奈良の約3万㎡のプールが2日間限定で巨大な遊び場に、初開催『つどう、巡る 2026』で食・モノ・遊び・サウナ・音楽を満喫
『つどう、巡る 2026』2026.4.18(SAT)~4.19(SUN)奈良・橿原市総合プール
奈良・橿原市の休館中施設「橿原市総合プール」で、複合イベント『つどう、巡る 2026』が4月18日(土)、19日(日)の2日間にわたり初開催された。約3万㎡の広大な敷地に、グルメや音楽、マーケット、サウナ、アクティビティなど100を超える出店者が集結。流れるプールや競技プール、巨大スライダーといった往時の面影を残すダイナミックな空間は、そのまま体験の舞台へと生まれ変わった。
かつて多くの人で賑わった場所に再び人の流れを呼び込み、文化や人が出会い、つながり、巡っていく場に――そんな主催者の思いが息づく。春のやわらかな陽気に包まれた会場には、大人から子どもまで幅広い層が訪れ、それぞれのスタイルで一日を満喫していた。SPICE編集部は2日目に現地を訪れ、その魅力を体感した。
水のないプールが丸ごと遊び場に
会場となった橿原市運動公園は、市街地にありながら緑に囲まれた総合スポーツ施設で、野球場やテニスコート、多目的グラウンド、体育館などを備える市民の憩いの場。その北側に位置する橿原市総合プールが、今回の舞台として活用された。
エントランスでチケットをリストバンドに交換し、いざ会場へ。プールの面影を残した案内板が設置され、エリアごとにゾーニングされているため、初めてでも回りやすい構成になっている。
かつて水が張られていたプールには、飲食ブースや物販、休憩用のベンチが並ぶ。深さのある構造を活かし、階段や手すりを使って“底”へ降りていく体験は、それだけで非日常的だ。視点が低くなることで、周囲の賑わいがより立体的に感じられるのも面白い。
心地よい陽気に誘われ、まず足を運んだのはクラフトビールタップバー。実行委員会がプロデュースするこのブースには、奈良をはじめ広島、三重、徳島、静岡など全国各地のブルワリーから厳選された銘柄が並ぶ。12TAPのラインナップは随時入れ替えられ、訪れるたびに新しい一杯と出会えるのが魅力だ。セルフでビールを注ぐ体験も用意されており、泡のバランスに苦戦しながらも、その過程すら楽しさに変わる。飲み比べをしながら、まずは喉を潤すことにした。
ビール片手に会場を巡り、まず目を引いたのが奈良発の全日本棍棒協会のブースだ。棍棒を通じて里山文化の再生と発信をめざす団体で、木製の棍棒にこだわりながら自然や樹木の価値を伝えている。ブースには大小さまざまな棍棒が並び、その造形の面白さに思わず足を止める来場者の姿も多い。
中でも人気を集めていたのが、棍棒で棍棒を弾いて倒す「こんぼうターゲット」。1回500円で挑戦でき、倒した本数に応じて景品がもらえる仕組みだ。シンプルながら熱中度の高い内容で、子どもはもちろん大人も童心に返って盛り上がっていた。
そのほかにも、体を動かせるアクティビティが豊富に用意されている。「Flat Landing by NA」によるボルダリング体験(1回10分500円)や、「THE TABLES NARA」による卓球的当て(5球300円)、卓球トーナメント(500円)など、いずれも気軽に参加できるものばかり。難易度も程よく設定されており、大人も子どももふらりと立ち寄って楽しめる。
クラフト体験も見逃せない。奈良県五條市を拠点とするシルクスクリーン会社「NOCRY」では、オリジナルTシャツが作れるワークショップを実施。20種以上の版と10種以上のインクから自由に組み合わせ、Tシャツ込みで3000円という手頃さも魅力だ。
スタッフの丁寧なレクチャーのもと、初めてでもスムーズに制作が進み、短時間で完成度の高い一枚が仕上がる。手刷りならではの風合いも最高! プリントに一目惚れし、衝動買いならぬ、“衝動体験”をしてしまった取材班のKも大満足の仕上がりにニンマリ。
全国から集まったグルメや多彩なドリンクを満喫
アクティビティを満喫したあとは、グルメエリアへ。流れるプールやファミリープールに沿って飲食・物販が並び、マーケットを含めると60店舗以上が軒を連ねる。中央のアイランドを囲むように周遊できる構造で、歩くだけでも自然と多彩な店に出会えるのが楽しい。「巡ってきます!」と書かれた看板を掲げる店もあり、出店者自身もイベントを楽しんでいる様子が伝わってくる。
まず訪れたのは、京都・四条烏丸のビリヤニ専門店「INDIA GATE」。インド発祥の炊き込みご飯に、鯛出汁など和の要素を取り入れた独自のスタイルで知られる。この日は甘鯛、牛肉、エビなど複数のビリヤニが並び、どれも魅力的。「海老と野菜のビリヤニ」は、米一粒一粒に海老の旨みがしっかりと染み込み、レンコンなどの根菜の食感もアクセントになっている。軽やかでありながら満足感のある一皿だ。
東京のキッチンカー「u3doco」のレッドホットサバサンドも印象的。地中海の辛味調味料、ハリッサを効かせたスパイシーなソースとサバの旨味が絶妙に絡み、思わずビールが進む味わいに仕上がっている。パンもやわらかく、食べやすさも抜群だ。
さらに、和歌山・花園の「METZGEREI SAKAMOTO」では、ジビエの魅力をダイレクトに味わえる。ドイツで食肉加工の国家資格「ゲゼレ」を取得した店主が、解体から加工まで一貫して手がける同店。この日はメスのイノシシ肉を塩胡椒のみでシンプルに焼き上げており、噛むほどに広がる赤身の旨味に驚かされる。素材そのものの力強さを感じる一品だった。
ドリンクのバリエーションも豊富だ。秋田の醸造所「OK,ADAM」によるアップルハードサイダーは、りんご「やたか」の華やかな香りが特徴で、口の中をさっぱりとリセットしてくれる。また、一般社団法人日本お茶割り協会によるお茶割りは、紅茶や烏龍茶で焼酎を割った軽やかな味わいが魅力。スパイス料理との相性も良く、つい杯が進んでしまう。
プールサイドには、スピーカー付きのベンチが。カラフルな色合いがどこか懐かしい景観をつくり出している。お腹も満たされたところで、いよいよ注目のサウナエリアへ。
サウナエリアでは人気熱波師によるアウフグースも
会場の目玉のひとつが、50mプールを活用したサウナエリア。全国から集まった20基のサウナが並び、プールサイドにはサウナカーもずらりと並ぶ。更衣室や水風呂も整備され、本格的な“ととのい”体験が可能だ。安全面にも配慮され、アルコールを摂取している場合は利用できない仕組みになっている。
引退した路線バスの車両をサウナに改造し、本格的な薪サウナが体験できる移動型サウナバス「サバス」は、バス停のような看板も楽しく、存在感を放っていた。降車ボタンを押すとロウリュができるなど、路線バスの名残を生かしたサウナ体験ができるとか。
日曜日には、サウナ企画プロデューサー兼熱波師、キタミティ氏によるアウフグース(当日予約、15分200円)も開催。アロマ水の蒸気をタオルで送り、体感温度を高めるドイツ発祥の演出で、パフォーマンス性の高さも相まって観客を魅了していた。
新潟のサウナブランド「ABiL」はテントサウナ5台とともにグッズを展開。サウナハットやタオルなど、機能性とデザイン性を兼ね備えたアイテムが揃い、来場者の関心を集めていた。サウナだけでなく海やプールでも重宝しそうな防水バッグが大好評だとか。
メインエリアでは、古着やアウトドア用品、アクセサリー、雑貨などを扱うショップが並ぶマーケットも展開。感度の高いセレクトに、思わず足を止める来場者の姿が目立つ。
ウォータースライダー前のステージでは、アコースティックライブやDJ、ダンスなど多彩なプログラムが一日を通して繰り広げられる。プールというロケーションと相まって、ひと足早い夏のリゾートのような空気が漂う。
店を巡りながらでも、音楽に身を委ねながらでも、楽しみ方は自由自在。来場者、出店者、主催者が一体となり、その場を共有することで生まれる一体感が心地よい。新たなカルチャーの可能性を感じさせる『つどう、巡る』。奈良から発信されるこの試みが、今後どのように発展していくのか注目したい。
取材・文・撮影=岡田あさみ