【今週の『忘却バッテリー』の話題は?】自分の気持ちに正直に……プレースタイルを変えた千早──智将の変化に読者は注目<171話>
マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で連載中のみかわ絵子先生による大人気漫画『忘却バッテリー』。中学時代に“怪物バッテリー”として名を馳せた天才投手・清峰葉流火と捕手・要圭が、要が記憶喪失になったことをきっかけに野球部のない都立高校に入部し、かつて自分たちが挫折させた球児たちと再び野球に打ち込む日々を描いた高校野球漫画です。
ギャグ調に描かれる男子高校生たちの日常と野球に真剣に取り組むゆえにぶつかるシリアスな問題との絶妙なバランスが多くの読者の心を掴み、2024年4月にはアニメ第1期が放送され、第2期の制作も決定しています。また、主題歌となったMrs. GREEN APPLEの「ライラック」はその年のレコード大賞を受賞し、こちらも大きな話題となりました。
隔週木曜日はそんな『忘却バッテリー』の更新日! 3月6日には最新171話が公開されました。前話では物語のスポットが要圭から千早瞬平へ。要と似た者同士である千早は誰にも頼らずひとりで苦しむ要に、プレーで何かを伝えるべくバッターボックスへ向かいました。
本稿ではSNSに寄せられた反響とともに、171話の内容の振り返りや考察をしていきたいと思います。
※本稿には、171話のネタバレが含まれますのでご注意ください。
“やるべきこと”ではなく“やりたいこと”を──プレースタイルを変えた千早
小柄で非力な千早はスター選手のような長打を打つ練習よりも、俊足や器用さを生かした小技を磨いてきました。その方が自分に向いていて早く上達するからであり、チームの勝率が上がるからです。冷静沈着で理論派の彼はこれまで効率や確率を重視してきました。
しかし、幼い頃に憧れたのは、派手なホームランを打つスター選手。千早は自分がやりたい憧れのプレースタイルを目指すべくこれまでのスタイルを変えることを決意。本話で見せた彼らしくない豪快なフルスイング姿は、長打を得意とするチームメイト・藤堂葵が第9話で見せたフルスイングの姿と重なり、千早のプレースタイルが確実に変わったことを物語っています。
「千早かっけええええ」「千早があんなにかっ飛ばしたの初めて見た」「飄々としてるようで実は誰よりも熱い漢だよ瞬ちゃんは……涙」「千早やっぱり好きだ…泣いた…」「千早回にハズレなし」「感情丸出しで叫んでる千早にグッと来た」と、読者たちは胸を掴まれている様子。
一方、そんな千早の決意を察し、確実にアウトを取れるカーブではなく、真っ向勝負を選んだ相手投手・桐島にも「千早の決意に応えてくれる桐島のアニキかっこよすぎない?」「桐島さんも熱い男でたまらん」「ひねくれてるようで野球に対して真っ直ぐな男たち…好きだ…」と賞賛の声が。これだから『忘却バッテリー』はどっちを応援したらいいかわからなくなるんですよね……!
センターオーバーのツーベースヒットで出塁した千早。歓喜するチームメイトに対し、更なる長打を狙う千早はまだまだ納得がいかない様子。この決勝戦でより一層の成長が期待できそうです!
小手指の監督が佐古で本当に良かった!!
千早にプレースタイル変更の提案をしたのは、監督・佐古でした。1年生の冬に「千早くんが今までやってきたことは絶対間違っていない」と前置きしたうえで、高一の段階で可能性を否定せずにやりたいことをやってみるよう打診していたのです。
高一の冬ということは、試合をやっている今よりも半年ほど前のこと。そんな頃から監督は千早をよく見て、彼の気持ちをちゃんと聞いてあげていたのかと思うと、私はたまらない気持ちになりました。
読者の皆さんも同じ気持ちだったようで、SNSには「監督、やっぱりいい大人だな」「佐古監督が小手指の監督でよかった……」「ちーくんに必要なのはこんな大人だよ」「監督の手腕というか、選手を見る目が鋭くて感心する」と彼を褒め称える声が多数。その中には「普段あんななのに監督やったら有能すぎるんだよな」といった声も。
無職だったところ監督に就任し、自分の采配に不安になると脚をガクガクと振るわせて「赤ちゃんになりたい」などだらしない発言を繰り返し、選手たちから総ツッコミを食らうこともある佐古。それでも彼らが監督を信頼するのは確かな実力と手腕、そして自分たちをしっかり見てくれていることがわかるからなのでしょう。親しみやすく頼れる監督が小手っ子たちの可能性を引き出します!
千早のプレーを見た智将・要圭は何を思う?
「自分のやりたいことをやってもいい」千早のプレーでそう伝えられた智将。二塁打で悔しさを滲ませる姿を見た智将・要圭は「二塁打だぞ 上等だろ」「もっと喜べよ」と諦めの悪いチームメイトに苛立ちを感じている様子。
実は以前、同じような感情を要自身が向けられたことがあるのです。それは第14話で描かれた中学シニア時代に、清峰・要のチームと藤堂のチームが試合をした際のこと。ツーランホームランを打って全く喜ばない要に対して藤堂が「ツーランだぞ笑えよコラ」と思っているのです。
このことを指摘する声も上がっており、「シニア時代にツーランホームランで喜ばなかった要がツーベースヒットで喜べよって言ってるの良いな」「智将が言う側になるとはね」「智将ももっと喜んでいいんだよ!」と読者も要の変化を感じています。
天才清峰葉流火をプロの世界に送り届けるため、自分の感情は二の次で必死に練習や勉強を重ねてきた要。常にチームを客観視していたためいつしか感情はどこかへ置き去りとなり、野球を楽しむ、勝利や成長を喜ぶということをしなくなってしまいました。
しかし、始めはきっと野球が楽しかったはずで、練習や勉強も「葉流火のため」だけではなかったはず。要がやりたかったことは一体何だったのでしょうか。もう忘れてしまっている“やりたかったこと”を思い出すことが彼が苦しみから抜け出す突破口になるように思えます。
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