伝統工芸を支える「手漉き和紙作家・ロギール・アウテンボーガルト」Tosaditional~土佐の匠~
高知県で古くから受け継がれてきた伝統技能。その優れた保持・継承者や県内産業の
基盤を支え、その振興に貢献している熟練技能者を称えるために創設された「土佐の匠」 。
今回は、手漉き和紙の匠『ロギール・アウテンボーガルト』さんをご紹介します。
※2026年2月取材
※掲載している内容は取材当時のものになります
『土佐和紙に魅せられたオランダ人』
「紙みたいな可能性のあるマテリアル無いと思う。紙みたいな薄いも厚いも強いも弱いも、無限ですね」
そう語るのは、手漉き和紙の匠『ロギール・アウテンボーガルト』さん。
日本三大和紙の一つとされる「土佐和紙」。
薄くて丈夫。その種類の豊富さと高い品質で、国の内外で高い評価を得ている、高知県の特産品です。
愛媛県との県境に位置する梼原町。四国カルストが広がる山間部の小さなまちで、土佐和紙を使った作品作りを行っているのが今回の匠、オランダ出身のロギール・アウテンボーガルトさん。
「私が初めて和紙を見た時、まず不思議と思ったけど、むっちゃくちゃ美しかった。ワオ、これはキレイ。あかりを通して見ると」
かつて製紙業が盛んだったオランダ。ロギールさんの和紙との出会いは、見習いとして働いていた製本工場でした。
「ある日和紙を一枚、A4一枚見つけてみんなに『これなんですか?』って聞いたら多分日本じゃないか、みたいな」
和紙の美しさに魅了され1980年に来日。日本各地の手すき和紙工房を訪ね歩き、翌年、高知県へとたどりつきました。数ある和紙の産地の中でなぜ高知を選んだのか。理由を聞いてみました。
「(和紙の)原料。(高知県は)全国一番の産地だから昔から。原料はどこにある?元々は山の方。そこからスタートする、journeyが。旅がスタートする。じゃあ田舎ね。田舎には水もある、川とか。土が大事かもしれないとか、人とかコミュニティが大事」
自然に恵まれた高知への移住を決めたロギールさん。
和紙の魅力を探究する旅はいの町を経て、1992年には梼原町へと続きます。
『和紙作りに込められた日本文化への深い思い』
紙すき工房「てんぐの風」では自ら栽培した土佐和紙の原料「楮(こうぞ)」や「三椏(みつまた)」を使った和紙作りを行っています。
決して便利な場所とは言えない、自然が色濃く残る梼原の山あい。
この地で続けられている和紙作りには、ロギールさんの日本文化への深い思いが込められています。
Q.この剥いだ皮が(和紙の)原料?
「これに紙の繊維がいっぱい詰まっている。梼原で昔(原料を)たくさん作っていた人は1年間これを栽培。カルストの斜面を上まで2時間歩いて栽培していた、そういう生活。一軒で2000キロ、乾いた原料を出荷、それで生活ができていた。国が全部買い取ってくれていた。今90~100歳の人たちは覚えている。もうあまり話は聞けない。そういう話も私が伝えていく役割。そうしないと消えちゃう、そこが“伝統”の意味でもある。『紙漉き』だけじゃない、高知の山奥の暮らし、昔の暮らしとか」
和紙を作ることはただ紙を作るだけではなく、その地域にあった暮らしや記憶を未来へとつないでいくこと。
ロギールさんの和紙作りは、その営みそのものを今に伝えています。
そして自然素材だけを用いる昔ながらの製法も、大切に受け継いでいます。
「この白いのはコットンです、これはコウゾ、長い繊維、これは珍しい、茶色いのはクワの木の皮・・・」
ロギールさんが作った土佐和紙を使った襖紙や障子、照明器具に壁紙。
それぞれ和紙独特の繊細で複雑な表情を引き出しながら、温かみを感じるのが特徴です。
和紙作りへの真摯な姿勢・高い実績が評価され、2007年、外国人で初めて土佐の匠に認定。現在ロギールさんはより深く土佐和紙の魅力に触れて欲しいと、1日1組限定のゲストハウスの運営も行っています。
こちらでは作品の販売の他、ワークショップも体験することができます。
「紙・技術・伝統を守る、だけじゃなくて、これはすごい文化として、川にもつながっていく、山につながっていく、観光にもつながっていくでしょ。そういう頭になると、これは値打ちがあるじゃんと」
一枚の和紙との出会いから始まった一人のオランダ人の旅は、今や土佐和紙だけでなく、高知の文化や自然の魅力をたくさんの人に伝える大きな取り組みへと広がっています。
ロギール・アウテンボーガルト。
彼の和紙作りは今日も、高知・梼原の深い山あいで続いています。
『ゲストハウス『かみこや』・ロギール・アウテンボーガルト』さんの公式SNS』
【ゲストハウス かみこや】
〒785-0603 高知県高岡郡梼原町太田戸1678
電話番号:0889-68-0355
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