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「ガッキー」「バッサー」とは違う静岡ならではのあだ名文化!?「たっけー」「まっすー」発音できますか?

アットエス


駿河湾を臨む静岡市清水区興津から、国道52号を車で20分ほど北上した但沼町に「望月竹次郎商店」はある。大正時代に製茶・精米業から始まった店で、今は地域の幅広い世代が利用するカフェ兼駄菓子店に生まれ変わっている。冬は壺焼き芋、夏はかき氷が評判だ。

商号に残る「竹次郎」は、店長の望月崇行さん(46)の曾祖父にあたる初代のことで、「たっけーさん」という愛称で呼ばれていた人物である。竹次郎氏が亡くなり業態がガソリンスタンドに変わった時代も、今のカフェのことも、地元の人は親しみを込めて、その店舗をも「たっけーさん」と呼んできた。

実は、竹次郎さんに対して「たっけー」と、ニックネームをつけるのは、静岡県の典型的あだ名付けパターンである。藤枝市の鈴木岳幸前衆議院議員も高校時代のあだ名は「たっけー」だった。静岡県で「たけ」が付く名前の人が「たっけー」と呼ばれた確率はなかなかに高かったと思われる。

他にも例えば「あき」が付く人は「あっきー」になるし、「のぶ」が入る人は「ん」が挿し込まれて「のんぶー」となるような型もある。下の名前に限らず苗字から2音を取リ出して、戸塚くんが「とっつー」、増田さんが「まっすー」というケースも証言を得た。
 
そんな例は全国どこにでもあるのではないかという指摘も聞こえてきそうだが、ポイントはそのアクセントである。ともに俳優でモデルの、新垣結衣さんは「ガ\ッキー」。本田翼さんは「バ\ッサー」が愛称だが、これらは頭の音が高い。世界的に人気のネズミ「ミ\ッキー」や、チョコレート菓子のロングセラー「ポ\ッキー」などと同じアクセント型である。

対して、静岡県のあだ名付けパターンは「た/っけ\ー」や「の/んぶ\ー」「ま/っす\ー」など、アクセント型は「中高高低」で、昔話で父母のことを「おっとー」「おっかー」と呼ぶのと同じ、音の上がり下がりである。
 
このあだ名付けの型は特定の個人向けに留まらない。静岡大学教育学部付属島田中学校の生徒は、近くの別の中学の生徒から「ぞ/っく\ー」と呼ばれたらしい。先頭からではないが「ふぞく」のうちの2音を確かにピックアップしてある。ニュアンスは「あの学校のヤツ(ら)」という感じで、残念ながら愛称とは言い難い。

静岡市の常葉橘高校の生徒は、皆「た/っち\ー」と言われた。こちらは自称する人もいたし、どこの高校へ通っているかを聞かれて「た/っち\ーへ行ってる」などと学校そのものを指す使い方もあったようだ。
 
かつて藤枝市に「ほのお」という、ばあちゃん劇団があった。老いをテーマにしたコミカルな芝居の中に「ぬくとい『お/っし\ー』にしてくりょ!」という、姑のセリフがあったのを覚えている。家庭で邪魔者扱いされていた姑が、食事の際、嫁に冷めた「おしる」を出されて抗議する場面だ。「おしる」から「お」と「し」を抜き出し、間に小さな「っ」を入れて最後は伸ばす。そしてアクセントは真ん中の2音を高くする。こうして静岡的な型通りに、みそ汁などの「お汁」を、より身近なネーミング「お/っし\ー」に変えている。

食べ物の愛称だと「あ/んも\ー」もそうだ。元々宮中の女官が使い、京都に現代まで伝わる「あも」という餅を指す言葉がある。これも静岡型のあだ名付けパターンで変形され方言となっている。ともに50代の、焼津市在住の女性、榛原郡吉田町出身の男性から「あ/んも\ーが餅のことだと分かるし使った」という回答をもらった。その一方で「あ/んも\ー」について、静岡県中部の人でも「聞いたことがない」「おばあちゃんは言っていた気がする」といった声も多かった。静岡型のあだ名付けは伝統的なもので、今は廃れてしまったか。

望月竹次郎商店の崇行店長から興味深い話を聞けた。但沼より奥にある山あいの地域の4〜50代でも、近年カフェの存在を知って訪れた人は「た\っけーさん」というアクセントで呼ぶという。「ガ\ッキー」「バ\ッサー」型だ。今の時代の全国標準に沿っていると言える。ところが、店の近所の人の場合は子どもであっても「た/っけ\ーさん」と、大正時代と違わず発音するそうだ。テレビや動画に流されず、言葉が家庭で祖父母から親、親から子へ。または学校の先輩から後輩へ。あるいは地域コミュニティで強く受け継がれている証であり、心がちょっと熱くなった。

文:SBSアナウンサー・野路毅彦

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