外国ルーツ2割の団地で若者発の共生カフェ 防災テーマに 四日市・笹川
外国にルーツを持つ住民が多い三重県四日市市笹川地区は、多文化共生に向けての活動が活発に行われている。そんななか、23歳以下の若者グループがコミュニティカフェの開催を12月14日(日)に計画し、新たなつながりを作ろうとしている。
外国人住民2割、少子高齢化進む大団地
笹川地区は、約4000世帯が暮らす県下有数の大規模住宅団地。開発から50年以上が経ち、日本人住民の少子高齢化が進む一方、外国人住民は人口の約2割にのぼり、言葉や文化の違いから学校や地域生活で困難を感じている人も多い。
コミュニティカフェの開催を企画した小久保未羽さん(21)は、「情報障害という言葉は、視覚障害、聴覚障害のある人に向けて使うが、外国にルーツを持つ人にも同じことが起きていると思う」と話す。生活言語から起こる情報障害、特に災害時には、命に関わることもあり、多国籍化の進む地域ならではの課題となっている。
開放的な地域に育まれた小久保さん
小学生の時に笹川団地へ引っ越してきた小久保さんは、誰でも受け入れてくれる開放的な地域性に地元愛が芽生えた。西笹川中学校の多文化共生サークルでは、地域の夏祭りや国籍・世代を超えた防災訓練に参加。その活動が認められ、国際交流基金から「地球市民賞」を授与された。
四日市農芸高校に進学して福祉を学び、言語聴覚士になる夢ができた。言語聴覚士は、話す・聞く・食べるなどの障害のある人に対し、専門的な訓練、助言、指導を通して、コミュニケーション能力や生活の質の維持・向上を支援する国家資格だ。
「自分の思いを的確に表現できず、悔しい思いをしている人をサポートしたい」という思いは「言葉の難しさを感じる外国ルーツの住民をサポートしたい」という思いにも重なったという。
言語聴覚士の資格が取得できる専門学校には合格したが、家庭の経済事情で進学を断念。現在は自ら働いて学資を蓄えており、2年後の進学を目指している。
高校生から23歳の13人が結集
小学校から高校まで暮らした笹川地区には、多文化共生サークル時代の友人も多く、今でも心の拠り所だ。「笹川の推し活をしたい」と、昨年には地域交流を目的としたグループ「えすぺらんと」を立ち上げ、団地内でコミュニティ食堂「えすぺらんとかふぇ」を開いた。メンバーは高校生から23歳の社会人まで計13人。身の丈に合った活動で長く地域と関わりたいという思いがあり、運営資金は行政の補助金などに頼らず自分たちで工面することにしたという。
顔の見える関係づくり
14日のカフェは、団地内の空き家を活用した「ふれあいサロンわかさ」で開き、参加者に非常食を提供する。外国にルーツを持つ人や地域の人に非常食の美味しさを知ってもらい、防災への関心を高めるのが狙いだ。難しい日本語ではなく、やさしい日本語で話し、防災に関するゲームも実施する。
「特性を生かして」
カフェで顔を合わせることで、災害時に言葉の壁があっても互いにコミュニケーションをとり、助け合えるまちにしたいという。笹川に住む人、働く人、遊びに来る人を対象に参加者を募っている。見学のみも受け付けるという。
小久保さんは「子どもや外国にルーツを持つ人にも、笹川の住民として主体的に活動する権利がある。災害時には知識や情報が伝われば、助けてもらう側から助ける側に回ることも可能だ。それぞれの特性を生かして出来ることがあると思うので、まずはこのコミュニティカフェに参加し、互いに助け合う経験を積み重ねてもらえたら」と語った。
参加費は大人500円、中学生以下100円。参加や見学などの相談は、公式LINEでhttps://lin.ee/kGclayqで相談の上、受け付ける。