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『クリスマスってなあに?』文・絵:ジョーン・G・ロビンソン / 訳:こみやゆう

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『クリスマスってなあに?』

「思い出のマーニー」や「テディ・ロビンソン」シリーズで知られるイギリスの作家ジョーン・G・ロビンソンは、かわいい娘たちを最初の読者として創作した素晴らしい絵本を世界中の子どもたちに届けてくれました。

1946年にイギリスで刊行されたこのクリスマス絵本も「クリスマスってなあに?」という子どもの問いかけに、〈あなたたちが生きる世界〉の素晴らしさや面白さを余すことなく伝えたい……そんな愛情に満ちた一冊です。

「クリスマスってなあに?」と、もし澄んだ目をした小さな人に訊ねられたらどう答えましょう? 「美味しいごちそうをたくさん作って、ケーキも食べてお祝いするの。いい子に寝ていたらサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるよ。クリスマスの朝が来るのが楽しみね」日本の家庭のクリスマスしか知らない私はきっとこんなふうに答えるのですが、この絵本はもう少し深く豊かにクリスマスの歓びを伝えてくれます。

約2000年前の12月25日に特別なあかちゃんがお生まれになった美しい夜のこと。大好きな人を想って描くクリスマスカードと配達してくれる郵便屋さんを待つ楽しみ。プレゼントを選ぶのに大切なのは何かということ。クリスマスプディングの魔法のような秘密。クリスマスキャロルを届けてくれる訪問者へのもてなしのこと。赤い実をつけたヒイラギや鮮やかな緑のヤドリギの飾り方。プレゼントを心待ちにしてベッドに吊るす靴下。「どうしてわかったの?」と言いたくなる、なぜだかちょうど欲しかったものばかりのプレゼント。七面鳥の丸焼きやドライフルーツがたくさん入ったミンスパイが並ぶ、テーブルいっぱいのごちそう。病院の子どもたちにもちゃんと訪れるクリスマスの幸せ。クリスマスツリーの灯りが贈り物を照らす眩しい瞬間。最高に幸せな一日の終わり。そして、プレゼントのお礼のカードを書く楽しくも難しくもある時間や少し寂しいお片付けまで。

すべてが美しく映画の世界みたいな遠い異国の文化は、子どもたちの世界を広げてくれるだけではなく、私たちかつての子どもたちの奥に眠る子ども心もくすぐります。
赤と青と黄色の3色で彩色した洗練されたお洒落なイラストは、どのページをとっても飾っておきたいかわいらしさ。77年前に描かれた古さを感じさせません。私が特に気に入っているのは見返しという表紙と本文をつなぐページに描かれたたくさんの天使たち。もしこの本を見かけたらぜひ広げてご覧になっていただきたいです。知りたがり屋のかわいいお子さんと楽しむのもおすすめですし、この一冊が飾ってあるだけでクリスマスの歓びが一人暮らしのお部屋やいつものお家にも届くのではないかと思います。

大切な人のことを思い出すこの季節、このかわいい絵本をいっしょに読みたい人、贈りたい人は浮かびますか?もちろん、もっとも大切なひとり、自分自身に贈る本としても素敵だと思います。

みなさんのもとに幸せなクリスマスが訪れますように。

『クリスマスってなあに?』
著者:ジョーン・G.ロビンソン/文・絵こみや ゆう 訳
出版社:岩波書店
定価:1430円

文:今村育代
本と出会うための本屋「文喫」福岡天神のディレクターとして企画展示などを担当。都築響一 編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(ケンエレブックス)のスピンオフZINE『Neverland Diner 二度と行けない福岡のあの店で』の制作に編集・ライターとして参加。

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