〈奈良市〉錦秋の古都彩る『第77回 正倉院展』信長を魅了した名香も
第77回 正倉院展
令和7年10月25日(土)~11月10日(月)
全17日間、会期中無休
756年、聖武天皇の七七忌(四十九日)に際して光明皇后が天皇の遺愛品を大仏に献納したことに始まり、東大寺の重要な資財を保管する正倉院正倉に伝来した正倉院宝物。
その数は約9,000件にものぼり、その内の約60点が毎年秋の点検時期に合わせ『正倉院展』として、奈良国立博物館にて一般公開されています。
1946年に始まり、本年で77回目の開催となる今回は67件の宝物が出陳、うち6件が初出陳となります。中には一生に二度見られるか分からない至宝もあるかも?
宮廷での暮らしぶりがうかがえる、聖武天皇ゆかりの品々
聖武天皇の遺愛品の献納時に作成された『国家珍宝帳』に記載される天皇ゆかりの品々が出陳。「木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)」は聖武天皇愛用の双六盤。
ツゲやシタン、コクタン、象牙、鹿角、竹といった多彩で高貴な素材を用い、高度な木画技法によって鳥や唐草などの文様を彩り豊かに、かつ生き生きと表現しています。
北倉・木画紫檀双六局(全姿)
北倉・木画紫檀双六局(部分)
「鳥毛篆書屏風(とりげてんしょのびょうぶ)」は聖武天皇の身近に置かれたであろう六曲屏風。草花や飛鳥などの地文様の上に、八文字の篆書と楷書を交互に表します。
楷書部分には地色と異なる色で吹き付けと点描を施し、篆書部分にはニホンキジなどの羽毛を貼り付け、金箔の小片を散らしています。ちなみに、書かれている文字は君主にとっての戒めの格言を表しているそう。
北倉・鳥毛篆書屏風(第1扇)
北倉・鳥毛篆書屏風(第2扇)
北倉・鳥毛篆書屏風(第3扇)
北倉・鳥毛篆書屏風(第4扇)
北倉・鳥毛篆書屏風(第5扇)
北倉・鳥毛篆書屏風(第6扇)
「平螺鈿背円鏡 附 題箋(へいらでんはいのえんきょう つけたり だいせん)」は聖武天皇ゆかりの鏡のひとつ。背面はヤコウガイの螺鈿で華やかな文様が表され、地の部分にはトルコ石やラピスラズリの小片が埋め込まれます。
分析の結果から、シルクロードの各地で産出された素材を用いて中国で製作された後、日本にもたらされと考えられています。
北倉・平螺鈿背円鏡 附 題箋異国情緒あふれる名品と、天皇や将軍らが求めた名香
今展では正倉院宝物の顔とも言うべき代表的な名品も出陳。「瑠璃坏 附 受座(るりのつき つけたり うけざ)」は、表面に円環をはり巡らせた坏身を高脚が支える異国情緒あふれるガラス器。
その意匠から西方で作られたことを物語る一方、坏身の下方に取り付けられた銀製の台脚は裾に龍のような文様が表されることから、東アジア圏において付け加えられたものと考えられます。
この種のガラス器の中でも、姿・技法ともに最高水準を示す逸品で、西方からはるばるシルクロードを経て東アジアにもたらされ、珍重されたことがうかがえます。
中倉・瑠璃坏 附 受座
フェルトの敷物である「花氈(かせん)」は正倉院に37点が伝来しています。なかでも色彩表現が豪華な本品は唐からの舶載品と考えられており、濃密な大唐花文様を全面に表しています。
藍や緑、赤などに染められた羊毛による非常に複雑な文様表現に高い製作技術がうかがえます。
北倉・花氈
「蘭奢待(らんじゃたい)」とも呼ばれる名香「黄熟香(おうじゅくこう)」はジンチョウゲ科の樹木に樹脂が沈着してできた香木。分析の結果、ベトナムからラオスにかけての山岳地帯で産出されたものに成分が近いとされています。
多数の切り取られた痕跡があり、うち3か所には足利義政(室町幕府第8代将軍)、織田信長、明治天皇が切り取った旨を示す紙箋が付属しています。
また近年の調査によると香気成分は残存しており、現在も香りを留めているのだとか。どんな香りがするのか一度聞いてみたいですね♪
中倉・黄熟香技巧を凝らした祈りの宝物たち
「黒柿蘇芳染金銀山水絵箱(くろがきすおうぞめきんぎんさんすいえのはこ)」は、仏に捧げものをする際に用いられた箱で、注目したいのが蓋表をはじめ各所に施された金銀泥による文様表現。
蓋表には四辺から中央に向けてせり上がる峻険な山々が表され、幾重にも折り重なる山ひだや立ち昇る雲の様子が闊達な筆さばきで描かれています。
また赤みのある落ち着いた茶色地は、黒柿を蘇芳(赤い染料)で染め、貴重な素材であったシタン材に似せているんだそう!
中倉・黒柿蘇芳染金銀山水絵箱(全姿)
中倉・黒柿蘇芳染金銀山水絵箱(蓋表)
「桑木阮咸(くわのきのげんかん)」は東大寺の法要で用いたとされる丸い胴の四絃の楽器。主要部分を蘇芳で染めたクワ材で作り、細部は木画や玳瑁(たいまい)などで装飾しています。
胴部中央の皮製の撥受けには、八弁の大きな赤い花を背景に、松や竹の下で高士が囲碁を楽しむ情景を描きます。古代の遺例では本品と「螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)」(北倉)の2点のみが伝わっています。
南倉・桑木阮咸(全姿)
南倉・桑木阮咸(捍撥部分)
“シルクロードの終着点”として遠い海の向こうから多くの文物が集まった奈良の都。1300年間守り継がれる至宝の数々を間近に、国際色豊かな文化が花開いた天平時代に思いをはせてみて。
正倉院とは…
奈良時代の官庁や大寺には、税で徴収された米や布などを納める「正倉」が設けられており、この正倉がいくつも集まった区画を「正倉院」と呼んでいました。
しかし、年月とともに東大寺の正倉院内の正倉一棟を除き、他の正倉院は全てなくなってしまったため、現在「正倉院」といえば、東大寺のこの一棟を指します。
第45代聖武天皇の遺愛品および東大寺の寺宝、文書類などが収蔵され、現在は西宝庫・東宝庫に分け、空調を備えた鉄筋コンクリート造の新宝庫で保管されています。
住所:奈良県奈良市雑司町129
TEL:0742-26-2811(宮内庁正倉院事務所)
開門時間:月~金曜(休日等を除く)の毎日10:00~15:00
※令和7年10月2日(木)、11月28日(金)は、行事のため、公開は正午~15:00。
※非公開日:行事の実施、その他やむを得ない理由のため支障のある日。12月28日~翌年1月4日
※第77回正倉院展期間中(令和7年10月25日~11月10日)は、毎日10:00~16:00の公開。
※公開は正倉「外構」のみ
料金:無料
駐車場:なし
施設情報
名称:奈良国立博物館
ふりがな:ならこくりつはくぶつかん
住所:奈良市登大路町50番地 奈良公園内
開館時間:9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)※時期により異なる場合あり
休館日:月曜、11/12、12/28~1/1
観覧料:一般700円、大学生350円、高校生以下無料 ※特別展の観覧料は展覧会ごとに異なる
駐車場:奈良国立博物館に専用駐車場はありません(近隣に有料Pあり)
TEL:050-5542-8600(ハローダイヤル)
イベント概要
開催期間:2025年10月25日(土)〜2025年11月10日(月)
開催時間:8:00~18:00(金・土・日曜、祝日は20:00まで)
※入館は閉館の60分前まで
※会期中無休
開催場所:奈良国立博物館 東西新館/奈良県奈良市登大路町50番地
料金:一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円
[レイト割※]一般1,500円、高大生1,000円、小中生無料
※月~木曜は16:00以降、金・土・日曜、祝日は17:00以降の「日時指定券」に適用
【チケット取り扱い】9/5(金)10時~販売開始
■ ローソンチケット[Lコード:59990]
■ CNプレイガイド[Cコード ※入館開始時間ごと:①月~木曜日:午前8時~正午 265-051、②月~木曜日:正午以降 265-052、③金・土・日曜日、祝日:午前8時~正午 265-053、④金・土・日曜日、祝日:正午以降 265-054]
【電話(自動音声)0570-08-9920による受付のみ】
■ 展覧会オンラインチケット()
■ 美術館ナビチケットアプリ
事前に「美術展ナビチケットアプリ」のダウンロードが必要です。美術展ナビチケットアプリはスマートフォン専用となります。(推奨環境:iOS 13以降、Android 6.0以降)
※観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要です(無料対象者を除く)。
※日時指定券は当日各時間枠開始時刻まで販売
お問い合わせ:050-5542-8600(ハローダイヤル)
正倉院展公式サイト: