ご家族へのお悔やみの言葉に迷ったら~利用者さんが亡くなった際の声かけのポイントとNG例~
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本日のお悩み:亡くなった方のご家族にどのような声をかければよいかわからない
介護職で働いていると、利用者さんが亡くなる場面に遭遇したり、ご家族から利用者さんの訃報を聞いたりすることがあります。
その際に、悲しいという気持ちはあるのですがご家族はそれ以上に悲しいのであると思うと、どのような声をかければよいかわかりません。
利用者さんが亡くなった際のご家族への声のかけ方を教えてください。
迷いは優しさの証
執筆者/専門家
大関 美里
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/13
ご相談ありがとうございます。 介護の仕事をしていると、利用者さんの最期に立ち会ったり、ご家族から訃報を聞いたりすることがありますね。
そんなときに「どう声をかけたらいいのか分からない」と戸惑うお気持ち、とてもよく分かります。 でも、その迷いこそが、あなたがご家族を思いやる優しさの表れだと感じます。
「ご家族の悲しみに比べれば、自分は立場が違う」
「下手なことを言って傷つけてしまったらどうしよう」
と、迷ったりするのも無理はありません。
そんな風に考えてしまうのは、誠実で心優しい方だからこそだと思います。
言葉よりも大切な「共にいること」
私たちはつい「何が正解の言葉か」を探してしまいがちです。 しかし、グリーフケア(家族など身内の死別の悲しみを抱える方のサポート)では、悲しみを感じている人に寄り添うことが何よりも大切なのです。
完璧な言葉を探すよりも、「この人も一緒に家族のことを大切に思ってくれている」と、ご家族に感じてもらうことが重要です。沈黙のうなずきでも、そっと手を合わせる仕草でも、目に涙を浮かべることでも、全く構いません。無理に言葉を探さなくても、その真心はちゃんとご家族の心に届きます。
【専門家の実体験】祖父と私が過ごした時間に寄り添ってくれた介護職員
ここで、私自身の体験をお話しさせてください。 祖父を看取ったときのことです。祖父は100歳近くまで生き、周りからは「大往生でしたね」と何度も声をかけていただきました。
しかし、最期まで一番近くで介護をしていた私は、素直にその言葉を受け取ることができませんでした。「もっと何かできたのではないか」という後悔の気持ちが強く、「大往生」と言われるたびに、「本当にそうなのかな…」と心がざわつきました。
そのときに気づきました。どんなに正しい言葉でも、受け取る人の心の状態とタイミングによっては重荷になってしまうことがあるということを。
逆に、心に残ったのは、祖父と私が一緒に過ごした時間を懐かしそうに話してくれた方の言葉でした。「おじいちゃんをおぶってトイレに走るのを見て、あぁ本当に大切にしているんだなと思ったよ」「介護用ベッドを搬入した時の、お孫さんを見る穏やかな表情が心に残っています」そんな具体的な風景を共有してくれたとき、私は後悔の暗い気持ちからではなく、頑張っていたことを思い出せて、泣くことができました。
【具体例あり】ご家族の心に寄り添う声かけのポイント3選
では、これらの実体験をもとに、ご家族の心に寄り添った声かけのポイントを紹介していきます。
【ご家族の心に寄り添う声かけのポイント】
1.訃報を受けた際、まずは短い言葉から
2. 故人との具体的な思い出を共有する
3.ご家族の言葉にそっと耳を傾け寄り添う
1.訃報を受けた際、まずは短い言葉から
訃報を聞いた最初の瞬間は、長い言葉は必要ありません。以下のような声かけができるとよいでしょう。
「突然のお知らせに、私も驚いております」
「○○さんとご一緒させていただけた時間を、大切に思っております」
「心からお悔やみ申し上げます」
「最期まで○○さんらしくいらっしゃったこと、心に残っています」
2. 故人との具体的な思い出を共有する
次に、身近で関わってきたあなたにしか語れない、故人との温かい思い出を伝えましょう。
「○○さんがいつも『家族が一番』とおっしゃっていたお気持ち、よく分かります」
「○○さんの『ありがとう』という言葉が、いつも私たちの心を温めてくれました」
「最期まで、ご家族のことを大切に思っていらっしゃる様子が印象的でした」
3.ご家族の言葉にそっと耳を傾け寄り添う
ご家族から故人との思い出や後悔の言葉が出てきた際は、解釈したり励ましたりしようとせず、まずはその気持ちをそのまま受け止めてください。
「そうだったのですね」
「お辛い気持ち、よく分かります」
「○○さんがいつもご家族のことを大切に思っていらっしゃることが伝わってきました」
「私たちにとっても、かけがえのない方でした」
たった一言のようでも、それだけで気持ちは十分に伝わります。
【具体例あり】ご家族への声かけで避けたほうがよい言葉や留意事項
次に、ご家族への声かけで避けたほうがよい言葉をご紹介します。思いやりの気持ちから発せられる言葉でも、ご家族には時として心に負担をかけてしまうことがあります。
「大往生でしたね」「もう苦しまなくて済みますね」
まだ悲しみの真っただ中にいるときに、前向きな解釈を求められているように感じてしまうことがあります。
「元気を出してください」「時間が解決してくれます」
悲しんでいる気持ちから立ち直ることを急かされているように感じてしまう場合があります。
宗教・宗派への配慮
また、人が亡くなった際の声かけは宗教や宗派によっても異なります。具体的には以下の通りです。
・一般的な仏教:「ご冥福をお祈りいたします」
・浄土真宗:「ご往生なさいました」
・神道:「御霊のご平安をお祈りいたします」
・キリスト教:「神の御許での安らかなお眠りを」
ただ、利用者さんの宗教や宗派まで把握をすることは難しいかと思いますので、一般的には、「心よりお悔やみ申し上げます」とお伝えするのが良いと思います。
最後に:正しい言葉より個人と家族を思う心が大切
「正しい言葉を言わなければ」と思う必要はありません。故人とご家族を大切に思うあなたの心、その誠実さこそが、ご家族にとって何よりの慰めになります。
私が祖父を看取ったときに一番心に残ったのは、完璧な弔辞でも専門的なアドバイスでもありませんでした。涙を浮かべながら寄り添ってくださった方の、その真心でした。
ご相談者様も、その自然な優しさを信じて、ご自身らしい方法でご家族に寄り添ってください。きっと、あなたの真心はご家族の心に静かに届き、大切な支えとなるはずです。
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