシングの五輪銀メダリスト、太田雄貴氏は当時、2012年ロンドン五輪後の銀座パレードに50万人の市民が集まった景色を引き合いに、五輪が東京に来た時の熱狂を「想像してほしい」と訴えた。

アスリート置き去りのドタバタ劇

「平和の祭典」と呼ばれる五輪を巡り、今回の森氏の失言や後任人事の混乱はアスリートを置き去りにした「世紀のドタバタ劇」ともいえるだろう。招致の旗振り役だった4人は退場し、誰ひとりとして当時の肩書のまま東京五輪を迎えることはできない。今夏、五輪の開催可否も依然として不透明なままだ。

新型コロナの影響で社会が疲弊し、医療体制が逼迫する中、スポーツの祭典を巡る準備で繰り返される失態。東京五輪への不信感を払拭するのは容易ではない。

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記事:田村崇仁

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