民泊規制が強まる東京 地域と共存するには
今週末から5連休。日本を訪れる外国人も高い水準が続いています。その宿泊先のひとつ、民泊をめぐって、東京・新宿区や大田区などで規制を強める動きが広がっています。先週水曜の「ニュースズームアップ」でも、この問題をお伝えしました。
民泊規制、その背景は?
では、民泊をめぐる現場はいま、どうなっているのか。民泊や旅館業の制度に詳しい、日本橋くるみ行政書士事務所の代表 石井 くるみさんに聞きました。
日本橋くるみ行政書士事務所 代表石井くるみさん
コロナが明けた後に旅行者と、それに伴って宿泊ビジネスに参入する人がすごく増えました。都心部を中心に施設がすごく増えて、周りを見渡すとホテルと民泊だらけみたいな感じになってしまうと、夜遅くのフライトでやってきた方がスーツケースを引く音がするとか、ゴミ捨てのマナーとか日本のルールを知らなくてそういった苦情が増えやすくはなっています。特に観光業に力を入れたい地域とそうでない地域がありますので、国の方は大枠のルールを作って、さらにルールの中で地域の実情に応じて違ったルールが定められるように、条例とか自治体の中でのルールを決められる仕組みになっています。
石井さんによると、規制には一定の効果が期待できる一方、厳しすぎると、かえって無許可営業に流れる人が出る可能性もあると指摘します。また、トラブルは宿泊客のマナーだけでなく、事業者の管理もポイントです。例えば、民泊から出るごみは、本来、地域の家庭ごみ置き場に出すものではなく、事業者が回収して処理するものです。
AIと騒音計で先回り
こうした課題に事業者はどう向き合っているのか。今回取材したのは、民泊やアパートメントホテルを都内で3000室弱、運営・管理するmatsuri technologies(マツリ・テクノロジーズ)です。
〈民泊施設 例〉
民泊施設は基本は無人ですが、都内に3か所ほど、何かあれば駆けつけるための拠点を置くほか、ごみなどのトラブルを防ぐための工夫をしています。代表取締役の吉田 圭汰(よしだ けいた)さんに聞きました。
matsuri technologies 代表取締役 吉田圭汰さん
我々は専用のストッカー(ゴミ保管庫)置いてるんですけど、(ストッカーが)溢れているかどうかを近隣の住民の方々にクレームをいただいてから行くのでは遅いと思っているので、清掃の方々は毎日どっかの部屋入るので、写真を撮ってもらって、その写真をAIで判定して、人の目で「溢れそうだね」という状態になったら回収に行くということをやっています。対策も他にしていて、今、収容人数が大体5人から6人ぐらいを超えてくると、確かに騒音のクレームが起きる確率が増えてくる状態なので、騒音計を開発してですね、本当にパーティーみたいなことしてればすぐわかって、すぐメッセージで「止めてください」と。それがずっと続いてると誰か送るとか。500室ぐらいつけ始めていたりします。
この騒音計は会話を録音するものではなく、音の大きさだけを測る仕組みです。国も、こうした機器を使った管理を選択肢として挙げています。今年7月、観光庁などは自治体に、騒音計や出入口カメラの設置を条例で求めることもできるとの考えを示しました。
なぜ外国人が神輿を?
ただ、トラブルを防ぐ仕組みがあっても、住宅地では、近所の人からすると「知らない旅行者が出入りしている」こと自体が不安になる場合もあります。そこでmatsuri technologiesが力を入れているのが、地域の人と宿泊客が顔を合わせる機会づくりです。3年ほど前から町会や自治会のお祭りに参加してお神輿を担ぐなどしていて、先月8月からは「PROJECT YAGURA(プロジェクト・ヤグラ)」として始めています。
そもそも、なぜ民泊の宿泊客がお神輿を担ぐことになったのか。再び吉田さんに聞きました。
matsuri technologies 代表取締役 吉田圭汰さん
3年前、住民の方々から民泊ができることに対して「住民説明会をしてくれ」と。ちゃんと話すとわかってくれるんですよ。それで、逆に「何か町内会でお困りですか?我々が貢献できることありますか?」と聞くと、「本当に神輿の担ぎ手がいなくて、上がらないんだよね。担ぎ手出してよ」と言われたところから実は始まっています。行ってみてわかったのが、最初はみんななんで外国の人がって「?」になって不安な顔をするんですけど、日本の人たちの顔を見たりすると「お前、イタリアから来たのか!すごいな!」みたいな感じになるわけですね。
祭りには社員も同行し、神輿の扱い方など地域のルールを伝えています。去年参加した外国人客の中には、日本文化をよく勉強していて、「地域の神聖なお祭りだから、住人しか参加できないと思っていた」と喜びの声があがり、6時間ほど担いだあと、「人生で最高の思い出。またこの町に帰ってくる」と話していたそうです。ただ、こうした交流の効果は、まだこれからです。吉田さんも、問題のある事業者への取り締まりは必要だとする一方、民泊には長く滞在する旅行者の受け皿という役割もあると話していて、住民の暮らしと観光をどう両立していくか、これからも考えていきたいとのことでした。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)