嫌なことだらけの世界だからこそ、刺さる歌がある。だからこそ「筋トレはしないほうがいいかも(笑)」? 縁城蒼吏役・岡本信彦×主題歌アーティスト・五十嵐ハルが語る『デッドアカウント』と「デッドエンド」
2026年1月10日(土)夜11時30分より、テレビ朝日系全国24局ネット“IMAnimation”枠にて放送中の、渡辺静先生による同名漫画を原作としたTVアニメ『デッドアカウント』。
オープニングテーマ「デッドエンド」を歌っているのは、日常に生まれる不安や葛藤をすくい取り、しなやかな歌として伝えてきた元警察官シンガーソングライター・五十嵐ハルさん。「デッドエンド」は、ネガティブな感情を、前へ進むためのポジティブな衝動へと変えていく『デッドアカウント』のキャラクターたちの生き様、自身の感情を重ね合わせることで誕生した疾走感溢れるナンバーだ。
その「デッドエンド」について、そして『デッドアカウント』について、主人公・縁城蒼吏を演じる岡本信彦さんと、五十嵐ハルさんで語り合った。異なる立場から『デッドアカウント』に関わるふたりが、作品の魅力や表現論、さらには思わぬ筋肉談義まで繰り広げたクロストークをお届け。
【写真】岡本信彦×五十嵐ハルが語るアニメ『デッドアカウント』とOP「デッドエンド」【インタビュー】
『デッドアカウント』は「今の時代だからこそ生まれた作品」
──おふたりは、今日が初対面なんですよね。
岡本信彦さん(以下、岡本):そうなんです。実際にお話しさせていただいて、「元警察官ってすごいな」と思いました。経歴として珍しいですよね。役者の知り合いの間で「(警察官を)目指していた」とか「家系的に」という話は聞きますけど、実際に勤めていた、というのはなかなか聞かないです。
五十嵐ハルさん(以下。五十嵐):「珍しいね」とはよく言っていただけますね。真逆の仕事というか……。警察官とアーティストは反対側にある職業だと思うので。
岡本:そうですよね。警察官って、どうしても“固い”イメージがありますし、肉体派という印象もある。一方でアーティストは、どちらかというと自由でリベラルなイメージがあるので、その対比が面白いなと。
──今日は『デッドアカウント』の話題を中心に、いろいろなお話をうかがえればと思っているのですが、まずは『デッドアカウント』の魅力や最初のご印象などをそれぞれ教えてください。
岡本:『デッドアカウント』の魅力は、まずキャラクターたちの個性豊かな性格と能力にあると思っています。バトル作品はたくさんありますけど、この作品は能力がSNS由来で、その性格や生き方が能力のノリに直結しているところが、風刺も効いていてすごく面白いですよね。炎上系だったり、ある意味では迷惑系だったり、いろいろなSNSの使い方があると思うんですけども、それをバトルに落とし込むとこんなに伸びしろがあるんだ、というのを見せてもらっている感覚があります。すごく時代を感じさせる作品だなと。
──なかでも岡本さん演じられる蒼吏は炎上系のキャラクターですよね。
岡本:そうなんですよ。そこでひとつ疑問が出てくるんですけど、「炎上系なのに、なぜ蒼い炎なんだろう?」と。僕の中ではそこは結構大きなテーマで、考えながら演じています。
──その解釈を伺ってもいいでしょうか?
岡本:蒼い炎は「寂しがり屋のK」と同じなんですよね。そう考えると、蒼吏とKには何か共通点があるんじゃないか、というのをずっと考えています。
──蒼吏の場合は、妹・緋里(あかり)の存在も大きくて。
岡本:そうですね。寂しさとか悲しさとか、そういう感情が影響しているのかな、と感じています。いわゆる“普通の炎上系”とは、少し違う印象がありますね。
──五十嵐さんは『デッドアカウント』について、どのような印象をお持ちでしょうか?
五十嵐:やっぱり、今の時代だからこそ生まれた作品だな、という印象があります。SNSの要素や電能といった要素がバトルに組み込まれているのはすごく新鮮ですし、ストーリー構成も本当に飽きなくて、見ているとどんどんワクワクしてくるんですよね。キャラクター一人ひとりの見た目や性格も丁寧に描き分けられていて。曲作りのために何度も見返したんですが、見れば見るほど味が出てきて、「やっぱり面白いな」と思える素敵な作品だなと感じました。
──『デッドカウント』の主題歌を担当されることが決まったときには、どんな思いがありましたか?
五十嵐:もう、純粋に嬉しかったです。アニメの主題歌を担当することは夢のひとつで。これまでもアニメを観ているときに、歌で感動することが何度もあって、自分もそういう場面に関われたらいいな、という気持ちがありました。今回こうして『デッドアカウント』に携われたのは本当に嬉しいです。本当にありがたいお話だなと思いましたね。
──ちなみに、先ほど岡本さんが話されていた「蒼い炎」について、五十嵐さんはどのように分析されていますか?
五十嵐:蒼吏とKという“対極にいるようで似ている存在”の共通点が、どこでどう描かれていくのかは、今後の楽しみだなと思っています。
岡本さんの表現方法に興味津々の五十嵐さん
──五十嵐さんは『デッドアカウント』での岡本さんのお芝居をご覧になって、どんなことを感じられましたか。
五十嵐:以前から、他のアニメ作品で岡本さんが演じられているキャラクターを見ていたので、イメージは勝手に持っていたんです。でも、その想像を超えてきたというか。「ぴったりだな」と思っていたものを、さらに超えて「こんなにマッチするんだ」と感じて、改めてすごいなと思いました。岡本さんは声のバリエーションが本当にすごいですよね。「これ、同じ人の喉から出てるの?」って思うくらい。そこにも圧倒されましたし、「一流ってこういうことなんだな」と思いながら感動していました。
──ちなみに、これまでどのような作品をご覧になっていたんでしょう?
五十嵐:たとえば『とある魔術の禁書目録』の一方通行(アクセラレータ)や『ONE PIECE』の幼少期のくまなど……それと僕は『CLANNAD』がすごく好きなんですが、こちらにも出演されていましたよね。もう幅がすごすぎて。まさかこうして対談させていただけるなんて思っていなかったので、今でもちょっと不思議な気持ちです。
岡本:ありがとうございます!『CLANNAD』も男子生徒役で出させてもらっていました。一方通行(アクセラレータ)はそういうふうに言ってもらう機会が多いですね。
──岡本さんは蒼吏というキャラクターを演じる上で、意識されたことはありますか。
岡本:オープニングや第1話では、ちょっと悪い顔をしているじゃないですか。ただ、あれは「第1話オンリーで」「炎上系を演じているぐらいの感覚でお願いします」と伺っていました。アニメ制作では、音響監督がディレクションをしてくださるのですが、(音響監督の)納谷僚介さんから「彼はピュアで、いい子で熱い子」という方向でお願いします、と聞いていて。だから第2話以降の彼が本来の蒼吏であって、本来は素直な子なんですよね。いろいろなことに感動したり、驚いたりする、かなり直感型というか。あまり深く考えるよりも、感じたままに声を発する。
ただ、炎上系もできてしまうということは、何かしらの要素は持っているはずで。その中で一番キーに置いているのは、「人のために何かをする人」という部分です。妹のために頑張る、仲間のために頑張る。弥電学園に入ったことで、「仲間のために頑張る」という軸が生まれたのは、彼にとって結構幸せなことだったんじゃないかな、と思っています。というのも、蒼吏って「自分のために」という部分が、若干欠落しているところもあるんですよね。自分が何かしたい、となると、プリンが食べたいとか、そのくらいしかなくて(笑)。困っている人がいたら助けたいとか、敵がいるなら何とかしたいとか、そっちの気持ちが強い。ヒロイズムは感じますよね。
──岡本さんと蒼吏の共通点というとどうでしょうか?
岡本:自分も甘いものは好きです(笑)。自分のエゴの部分は食べ物に出ているかもしれないですね。あとは、「人のために」の方が、自分は楽だったりします。自分のためだけだと、どこかで「まあ、いいか」ってなってしまいそうなんですけど、人のためだと「頑張ろう」と思える。そういう部分は、確かにありますね。
──岡本さんは、いつも「人のために」というところを大切にされている印象があります。
岡本:声優としても「自分が前に出る」というよりは、キャラクター第一で考えたいタイプではあります。役者は自分にキャラクターを引き寄せるタイプと、キャラクターになって自分を差し出すタイプ、二通りいると思うんですけど、僕は後者。キャラクターありきで、自分はちょい足し、という感覚ですね。
結果的に「あ、岡本ってこういう声だよね」と思ってもらえればいいな、と。だから、「俺についてこい」というより、キャラクターの一挙手一投足を考えたい。キャラソンがある場合も同じで、自分の声で歌ってキャラクターがついてくる、ではなく、キャラクターの声ありきで歌っています。
──五十嵐さんがずっと頷きながら聞かれていましたが。
五十嵐:さきほどからお話が興味深すぎて……純粋に聞き入っていました(笑)。キャラクターソングについても「このキャラだからこう歌う」というところを突き詰めて考えているんだなと。自分自身の歌の上手さじゃなくて、あくまでキャラクターとしてどうあるのかがメインなんですね。
岡本:そうですね。
──五十嵐さんも、それこそ「人のために」という想いから警察官になられたのでしょうか。
五十嵐:強い意志があったというよりかは、実はたまたま受かった、くらいの感じではあるのですが……(笑)。運が良かったんだと思います。
対照的な声を持つふたりの音楽談義
──岡本さんは五十嵐さんの歌声を聴かれて、どんな印象を持たれましたか。
岡本:純粋に「かっこいいな」と思いましたし、曲自体もすごく印象的でした。まずイントロがいいですよね。エレキギターのサウンドが心地よくて、ずっと聴いていたくなるというか、インストでも聴きたいと思うくらいで。疾走感がありつつ、サビではしっかりキャッチーに締めてくれる。そのバランスがすごくいいなと感じました。
五十嵐:ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです。
岡本:あと、やっぱりインパクトがあるのが声質ですよね。青春を思わせるような若さがありつつ、どこか闇もある。陽と陰、その両方を持っている声だなと。僕自身はどちらかというと陽声で、「声質でどう陰を出すか」というのを芝居で考えることが多いんですけど、五十嵐さんは、持っている声質そのものが“陰”の属性を含んでいるというか。そこに、少しネガティブな歌詞のワードが重なって、曲の本質とすごく噛み合っているなと思いましたね。
──もともとの声質的には、おふたりはもしかしたら対極にいるかもしれない……?
岡本:そうかもしれません。影のある声の方ってあまりいない印象なんですよ。性格はネガティブでも、声自体は陽という方が意外と多かったりします。例えば『デッドアカウント』キャストで言うとうっちー(内山昂輝)が闇属性寄りだと思うんですけど、普段からローテンションというか(笑)。最初に会ったときはお互いに大学生だったのですが「おじいちゃんみたいだな」って思った記憶があります(笑)。闇寄りの声の方は、人生経験を重ねていくたびに、どんどん味のある声になっていく印象があります。あくまで個人的な分析ですけどね。
五十嵐:闇属性寄りなんだろうなと自分でも思う部分はあります。ただ、そういう人が少ないっていうのはちょっと意外でした。
岡本:地声そのものが影を彷彿とさせるタイプって、意外と本当に少ないんですよ。作品関係なく言うと、弊社・ラクーンドッグには堀江瞬がいますけども(笑)。でも考えてみたら、アーティストの方、特に男性ボーカルの方は闇声の人が多いのかもしれませんね。アイドルの方とかはまた違うかもしれませんが。
五十嵐:確かにミュージシャンはそうかもしれません。自分自身、実際、ネガティブだったりマイナス思考なところがあって、闇属性よりなんですよね(笑)。『デッドアカウント』を最初に見たときも、自分の人生観と通じる部分があるなと感じました。
この作品の主題歌であれば、無理に自分を変えて全部を合わせにいかなくても、自分なりの解釈をそのまま落とし込めば、自然といい曲になるんじゃないかと思って。凝り固まって作ったというよりは、自分の中にあるものを吐き出しつつ、作品とすり合わせていった感覚ですね。ちょうどいいバランスで作れた気がしています。
──「デッドエンド」で五十嵐さんの人生観が特に反映されているワードと言うと?
五十嵐:結構初っ端から入っているんですよね。冒頭の〈ふらふらふら壊れやすい人生で×(バッテン)ばっか付いちゃってもうどうしようか〉は、自分が普段から思っていることで。その直後にある〈上がり下がり行ったり来たり騒がしい毎日です〉というのは、この曲を書いていた日、嬉しいことがあった直後にすごく悲しいことがあって。それを歌詞にそのまま落とし込んでいます。
──日常の中から自然に生まれているんですね。
五十嵐:そうですね。もちろん、『デッドアカウント』と照らし合わせながら、「これはマッチするな」というものを選んではいます。サビの〈散々な世界だから何者にもなれないから〉といったフレーズも、自分が生きてきた中で感じてきたことではあったので、いい落としどころにできたかなと思っています。
──闇とはいいつつ、徐々に前向きな気持ちに変化していくのも、この曲の魅力のひとつですよね。
五十嵐:この曲は、絶望だけで終わるものにはしたくなかったんです。『デッドアカウント』の第1話でも、妹を失うという絶望が描かれつつ、そこから立ち上がろうとする姿があって。だから、マイナスな感情の中でも、まだ炎は消えていない、灯されるんだというイメージは残したくて。少しずつ前を向く要素を入れた、という感じですね。
──レコーディングはいかがでしたか。
五十嵐:正直、結構難しかったです(苦笑)。
岡本:難しいですよね!? ここでファルセットがくるんだと。
五十嵐:なかなか苦戦しましたね。ただ、録る前は「今日いけるかな……」と思っていたんですけど、声が温まってきたら、意外といけた部分もあって。
岡本:トップキーっていくつですか?
五十嵐:この曲はAまでいってないと思うんです。地声の部分はG♯くらいかなと。G♯で高い音を出すことをよくしているんです。一瞬だけAにいったりして。
──岡本さんは、今だとどのあたりのキーがいちばん安定しますか。
岡本:僕はF#ですね。ライブを見据えると、基本的には安全にF♯でいきたい。GとかG♯の曲もありますが。
五十嵐:この曲も最後のサビは、ライブで持つかどうか、正直ちょっと心配です(苦笑)。
岡本:心配になりますよね。でも、会場の熱量が高まってきたら、いけそうな気もします。頭が出れば気持ちよくいけそうな感じもあって。レコーディングは、ブロック分けで収録されているんですか? それとも全部つるっと録る感じですか。
五十嵐:基本的には、パートごとですね。
岡本:それはそれで、サビの高いところを何度も録ることになるから、きついですよね。
五十嵐:そうなんです。結構、録り直してましたね。サビはやっぱり苦戦しました。
──五十嵐さんの中で、「デッドエンド」はどんな立ち位置の楽曲になっていますか。
五十嵐:自分の中では新しい一面を出せた曲かなと思っています。マイナスな要素もあるんですけど、前向きな部分も含まれていて。曲調自体も、ただ絶望しているだけじゃなくて、かっこよさを漂わせた、クールな楽曲だと思っているんです。実は、こういうタイプの曲って、あまりリリースしてこなかったんですよね。切ない曲とか、エモ寄りの速い曲はあったんですけど、こういう方向性は新鮮でしたね。
──ジャケットやMVは石像がモチーフになっていますが、どういったアイデアだったのでしょう?
五十嵐:いつもお願いしている方にMVもジャケットも担当してもらいました。いくつか案を出してもらった中で、もう少し抽象的で、スマートさやクールさを出したいなと思って。その中で、この石像の目を覆っているビジュアルが、すごくしっくり来たので、「これでいきましょう」と決めました。
筋トレをすると「前向きになりすぎてしまう」?
──せっかくの機会なので、お互いに聞いてみたいことがあればぜひ。
岡本:じゃあ僕から。タイトルって、いつのタイミングで決めるんですか? 最初から決まっているのか、それとも歌詞を書いたあとに決めるのか。
五十嵐:基本的には、どの曲でもタイトルは最後です。
岡本:やっぱりそうですよね。
五十嵐:はい。この曲もそうでした。「デッドエンド」はいろんな要素を掛け合わせて決めたタイトルなんですよね。“行き止まり”を表せる言葉ですし、『デッドアカウント』との言葉のつながりもあって。“デッド○○”って、タイトルとしてカッコいいなと思って、いろいろ単語を調べました。意味を書き出して自分の歌詞と合うかどうかを照らし合わせて、候補をいくつかパソコン画面に並べて見比べるんです。そのときに、「リリースされたときに“五十嵐ハル『〇〇』”と並んだときの見え方」をイメージして、一番しっくり来たのが「デッドエンド」でした。
岡本:なるほど。タイトルをカタカナにしたのも、『デッドアカウント』と合わせて、という意識があったんですか。
五十嵐:そうですね。そこは意識しました。英語表記もかっこいいとは思ったんですけど、今はカタカナのほうがしっくりくるな、という感覚があって。
岡本:ありがとうございます。やはりそうなんですね。僕も作詞をするので分かるんですけど、結果的に後からタイトルを決めることが多くて。最初に決めることって、わりと稀なんですよね。理由は分からないのですが……最初に決めすぎると、狭まっちゃうのかもしれないです。それにしても、感情から歌詞を作られるというのは、すごいなと思います。
──岡本さんは、また少し違いますか?
岡本:僕は、メロディが先に来るタイプです。メロの数が決まって、「じゃあどうしようかな」って考える。基本的には応援ソングを書くことが多いので、「どうやったら応援になるかな」と考えながら書いています。構成としては、1番で提示したものを、2番で反語にして、3番でその反語を回収する、みたいな形になりがちです。
あとは、近い言葉をうまく入れ替えてまとめるとか。例えば「僕」という単語が出てきたら、2番では「君」になりがちです(笑)。呼応しあうようにするというか。それと歌詞を書くときに気をつけているのは、母音の「い」と「う」が最高音にならないようにすることです。叫びにくい母音だと、ひっくり返りそうで危ないんですよ。特にG♯は一瞬でも怖い。
──お話を聞いていると岡本さんの歌詞、改めて読みたくなります。
岡本:いやいや(笑)。僕でいうと、感情的に抱えて書いているというより、かなりロジック寄りなんです。そういう意味では、五十嵐さんのように感情から出てきた言葉のほうが、刺さる人は多いだろうなと思います。
さっきのお話を聞いていて思ったのが、人間は基本的に嫌なことのほうが多い生き物だと思うんですよ。むしろ、うまくいかないことのほうが圧倒的に多い。だからこそ、そういう感情に寄り添う言葉は、きっと多くの人に届くんじゃないかなと思います。
──では五十嵐さんから岡本さんに聞いてみたいことはありますか?
五十嵐:はい、作品とは直接関係ないんですけども……。
岡本:全然大丈夫ですよ。
五十嵐:ひとつ前の取材で、筋トレがメンタルにもいい、というお話をされていたじゃないですか。声優さんは声のお仕事ですけど、今はSNSや番組で顔も出る時代で、岡本さんはスタイルがすごくいいなと思って。その維持ってどういう意識でやられているんでしょうか。
岡本:内面的な意識で言うと……おそらく声優は、童顔な人が多いんですよね。少年役をやっていると、もしかしたら何か分泌されているのかもしれない(笑)。先輩方も「若いな、この人」と思うことが本当に多くて、50代の方々も「俺たち若手はさ」などと言うので「やめてください」って(笑)。「じゃあベテランって何歳からですか?」と聞くと、「90からだろ」みたいな返事が返ってきたりして。
五十嵐:(笑)
岡本:そういう内面的な若さがまずありつつ(笑)。それこそ僕は筋トレですね。アンチエイジングに効果があるという研究結果もありますし。やりすぎると逆に老けるらしいんですけど、適度が一番いい。最近は、美容にハマっている人も増えましたよね。時代だと思いますし、「これがいいよ」みたいな話、よく聞きます。
五十嵐:男性キャストの皆さんの中で、美容や体づくりの話題はよく出るんですか?
岡本:僕はおすすめしてもらったものを素直に使うタイプですね。最近だと後輩にビタミンC系のサプリとか。それとタンパク質も適度に摂取しています。「鶏むね肉がいいよ」と聞いてからは、むね肉ばっかり食べてますね。低温調理して、塩コショウだけで食べる。もうそれだけです。
五十嵐:かなりストイックなトレーニング食ですね……!
岡本:まさにトレーニング食ですね(笑)。周りにも筋トレやってる人が多くて。この現場でも多いです。(痣木宵丸役の)佐藤拓也さん、(漆栖川希詠役の)ファイルーズあいちゃん。特に(柄本成彦役の)鈴木崚汰はやばいですね。やりすぎ(笑)。「今、ベンチプレス何キロ?」みたいな、いわゆる“ベンチトーク”をよくするんですよ。100キロ超えが出てくると、みんな「おお……」ってなる(笑)。
五十嵐:岡本さんはどうでしょう?
岡本:僕は今、基本的に55キロで10回を3セットですね。それよりきついのが、ブルガリアンスクワット。あと、おすすめなのがラットプルダウン。背中の種目なんですけど、これをやるようになってから、叫びやすくなりました。それこそ蒼吏って叫ぶシーンが多いので、それを実感しています。「全ては筋肉だ」と(笑)。
五十嵐:ライブ前はやはり体を絞りたいなと思っているのでぜひやってみたいです。
岡本:ぜひ。オススメです。以前は糖質制限が流行っていましたが、お米を食べることも大事と最近は言われているそうです。筋肉が増えると基礎代謝も上がって、結果的に燃焼のほうが勝つらしいんですよね。ただ、五十嵐さんは「マイナス思考寄り」って言ってましたよね。筋トレすると、ちょっとポジティブになりがちなんですよ(笑)。ネガティブさは大事にしつつ、筋トレはほどほどに……ですね(笑)。
五十嵐:ああ、なるほど……! 実は思い当たるところがあって。警察学校時代は柔道もやっていたので、トレーニングも適度にしていたんですが……やっぱりポジティブになっちゃって。
岡本:そうですよね、ポジティブになっちゃうんですよ(笑)。音楽性を考えると、もしかしたら筋トレせず、適度にお米を抜くぐらいのダイエットがちょうどいいかもしれません(笑)。
五十嵐:めちゃくちゃ明るい曲ができるかもしれない……。
──でも岡本さんは、さきほどのお話にもありましたがもともと陽のかたですよね?
岡本:筋トレを始めてから拍車がかかったんです。僕はカカオも好きなんですが、カカオと……あとお肉も幸せホルモンが出るといわれていて。そこに筋トレが加わって、さらに磨きがかかりましたね。ちょっとしたストレスなら、全部「イエス」で答えられる感じです。ちょっとした悩みよりも「それより、明日のトレーニングのことを考えよう」という考え方になってしまう。ものづくりをされている方は、筋トレせずに、むしろそのドロドロした感情を作品に抽出したほうがいいのかもしれないですね(笑)。
五十嵐:難しいですね(笑)。でも、すごく勉強になります。いつか前向きな曲を依頼されたら、筋トレをします(笑)。
『デッドアカウント』、そして五十嵐ハルのこれから
──物語の前半を振り返っていければと思います。前半戦(第6話まで)で、おふたりが特に印象に残っているシーンやセリフはありますか。
岡本:なんといっても、まず第1話ですよね。妹が「実はもう死んでいた」という事実が明かされる展開が、ものすごく強いフックになっていて。この作品はどういう物語なんだろう、と一気に掴まれる。電能という能力も第1話でしっかり提示されていて、構成としてすごく綺麗だなと思いました。
しかも、炎上系配信者として活動している蒼吏の姿が見られるのは序盤しかないので。そういう意味でも、あそこでしかできない芝居があって、すごく楽しかった記憶があります。あとは、やっぱり「寂しがり屋のK」が登場する場面ですね。Kと痣木先生の、いわば頂上決戦のようなバトルが好きです。こちら側の最強と、あちら側の最強がぶつかる感じがすごく好きで、「ああ、この先生、やっぱりかっこいいな」と思いながら見ていました。
五十嵐:自分も、痣木先生がめちゃくちゃ好きで。主人公ではないんですけど、圧倒的に最強で、頼れる存在という立ち位置がすごく刺さるんですよね。まさにそれを全部詰め込んだような存在だなと思いながら観ていました。セリフで言うと、霞流が縁城に最初に言った「でもなんとか折り合いつけて生きていくしかねえんだよ」といった言葉にハッとさせられました。本当にその通りだなと。
──では今後の見どころについてお聞かせください。
岡本:やっぱり甲組でしょうか。甲組の面々が登場してきて、僕はその中でも輪狩が結構好きなんです。オープニングでちょっと出ているので言ってしまいますけど、刀を使うキャラクターで。眼鏡キャラって、知的で分析型、データ重視みたいなイメージがあるじゃないですか。でも彼はゴリゴリのインファイターなんですよね。そのギャップがすごく良くて。性格も、正義感はあるんだけど、それがちょっと行き過ぎている感じで……いや、面白いキャラだなって思います。
──本当に個性的なキャラクターが揃った作品ですよね。
岡本:そうですね。電能で言うと、僕は大和田の電能がすごく好きで。ネタバレになっちゃうので詳しくは言えないんですけど、いろいろな電能が出てくるところも含めて、かなり楽しんでもらえると思います。
五十嵐:楽しみです。原作でも甲組が登場してから、一気に面白さが加速したように思いました。最初は敵役、ライバル的な立ち位置で出てくるキャラクターたちなんですけど、全員にしっかり魅力があって、それぞれ個性がある。その後の展開でも、「え、こうなるんだ」という意外性がちゃんと用意されていて、展開ごとに全然退屈しないんですよ。どんどん面白くなっていく作品だと思うので、今見ている視聴者の方にも、ぜひ楽しみにしてもらえたらいいなとイチ視聴者としても思っています。
──ありがとうございます。そして、五十嵐さんは初ワンマンライブツアー 「Mr.Sentimental Vol.1」も控えられていますが、今回のツアーで楽しみにされていることはありますか?
五十嵐:めちゃめちゃ楽しみですね。ワンマンライブ自体が初めてなので、純度100%で、自分のことを好きでいてくれる人たちが目の前にいるという状況を、まず全力で楽しみたいです。ネット出身のアーティストということもあって、直接顔を合わせられる機会って実はそんなに多くないんですよね。だからこそ、その時間を大切にしながら、お互いに最高の時間にできたらいいなと思っています。
──「デッドエンド」を聴いているときは、こんな反応をしてほしいといった希望はありますか?
五十嵐:自由に楽しんでもらいたいなとは思っているのですが……イントロがすごく印象的な曲なので、そこで「来た!」って感じで、自然にテンションが上がってもらえたら嬉しいですね。ここをこうしてほしいというのは特になくて、それぞれ思うままに楽しんでもらえたら、それが一番だと思っています。
[取材・文/逆井マリ 撮影/鳥谷部宏平]