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コロナ禍の東京五輪、開催可否の鍵を握るアスリートの声とSNSの影響力

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イメージ画像ⒸSattalat Phukkum/Shutterstock.com

2020年にツイッターから起きた異論のうねり

「無神経で無責任。この危機は五輪よりも深刻だ」―。新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪開催を危ぶむ声が広がった2020年3月、自身のツイッターで声を上げ、予定通りの開幕を主張し続けた国際オリンピック委員会(IOC)を痛烈に非難したのはトップアスリートだった。

その1人が2014年ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子でカナダの4連覇に貢献し、自身もIOCアスリート委員も務める42歳の元名選手、へーリー・ウィッケンハイザー氏。スポーツ施設が次々と閉鎖され、五輪予選は世界各国で中止される中、五輪準備で不安を抱える選手の心境を指摘した。

一昔前と違い、今はアスリートが会員制交流サイト(SNS)で自身の考えを発信できる時代だ。異論のうねりは一気に広がり、数日後にカナダやオーストラリアの各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)が東京五輪への選手派遣を見送ると発表。雪崩を打つようなドタバタ劇で外堀が埋まり、1年延期が決まった経緯がある。

体操の内村航平が勇気の訴え

そんな中、2020年11月、コロナ禍で初めて行われた体操の国際大会で五輪金メダリストの内村航平が国民に向けて勇気のメッセージをアピールした。

「『できない』じゃなくて『どうやったらできるか』をみんなで考えて、どうにかできるように、そういう方向に考えを変えてほしいと思います。どうにかできる、なんとかできる(という)やり方は必ずあると思うので、どうか『できない』と思わないでほしいと思います」

白血病から競技復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(ルネサンス)は延期された東京五輪1年前のイベントで、世界中に祈りのメッセージを発信した。「1年後の今日、この場所で、希望の炎が、輝いていてほしいと思います」。

コロナ禍で2021年に延期された五輪の開催可否もアスリートの声が一つの鍵を握りそうだ。

英国は3度目ロックダウン、一部だけワクチン接種は不公平

各国で猛威を振るう新型コロナウイルスは新たな脅威となる変異種も登場し、感染収束の兆しが見えてこない。

今夏に延期された東京五輪を開催すべきか否か―。各メディアが実施した1月の全国世論調査でも「中止すべきだ」と「再延期すべきだ」を併せると、反対や見直しを求める意見が約8割となり、五輪を開催しても社会の共感を呼べるのか、現状では極めて厳しい状況と言わざるを得ない。

政府の緊急事態宣言が首都圏や全国に広がる中、五輪の集大成を懸けるアスリートのためにも是が非でも開催してあげたいという気持ちは誰もが共有しているだろう。ただ各国・地域の五輪代表を決めるべき国際大会や予選の中止や延期が続き、いまだに半数近い代表選手が確定していない。

英国では感染急拡大で3度目のロックダウンに突入したが、感染状況によって選手たちの練習環境や準備状況が極端に異なり、公平性の担保はないに等しいともいえる。

こうした状況で各国のアスリートたちは何を思うのか―。IOCのバッハ会長も希望を託すワクチンは、まだ欧米の一部で接種が始まったばかり。東京五輪は当初の計画で世界200カ国以上から1万人を超す選手が参加し、780万人の観客動員が想定されていた。

仮にいち早くワクチンを接種できた欧米の大国の選手だけが参加できて有利になるのでは、スポーツの根幹を成す公平性を損ない、五輪本来の意義を失いかねないだろう。

3月7日から12日まで近代五輪発祥の地、ギリシャのアテネで国際オリンピック委員会(IOC)の理事会、総会が開かれるが、少なくとも今春までには観客の受け入れやワクチン接種を含めて難しい判断が求められそうだ。

ボートのピンセント氏は2024年に延期を求める

五輪のボート競技で1992年バルセロナ大会から2004年アテネ大会まで4大会連続金メダルに輝いた英国のマシュー・ピンセント氏は1月11日、個人の見解と断った上で東京五輪の再延期を主張した。

自身のツイッターで「東京には2024年まで延期できる選択肢を与え、パリ五輪は2028年、米ロサンゼルス五輪は2032年と夏季五輪は開催時期をずらすべきだ」と主張。IOC最古参のディック・パウンド委員(カナダ)が主張するような選手への優先的なワクチン接種に関しては、五輪憲章の精神に反するとし「世界中からワクチン接種のないまま人が集まるリスクを冒すことは、ばかげている」と批判し「IOCには勇気ある決断を求めたい」とコメントした。

日本国内でも感染は再拡大しており、各競技の現場は強化プランの見直しを余儀なくされるなど混乱が続く。アスリートの心も揺れ動いているのが現状だろう。

菅義偉首相は「人類がコロナに打ち勝った証しとして東京五輪を開催する」と繰り返し訴え、IOCのバッハ会長も新年のメッセージで「(大会は)トンネルの終わりの光となる。多様な人類による連帯、団結、回復力を祝うものになるだろう」と期待を込めた。

しかし医療が逼迫するコロナ禍でどこか詩的な言葉は厳しい現実とかけ離れ、世の中の共感を呼ばないこともある。残された時間は多くない。感染状況や社会情勢を慎重に見極め、五輪・パラリンピックの主役となるアスリートを含めた誰もが納得できる形で、コロナ時代の「新たな五輪」の形を模索していく姿勢が求められている。

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記事:田村崇仁

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