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2024問題は救急医療の“最後の砦”にも 患者のたらい回しも発生?現場で募る危機感

Sitakke

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2024年問題は「物流」だけではありません。

救急医療の“最後のとりで”と言われる救命救急センター。

いま懸念されているのが「医療の2024年問題」です。

都市部も医師の余裕があるわけではない現状。

いわゆる“たらい回し”の患者が出る可能性も…。

地方の診療所でも、医師数の確保が難しくなるのでは…と不安の声が聞かれています。

医療現場の労働環境を見直す「医療の2024年問題」。

いったいどんな問題なのか?取材しました。

連載「じぶんごとニュース」

2024年4月から、勤務医の時間外労働に上限が設けられました。

原則、年に960時間、月の平均で80時間に制限されます。

また、医療機関の管理者は、長時間労働が見込まれる医師に対する面接指導が義務付けられます。

これにより医療現場では、どのような影響が考えられるのでしょうか?

医療法人渓仁会の成田吉明理事長は「救急体制が非常にマイナスの影響を受けるのではないか」と心配そうに話します。

24時間365日、患者を受け入れている札幌市の救命救急センターです。

長時間勤務になりがちな救急科にシフト制を導入し、いち早く医師の働き方改革に対応しました。

しかし、実は救急医療を自分の病院にいる医師だけでまかなっているところは非常に少ないのだとか。

多くは大学病院からの医師の派遣で救急医療を維持しているというのが現状なのです。

手術や入院が必要な患者に対応する「二次救急」の現場では、外部から応援の医師を派遣してもらうケースが多いと言います。

札幌でも救急搬送の件数が年々増える中、残業の上限規制により、今後、医師の派遣を受けられない病院が出てくる可能性があります。

そうなると、対応できる三次救急の病院や、患者へのしわ寄せが心配されているのです。

手稲渓仁会病院の奈良理副院長は「そんなに現在も余裕があるわけではないので、応需困難症例、いわゆるたらい回しになるような患者さんが、多く発生する可能性はあると思います」と話します。## 医師の確保はますます難しく…

一方、人口減少や高齢化が進む地方では…。

札幌から車でおよそ1時間の由仁町です。

町は2018年に、経営難から町立病院の病床数を減らし、「診療所」としました。

ここで、いま力を入れているのが「在宅医療」です。

通院が難しい高齢者など130人ほどの患者を、常勤医師2人が訪問診療で対応しています。

患者は町外にもいて、近い将来に大きな不安を感じています。

診療所の久野和成所長は「残業の上限規制とも当然リンクしてくる問題」とその構造を指摘します。

医師数が確保できないから、どうしても一人当たりの仕事量が増える。

そうすると、残業の上限を超えざるをえない。

そうなると、またそこには医師が来ない…。

そんな「負のスパイラル」が懸念されているのです。

久野所長は「地方の医師数の確保に、マイナスに働くだろうなって感じはしますね」と話していました。

4月から勤務医の時間外労働が原則、年960時間に制限されることで、すでに、北海道南部の病院ではこんな影響が出ています。

北海道は医師の偏りが激しい

市立函館病院では、4月以降、医師2人の派遣中止を決定しました。

これまでは、1人は奥尻町国保病院に、もう1人は松前病院に派遣していました。

しかし、奥尻町は函館市から距離が遠く、移動時間などを他の医師でカバーしきれなくなったことが派遣を中止した理由ということです。

また、函館の夜間救急センターの小児救急の医師が高齢になり、ほかの医師に引き継ぐ関係で、松前病院への派遣も中止になったのだそう。

4月以降は、奥尻国保病院では、新たに栃木県の大学から総合診療医が派遣され、松前病院では、総合診療医が小児科をカバーしています。

4月以降も変わらず診療は受けられますが、地方の医療に影響が出そうです。

広い北海道ならではの課題もあります。

厚生労働省が公表した、適切に医師が配置されているかを示す医師偏在指標によると、北海道内は札幌市周辺や旭川市周辺の上川中央地区は全国の上位3分の1に入る数字になっています。

一方の釧路地区や北見・網走地区は下位3分の1に入っています。

それだけ医師の数が偏っているということなんです。

医師の労働環境を守りながら、地域医療を確保していくためにもより一層の議論が求められます。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年3月27日)の情報に基づきます。

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