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高齢者の生活を守る新たなコミュニティ!地域のコンビニと地域包括支援センターが連携

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

コンビニエンスストア(以下コンビニ)は、今や日常的に活用される重要なインフラとなっていますが、最近では高齢者支援という視点からも非常に有益な場になっています。

最近では高齢者同士のコミュニティの場としても活躍しているようです。

そこで今回は高齢者にとってのコンビニの意義や、地域包括支援センターとの連携という切り口からで解説していきたいと思います。

過疎地域では重要なインフラ

私が勤める地域包括支援センターの担当地域は総人口約9600人、高齢者数約4700人と人口規模は小さく高齢者率が高いですが、面積は約143km2とかなり広いです。その大きさは江戸川区と葛飾区と足立区を合わせたよりも広い区域になります。

いわゆる過疎高齢化地域の田舎ですが、コンビニは3社6店舗が展開されています。

一方、40年前は地域に6店舗あったスーパーマーケットはすべてが廃業するかコンビニに業種替えしました。当時はある程度の地域に歩いて行ける範囲内にスーパーマーケットがありましたが、現在は新規参入したスーパーマーケットが2店舗あるのみになっています。 しかも、2店舗とも比較的街中にあるため、車を運転できなくなった高齢者には買い物は一大イベントです。

そのため、高齢者にとっては地域に6店舗あるコンビニが買い物だけでなく重要な社会資源、インフラとなっています。

例えば、公共料金の支払いやATMなどでのお金を引き下ろすなどもコンビニで済ますことができますし、若者だけでなく高齢者にとっても日常に欠かせない行為が身近で行えるのはとても助かります。まさにコンビニエンス(便利)ですね。

最近ではちょっとした野菜や肉などの生鮮食品も陳列されるようになり、お惣菜は調理が困難となった高齢者にはとても便利です。包丁やガス器具の使用が困難となっても電子レンジが使えれば「チン」して温かい食事が食べられるのですから。

高齢者同士が交流するスポットにもなる

また、高齢者同士の交流が生まれる新しいコミュニティの場としても注目しています。

以前、高齢者数名がコンビニの前に集まり、惣菜のシェアをしている光景を目にすることがありました。お互い一人暮らしであると、惣菜一品の量が多いことがあるようです。コンビニが高齢者にとっても新たな交流の場にもなっていると感じた瞬間でした。

CMで観た製品に触れることも新しいものに接するという点で認知機能にも良い影響がありそうです。

世代を超えた多くの人々が集まるという点で、私たち地域包括支援センターにとってもコンビニはとても有益です。

例えば、「電話de詐欺」の被害防止ポスターの掲示など、全世代の方に広く詐欺被害について興味を持っていただくための取り組みを継続的に行っています。詐欺被害が発生したときや年金支給日付近には、新しいポスターを作成しコンビニに掲示してもらっています。

このような活動が高齢者のみならず全世代の住民が詐欺被害に合わないことにつながると考え活動しています。

まずは知ること、詐欺被害を他人事と捉えず身近な脅威として全住民が認識することが結果的に被害防止の近道だと思うのです。

実際に私たちが連携をしているコンビニの店員さんが「電話de詐欺」を未然に防ぎ、警察署から表彰されたこともありました。

さらに、コンビニのオーナー、スタッフの皆さんも認知症状が見られる高齢者にさまざまな配慮をしてくれています。

例えば1日に何回も同じものを購入しに来る高齢者には、レシートを取っておいて「さっきも同じものを買いましたよ」とレシートを提示しながら声をかけてくださるような配慮です。

こういった対応については、ほかのコンビニのスタッフから相談があった際にお伝えし「ちょっとした心配り」が伝播するように活動しています。

地域包括支援センターとの連携

コンビニの方から私たち地域包括支援センターに連絡をくださることもしばしばあります。過去には以下のような連絡をいただいたことがあります。

自分で運転して買い物に来たが帰りにエンジンのかけ方がわからなくなった方がいる
買い物に来たが店舗を出てすぐに転倒してしまった
いつも同じ格好でお風呂に入っていない様子の方がいる
毎日何回も来店し同じものを購入していく方がいる
毎日買い物に来ていた方が最近店舗に来ない

情報提供に伴い、私たちは店舗やご自宅に向かい対応します。日常的に利用するコンビニであるからこそ把握できる情報があるのです。

コンビニとの連携は異常事態を把握する「気づきの場」としてとても有効です。この連携は認知症徘徊の場面でも効果を発揮します。

認知症徘徊の通報が入ると私たちは管轄の警察署、ご家族や担当ケアマネ、地域住民、福祉事業所と連携します。

自宅周辺やその方が日頃立ち寄る場所などを中心に捜索するのですが、このときコンビニはとても重要な情報源となります。

何しろ24時間営業していますし、近隣住民で認知症かな?と思われる高齢者の情報を持っていることがあるからです。

特に、過疎高齢化が進む私たちの担当するエリアでは日中でも人の目が薄くなることもよくありますからコンビニの存在は大きな意義があると考えています。

コンビニとの連携は、詐欺被害防止や認知症の早期発見、認知症徘徊時に大きな効果を発揮すると考えられます。地域包括支援センターとしてもさらなる連携強化のために活動しています。

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