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子どもの肥満増加の原因は?発達障害との関連や肥満度計算も紹介【医師監修】

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子どもの肥満増加の原因は?発達障害との関連や肥満度計算も紹介【医師監修】

監修:藤井明子

さくらキッズくりにっく院長 /小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医

子どもの肥満とは?原因は?

現在の日本では食事の変化や運動量の低下などにより、肥満の人が増えていると言われています。肥満は糖尿病や高血圧症、心血管疾患などの生活習慣病につながるリスクが高まることから、健康管理において肥満防止は重要な要素となっています。

肥満と聞くと体重が重い人という連想をする方が多いかもしれません。しかし、肥満とはただ体重が重いだけではなく、人の身体に過剰に体脂肪が蓄積している状態のことを言います。

肥満度は体重と身長の数値から求められるBMI(Body Mass Index)という数値を使って判定されていますが、同じBMIでも実際に体内のどこに脂肪がついているかでリスクが異なってきます。

筋肉の内側に脂肪のつく「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」と、皮下脂肪が多く内臓脂肪が少ない「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」の2つのタイプがあり、内臓脂肪型肥満のほうが糖尿病や高血圧、脂質代謝異常といった疾患を発症する可能性が高いとされています。

先ほどのBMIは成人に使われる指標で、6歳から18歳の学童期の子どもの肥満度には別の指標が用いられます。子どもの肥満度は「100 × (現在の体重‐標準体重)÷標準体重」で求められます。

「小児肥満症診療ガイドライン2017」では、「肥満度が+20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態(有意な体脂肪率増加とは、男児:年齢を問わず25%以上、女児:11歳未満は30%以上、11歳以上は35%以上)」を肥満と定義づけています。
引用:e-ヘルスネット|肥満と健康

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html

上記を満たす場合に「小児肥満」だと定義しています。

子どもの肥満の場合も、高血圧や睡眠時無呼吸症候群、糖尿病などの発症リスクがあると言われています。

こういった肥満に伴う健康リスクが高い状態を「メタボリックシンドローム」と呼んでいて、子ども(6歳から15歳)の場合は腹囲が80cm以上などの目安が設けられています。実際には腹囲だけでなく血圧などの数値も加味して判断するため、子どものメタボリックシンドロームが気になる方は一度医療機関で検査を受けるようにしましょう。

乳幼児や小学生など子どもの肥満のほとんどは、単純性肥満と呼ばれるものです。つまり、食べ物などによって摂取したエネルギーが、運動などにより消費されたエネルギーを上回っていることで生じる肥満のことです。

子どもが普段摂っている食事のバランスや悪いことや、お菓子、清涼飲料水の過剰摂取によって摂取エネルギーが高くなる反面、運動不足などで消費エネルギーが少ない状態が続くことによって肥満へとつながっていきます。

日本では1970年代からライフスタイルの大きな変化があり、子どもの肥満が増加しました。現在は増加傾向は収まっているものの、それでも全体の10%以上の子どもが肥満と判定されると言われています。

このような原因から「子どもの肥満は親のせい?」と悩む方もいるかもしれません。しかし、きょうだいなど同じような食事内容やライフスタイルであっても、肥満になるかどうかには個人差があります。もちろん、養育者や近くの人だからできる肥満対策もありますので、後ほど紹介します。

また、子どもの肥満は単純性肥満が多いですが、症候性肥満と呼ばれる何らかの病気が原因で肥満になっている場合もあります。その際は身長の伸びも遅れるのが特徴と言われています。

子どもの肥満が原因で起こるさまざまな病気

子どもの肥満のリスクには、成人の肥満へつながる可能性や多くの合併症のリスクなどがあります。

子どもの頃、特に年長児の肥満はそのまま成人の肥満に移行しやすいと言われています。また、思春期の肥満だと体格が形成されることや肥満になりやすいライフスタイルが定着することで、さらに肥満の解消が難しくなることも指摘されています。

肥満は合併症のリスクも高まると言われていますが、合併症がない場合でも体重の増加により膝や腰など身体に大きな負担がかかります。

子どもの肥満には合併症のリスクがあると紹介しましたが、具体的には生活習慣病として知られる2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などにつながる可能性があると言われています。そして、このような生活習慣病は動脈硬化を促進していき、成人してからの脳卒中のリスクを高めることも指摘されています。
    
その他の合併症としては睡眠時無呼吸症候群や脂肪肝など、さまざまな疾患につながる可能性があります。

子どもの肥満であってもこのようにさまざまな病気のリスクが高まるため、できるだけ早く肥満を解消することが大切となります。

子どもの肥満と発達障害の関連性

ここでは、子どもに発達障害がある場合の肥満との関連性を紹介します。

発達障害のある子どもは、感覚過敏や衝動性などの特性の影響で偏食が激しいことや食事量が多すぎることがあると言われており、そのことが肥満につながっている場合もあります。

アメリカの調査ですが、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どものうち22.2%が肥満であり、定型発達の子どもに比べて肥満となるリスクが41.1%高かったという結果も出ています。

別の調査によると注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは衝動性の特性の影響により過食になる傾向があるほか、不注意の特性の影響で規則正しい食生活が難しく、そのことが肥満につながる場合があるとされています。

また、発達性協調運動症(DCD)のある子どもも肥満のリスクが高い可能性があります。発達性協調運動症とは、手足や身体の動きをコントロールすることに困難がある発達障害の一つです。子ども同士の遊びやスポーツへの参加が少ないため運動量が低下することなどにより、ほかの子どもに比べて肥満のリスクが高いとされています。

このように、肥満の背景に発達障害の影響が隠れていることもあるため、肥満以外にも気になる様子があるときはかかりつけの小児科や保健センターなど専門家への相談も視野に入れるといいでしょう。

子どもの肥満を解決するために家庭でできること

子どもに肥満が見られる場合に家庭でできることを紹介します。

まず、子どもは体重を維持するだけで身長の成長と共に肥満が解消されることもあります。

肥満を気にして栄養を制限し過ぎることは子どもの正常な成長を妨げることにもなるため、子どもの肥満解消には摂取エネルギーを減らすのではなく、規則正しい食生活や運動によるエネルギー消費を増やすことが大事になります。

まず乳児期は成長が最も著しい時期のため、多少の肥満は気にする必要がないと言われています。ハイハイや歩き始めるなど運動ができるようになると肥満も解消されていくことがほとんどです。

幼児期になると、先述したように成人後の肥満へつながることも考えられるため、対策が必要になってきます。この頃の生活習慣が後にも影響するため、三食決まった時間に食べることや間食を計画的にするなど食生活を安定させ、外での運動遊びも積極的に行ってきましょう。食事は不足しがちな野菜、魚介類、豆類などを出すようにするといいでしょう。
運動は子どもにさせるだけでなく、家族で一緒に遊ぶなど工夫しながら取り入れていくと効果的です。

学童期の肥満は幼児期よりも成人後の肥満につながりやすいため、注意が必要です。この頃になると子ども自身も肥満対策の重要性を理解できるようになってくるため、食生活や運動について納得いくように説明することも大事です。運動もエネルギー消費の激しいものではなく、あくまで子ども本人が楽しいと感じるものにして、身体を動かす習慣をつけるようにしましょう。

肥満の解消は家庭だけではなく、必要なら医療機関に頼ることも大切です。家庭ごとに事情があると思いますし、子どもにも成長の個人差や肥満の背景に障害が隠れていることもあるなど複雑な要素が絡まっていることもあります。

医療機関で検査をすることで、家庭や子どもの状態に合ったアドバイスをもらえることもあります。抱え込まずにかかりつけの小児科や保健センターなどへ相談してみるとよりよい方法が見つかるかもしれません。

肥満予防はなるべく早く対策をしていくことが大事

肥満はさまざまな生活習慣病のリスクを高めることで知られています。子どものころに肥満だと、成人後も肥満となる可能性も高いため、なるべく早く対策をしていくことが大事です。

家庭では規則的な食生活や運動の習慣をつけるなどの対策があります。ただ、肥満の背景に他の障害の影響がある場合も考えられます。つらいと感じたときは家庭だけで抱え込まずに、医療機関への相談も検討してみるといいでしょう。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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