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【実体験】「好き」への没頭が心の安定剤に。癇癪や不安が少ない自閉症兄妹のセルフケア術

LITALICO発達ナビ

【実体験】「好き」への没頭が心の安定剤に。癇癪や不安が少ない自閉症兄妹のセルフケア術

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

意外と大人しいASD(自閉スペクトラム症)兄妹

うちの子どもたちは、幼少の頃から「落ち着いていますね」「あまり荒れないんですね」と言われていました。

兄のタケルの方は10歳ごろまで、パニックを起こすと激しく泣いて身体を周りにぶつけたりもしていたのですが、中学生になる頃にはパッタリと暴れなくなりました。

そして、妹のいっちゃんはさらに大人しく、発達支援センターなどで出会った同年代の子どもたちと比べても、感情の起伏が激しいタイプではなかったと思います。癇癪がまったくなかったわけではありませんが、長時間荒れ続けることは少なく、パニックも静かに起こすタイプでした。

だからといって、もともと穏やかな性格だった、というわけではないと思います。

考え方や話し方を見ていると、物事へのこだわりは強く、好き嫌いも多め、気性も激しいほうです。ただ、その激しさが暴力として外に出ることはありませんでした。

物心つく前から絵を描いていた娘

娘は小さい頃から、よく絵を描く子でした。
まだ足元もおぼつかない1歳何か月かの頃、借家の白い壁一面……いえ、2部屋6面に油性ペンで落書きをされたことがあります。色は黒を中心とした白黒だけのものでしたが、そのスピードと線の密度に、修理代の心配より先に感心したのを覚えています。

それからも、家の中が静かだなと思うと、床に座り込んで黙々と何かを描いています。声をかけても反応が薄く、描き終わると急に立ち上がって別のことを始めるのです。

ピアノの前に座ると「素の自分」に

3歳の頃にピアノを始めましたが、ピアノを弾いているときや、自分で作曲をしているときなども、似たような感じになりました。

外界の音や人の気配があると「こちら側」に戻されてしまうのだそうで、「今日はダメだ……!うるさい!」といって戻ってくることもありますが、大体はさほど苦労せず、ピアノの前に座ると、すっ……と自然に周囲から遮断されていきます。それが私には、娘が「素の自分」に戻っていく過程のように見えます。

ASD(自閉スペクトラム症)の人の情緒が落ち着かないのは

「ASD(自閉スペクトラム症)の人はセロトニンが出にくい」という話を耳にすることがあります。
正確には、量が少ないというより、セロトニンの調整がうまくいきにくい、という説明のほうが近いようなのですが、そう考えると、娘が長年続けてきた「描く時間」や「音楽と向き合う時間」は、結果的に、自分で自分の気持ちを落ち着かせるための調整の役割を果たしていたのかもしれません。

娘は、小学生になっても中学生になっても、絵を描いたり、ピアノを弾いたりする時間を、何よりも優先して決して手放しませんでした。学校でひどく疲れて帰ってきた日も、学校に行けず落ち込んだ日も、無言でピアノに向かい、何時間も絵を描き続けます。その姿を見て、「やりすぎではないだろうか」と心配になったこともあります。

けれど今振り返ると、それは娘なりの自分を癒す方法だったのだろうと思います。

感情を言葉や行動にする代わりに、音や線に変換して外に出すこと、刺激を受けすぎた神経を静かに整えること、その二つの役割が「一人で創作活動をする」という時間に詰まっていたのではないかと思うのです。

泣いてばかりいた息子も……

さて一方、10歳ごろまで激しい癇癪と泣き声で周囲を圧倒することのあった息子ですが、それがなくなったのは中学受験のための勉強を始めた頃からでした。

といっても、息子の場合は、勉強に目覚めたので机の前に座ると落ち着くようになったから……ではなかったのです!(そうだったら美しい話だったのですが……)

息子が中学受験のため塾に通い始め、自ら勉強漬けになったとき、相対的にゲームをする時間が減りました。息子は以前から自分のスケジュールを厳格に決めており、ゲームの時間は毎日30分きっちり。ゲームをするときは毎日、いかに早くクリアするかを競うRTA(リアルタイムアタック)状態でした。

ゲームをする時間が少なくなったことで、クリアすることが不可能となり逆に必死にクリアを目指さなくなったのです。脇道のクエストやミニゲームなどもやるようになり、いつの間にか「ゲームの時間は癒しの時間」に変わったのでした。

絵でなく、ピアノでもなく、もしかしたらゲームとか、動画配信を見つめるなどの、大人がちょっと顔をしかめてしまうような行動の中に、その子が「素の自分」に戻っていける場所があるのかもしれません。

それが、彼らの心の健康を支えてくれることもあるのだと、子どもたちを見ていて感じています。

執筆/寺島ヒロ

(監修:室伏先生より)
ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんの不安や戸惑い、怒りの表れ方は、本当にさまざまですよね。癇癪という形で外に出る場合は周囲からも気づかれやすい一方で、感情を表に出すことが苦手で、うまく発散したり助けを求めたりできないまま、気づかれないうちに心が疲れてしまったり、すり減ってしまったりすることもあります。だからこそ、ヒロさんがおっしゃるように、ゲームやお絵描き、ピアノといった時間は、タケルさんやいっちゃんにとって、心の健康を支える大切な手段のひとつなのだろうと感じました。

また、いっちゃんの深い集中力や、タケルさんの厳密なスケジュール管理にも感心させられました。それらは、ほかの人にはなかなか真似のできない力でもあります。実際に、大きな業績を残してきた方々の中にASD(自閉スペクトラム症)の特性をもつ方が多いと言われるのは、こうした特性が、その人ならではの強みとして発揮されてきた側面もあるのだろうと思います。

困りごとだけでなく、お子さんがどんな方法で自分を守り、気持ちを整えているのか、そこにそっと目を向けることで、お子さんとご家族の時間がより豊かなものになるように感じました。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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