シェアオフィスで働くとなぜ生産性やウェルビーイングが向上するのか 三井不動産が4000人調査
三井不動産(東京都中央区)は、同社が展開するシェアオフィスの利用効果を定量的に把握するため、2022年と2024年の2回にわたり調査を実施した。延べ4,000人以上を対象としたもので、結果は8月20日に公表された。調査の結果、シェアオフィスの利用が生産性や働く人のウェルビーイング向上に寄与することが明らかになった。
シェアオフィス利用もするハイブリッド型が各項目で高スコア
調査はまず、シェアオフィス利用者へアンケート調査を行い、シェアオフィスの利用と、組織へのコミットメントや創造性(クリエイティビティ)などへの影響との相関関係を調査した。
次にEYストラテジー・アンド・コンサルティング(東京都千代田区)の社員を対象に追跡調査を実施。シェアオフィス未経験者に3か月間の同社のワークスタイリングを利用してもらい、利用前後の回答結果の違いを分析した。
同期間にシェアオフィスを利用しなかった社員も調査し、両者の回答結果を比較することで、シェアオフィスの利用が効果に寄与していることを確認したという。
生産性、組織へのコミットメントなどと相関関係が認められる
2022年10月と2023年1月に行われた「シェアオフィス利用者へのアンケート調査」では、対象を以下の3つのタイプに分けて調査した。
・オフィス型
・オフィス+自宅型
・シェアオフィスも利用するハイブリッド型
その結果、シェアオフィスも利用するハイブリッド型が生産性、組織へのコミットメント、ワークエンゲージメント、クリエイティビティ、イノベーション、集中度、職務満足度など各項目で高スコアを記録した。双方の変数には相関関係が確認された。
追跡調査では、チームワーク、他者貢献などにも好影響という結果に
以上の結果を踏まえて、2024年5、6月と2024年8、9月に行われた「EYストラテジー・アンド・コンサルティングのワーカーを対象とした追跡調査」では、22から59歳の従業員を対象にアンケート調査を実施した。
結果、シェアオフィスを利用することで、組織へのコミットメント、集中度、そして「はたらく人の幸せ因子」(「パーソル総合研究所・慶應義塾大学前野隆司研究室」の研究で開発された、働く人の幸せを測る尺度)のうち、チームワーク、他者貢献、自己成長、自己裁量の4項目の数値が高くなっており、因果関係が確認されたとしている。
シェアオフィスの利用は、企業が従業員に対して柔軟な働き方を提供する意思決定
こうした結果を受けて、共同研究した東京大学大学院経済学研究科・稲水伸行准教授からは以下のような考察が公表されている。
・シェアオフィスには個人用ブースや会議室があり、業務に応じて最適な環境を選べるため、個人の集中度が上がり、それに伴って、チームとしてのパフォーマンスやチームワークも向上する。
・シェアオフィスの利用により、働く場所の選択肢が広がり、ワーカーが自身の予定に合わせて柔軟に働けるようになるので、自己裁量が高まる。
・シェアオフィスの利用は、企業がワーカーに対して柔軟な働き方を提供する意思決定であり、そのような企業の決定に対して、組織へのコミットメントの向上につながっている可能性がある。
当メディアでは、「心地良さ、人とのつながり……『行きたくなる』オフィスの条件」として、働く場づくりに重要な要素などを紹介している。
「シェアオフィス利用者へのアンケート調査」は、本調査は2022年10月に首都圏の従業員数100人以上の企業に勤める22から59歳の正社員3694人を対象に、追加調査は2023年1月に424人を対象に行われた。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの従業員を対象とした追跡調査は、2024年5月と6月に実施された事前調査で、調査協力企業に勤める22歳から59歳の従業員195人を対象とした。続く事後調査は、同年8月と9月に222人を対象に行われた。
調査結果の詳細は、三井不動産の公式リリースより確認できる。