【中学受験】「ケアレスミスが多い子」の親が見落とす“ある習慣” 「ミスをなくしなさい」では減らないワケ
中学受験のケアレスミスは「見える化」で減らせる! 親子でミスの傾向を分析し、確実に点数アップを目指すために、ドリルを使ったミスの「パターン整理術」と、ミスだけを集めた「振り返りノート」の具体的な作り方を専門家が解説します。
【▶︎画像】小学4・5・6年生【算数のつまずき】最難関「2桁の数でわるわり算の筆算」の教え方親はつい「ミスをなくしなさい!」と言ってしまいます。でも、声かけだけではミスは減りません。オンライン個別指導塾代表の野英利香(のえりか)先生は、「ケアレスミスを減らすには、子どものミスの傾向を親子で一緒に『見える化』し、対策を立てることが不可欠」と語ります。
野先生が多くの子どもの点数をアップさせてきた具体的な方法が、ドリルを使った「ミスパターンの整理」と「振り返りノート」の作成です。
第2回は、ケアレスミスを確実に得点につなげていくための分析・予防トレーニング術を解説します(全3回の第2回)。
ケアレスミスは可視化ができる!
我が子を中学受験させたいと思う親御さんは、子どもが持ち帰ってきた答案用紙を見て、つい「ミスをなくしなさい」と言ってしまいがちです。
「お子さんに『ミスをなくしなさい』と言っているだけではミスは減りません。どんなミスをしやすいかは、子どもによって異なります。そのため、ケアレスミスをなくすには、親御さんが把握したケアレスミスポイントをお子さんと一緒に問題を振り返って、可視化してあげることが必要です。
どこをどのようにすればミスが起きなかったのか、子どもが自分で見つけられるようになるまでサポートしてあげてください。
また、テスト中の見直しも、子どもはどこで立ち止まればいいか、自分ではタイミングがわからないことが多いものです。子どもと問題のタイプに応じて、最後まで解いてから見直すのか、1問終わったところで見直すのかなどを具体的に教えてあげれば、子どもは自分から進んで見直しができるようになります」(野先生)
見直しをしなかったためにケアレスミスが起きた例として、問題④ 直径16cmの大きな半円から小さな円を除いた面積(影をつけた部分)を求める図形の問題を取り上げます。
ケアレスミスを起こした図形の面積を求める問題。 写真:野英利香氏提供
この問題は、半径8cmの大きな半円の面積と、半径4cmの小さな円の面積をそれぞれ求め、大きな半円の面積-小さな円の面積をしてようやく答えが出ます。
この答案のケアレスミスポイントは、半径8cmの円の面積を求めた際、÷2をして半円の面積を出していないことに気づかずに、次の計算をしてしまっていることです。子どもは、求め方がわかっていても、計算することに夢中になると、第一段階の式を解き切ったことに満足して次の計算を忘れてしまうことがあります。
こういった場合、子どもには1問終わったところでその都度、見直しすることを教えることが大切です。
子どものミスパターンを可視化!
ケアレスミスを可視化するためには、どんなミスを起こしやすいのか、子どものパターンを知ることが必要です。ミスのパターンを調べる元になるのは、出題の難易度が毎回変わるテストよりも、毎日のように取り組んでいるドリルが最適だと野先生は話します。
「ドリルは学校のものでも市販のものでもOKです。子どもには、一日10分でいいので毎日取り組ませます。その際ドリルには直接書き込まず、必ずノートに書き写して取り組んでもらいましょう。同じ問題を何度も繰り返し解くことでやり方に慣れ、学習習慣を定着させる狙いもあります。
演習を何度もやっていると、問題を解く時間も短くなっていきます。ノートへの転記が正しくできないと答えも間違えてしまうので、書き写すこと自体がケアレスミスを防ぐ練習にもなります。
また、採点まで自分で行うと、どこを間違うのか子ども自身が客観的に見られるようになります。間違えた問題は『計算ミス』と大雑把に把握せず、『5と2を見たら、かけ算でもないのに10と書いてしまう』、『計算記号の思い込み』などと細かく言語化していくと、ケアレスミスをしやすいポイントに自分で気づけます」(野先生)
学校で教わることは毎回新しい知識で、インプットが主。宿題が出てもおさらいにすぎません。計算や漢字といった基礎学力の部分は、ドリルで毎日コツコツと積み重ねて確実に伸ばすことができる上に、ケアレスミスを細かく分析していくことでミスが減れば、自然と点数アップがかないます。
ミス予防のための振り返りノートとは
ミスパターンの分析方法がわかったら、ミスだけを集めた「振り返りノート」を作ります。ノートは教科別にすると見返しやすいでしょう。
「採点済みのプリントやドリルには、正解したものと間違えたものが混ざっています。○と✕が整理されていない膨大な中からミスを探し出すよりも、ミスばかりを集めたノートなら改善ポイントだけがまとまっていて、振り返るのも効率がいいでしょう。できたノートは、他にはないその子だけのケアレスミス対策ノートになります。
ミスを集めていくと、同じようなミスを繰り返しているのが見つかることもあります。少なくとも1ヵ月くらいはミス集めを続け、傾向が明らかになったところで、ミスをしがちな問題に集中して取り組んでいくと、着実に点が取れるようになります」(野先生)
受験期が近づくと、どうしても難易度の高い問題演習ばかりして、ケアレスミスについては「気を付けてね」と流されてしまいます。こんなときこそ基本に戻ってミスを把握し、手堅くものにしていくことが得点アップにつながります。
「振り返りノートは、保護者の方が作ってしまうことがありますが、できれば子どもが自分で作るのが理想的です。振り返りノートを自作することは、間違えやすいポイントを自分で振り返ることができるというメリットがあります。
写すのが大変なら、間違い箇所をコピーして貼り付けても構いません。とにかく一冊のノートに集約すると、効率よくベースアップができます。
ミスだけを集約した振り返りノートには、間違いポイントを細かく書く。 写真:野英利香氏提供
また、女の子の中にはカラーペンやマスキングテープなどのデコレーションにはまり、ノートを作ること自体が楽しくなってしまう子もいます。時間のあるうちはノートをデコレーションするのも良いのですが、目的が変わってしまうので、受験直前はケアレスミスをなくすことに集中してもらいましょう」(野先生)
ケアレスミスをなくし、得点アップをするツールとしての振り返りノートは、あとで見返したときに達成感も味わえて、自信をつけることにも役立ちます。
受験の主役は子どもでも、親御さんと家族のサポートがあって乗り越えられるものです。自信をもって我が子が本番を迎えられるように、支えてあげることが大切です。
次回は、集中力と学力がアップする生活習慣について解説します。
取材・文/石牟礼ともよ
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◆野 英利香(の えりか)
オンライン全国個別指導塾「E-School☆」代表。中高の数学と理科の教員免許を活かして、家庭教師から口コミで広がった塾の経営は17年目。東京と山形を拠点に勉強を習慣化するためのオンラインスクールを運営し、小学生から高校生まで日本国内外の子どもたちを指導している。塾講師としての経歴は20年を超え、これまで3000人以上の指導実績がある。
著書は「小学生のためのケアレスミスがなくなる本」(すばる舎)、「中学入試 親子で取り組む! ケアレスミスがなくなるドリル」(日本能率協会マネジメントセンター)。