日本酒と共に歩む歴史とこだわり 山口市「アサヤ」
今回は山口市中市商店街に佇む歴史ある山口の地酒と日本酒の「アサヤ」さんにお邪魔してきました。
日本酒愛好家から地元の方々まで幅広い層に親しまれているお店で、創業は明治41年(1908年)という老舗です。その歴史や魅力について深く掘り下げてみました。
ずらりとならぶ日本酒の数々
「アサヤ」(山口県山口市中市町6−21)があるのは山口市中心商店街、山口井筒屋の目と鼻の先です。
県内のお酒の銘柄のラベルやのぼり旗などが装飾されていますので近くを通るとすぐに気づきますよ。
店内には、約150種類もの日本酒や焼酎、国産ワインがずらりと並んでいます。その豊富な品揃えには圧倒されるばかりです。ひとつひとつに手書きのポップが添えられており、その温かみある文字からは、店主の日本酒への深い愛情が感じられます。店内を歩きながら、そのポップを眺めるだけでも、日本酒への興味が深まることでしょう。
おすすめの日本酒の種類に「生酒」があります。生酒とは、日本酒の搾りたての醪(もろみ)を一切加熱処理せずに瓶詰めしたもので、搾りたてのフレッシュな香りや酸味、炭酸ガスによるシュワッとした口当たりが特徴です。しかし、そのデリケートさゆえに要冷蔵保存が必要で、酵素が活性状態で残っているため、時間と共に酒質が変化しやすいのも特徴です。同じ銘柄でも季節限定の商品も多く、訪れるたびに新しい味わいに出会えるのも、「アサヤ」の魅力の一つです。
お店を営むのは、接客を担当する吉安和子さん・輝(ひかる)さんご夫婦と和子さんの弟で3代目社長の三郎さん。
「アサヤ」の歴史についてお話を伺いしました。
(左)吉安輝さん(右)和子さん
創業から続くこだわりと歴史
「アサヤ」の歴史は、舶来雑貨を扱う商店としてスタートしました。創業当初は、レコードやスキー板、コンデンスミルクや洋酒といった、当時の山口では珍しい商品を取り扱っていたといいます。当初の店舗は商店街の今より50mほど東(現在の「Nack」の辺り)にあり、数年後には現在の場所に移転しました。現在の建物は、創業当時からほとんど変わらず、店内のレジの机は、和子さんが幼少の頃から使い続けているもので、長年の使用で角がすっかり丸くなっています。
日本酒との出会いと成長
戦後、日本酒も扱うようになり、今では取扱いのメインとなりました。当時、店舗の三和土の下には防空壕があり、その跡は今も店内に残されています。「アサヤ」が日本酒を取り扱うようになった背景には、地元の人々とのつながりが深く関係しているのでしょう。戦後の厳しい時代を経て、地域の人々に寄り添いながら日本酒を提供し続けたアサヤの歴史は、単なる酒屋ではなく、地域文化の一部としての役割を果たしてきたことを物語っています。
店内には、歴史を感じさせるアイテムも多く残されています。明治時代の酒販免許の看板や、手書きやホーローの看板、日本酒を量り売りしていた時代の徳利などが所狭しと並んでいて、これらの歴史的な品々を眺めることで、どれだけの時を経て地域の人々に愛されてきたかが伝わってきます。
全国から取り寄せたこだわりの日本酒・おつまみも
「アサヤ」では、国賓へ提供された「獺祭」や「東洋美人」をはじめ「五橋」など山口県内の様々な蔵のお酒を取り扱っています。お客と対話しながら、日々の生活に彩りを添えるお手伝いをしていて、贈答用に化粧箱やラッピングも用意されているので、多くの場面で利用いただけます。
また、山口県内だけでなく県外のこだわりのお酒も扱っています。
例えば、福島県の仁井田本家が手掛ける「にいだしぜんしゅ」は、自社で農薬や化学肥料を使わずに自然栽培で米作りを行い、自然な風味を生かした日本酒です。
にいだしぜんしゅ 3300円
また、秋田県の日の丸醸造の「まんさくの花」は、山口県内では取扱いが少ないお酒で、日本酒初心者から通向けの辛口まで様々な種類のお酒があり、好みや季節などに応じて選べ楽しむことができます。
・「まんさくの花」(右端)山田穂70 1595円 (右から2番目)愛亀ラベル 1870円 (右から3番目)純米大吟醸サキホコレ 2310円
そして、高知県の司牡丹酒造が作る「船中八策 黒」は、超辛口の土佐の日本酒で、その力強い味わいは、一度飲めば忘れられないほどだそうです。
船中八策 黒(写真中央)1800円
また、日本酒だけでなく、それに合うおつまみも取り扱っています。店内には、缶詰めや国産のとうもろこしを使ったポップコーン、さらには山口では珍しい「いぶりがっこ」といった、個人商店ならではのこだわりの商品が並んでいます。これらのおつまみは、お酒と共に楽しむのにぴったりで、店主のセレクトに対する信頼感が伺えます。
アサヤは、ただ日本酒を売るだけの店ではありません。長い歴史を背景に、地域の人々に寄り添いながら、日本酒文化を次の世代へとつないでいく役割を果たしています。
吉安さんは「アサヤは地元のお客様や時代の求めに応じていき、令和の現在はこの形になりました。また、日本酒の取扱いは蔵元のご協力があって続けられています。地元やお客様を大事にしたいと思っており、ご要望にもなるべく対応するようにしています。」と、話しておられました。
これからも、地元の人々に愛され続けるお店であり続けてほしいと心から願います。