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「光」を追い続けた多田美波の70年をたどる展覧会が「東京都現代美術館」で開催

タイムアウト東京

「光」を追い続けた多田美波の70年をたどる展覧会が「東京都現代美術館」で開催

「帝国ホテル 東京」の光壁『黎明』や皇居の新宮殿のシャンデリア『光造形』など、建築と一体となった作品をはじめ、数多くの野外彫刻を手がけた多田美波。光や反射といった現象を取り込みながら、独自の表現を追求した彼女の没後初となる大規模回顧展「多田美波―光、凛と ゆれる」が、清澄白河の「東京都現代美術館」で、2026年12月6日(日)まで開催されている。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景

1924年に台湾・高雄で生まれ、2014年に逝去した多田は、絵画から彫刻、照明、建築空間まで幅広く手がけた彫刻家。同展では、約70年にわたる活動から、初期の絵画をはじめ、アルミニウムやアクリルを用いた彫刻、作家が「光造形」と呼んだ照明作品まで、およそ70点を展示する。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景

同展は、初期の絵画から幕を開ける。高度経済成長真っただ中の1950年代後半、30代前半の多田が繰り返し描いたモチーフの一つが「変電所」だ。電線や鉄塔が交差するその姿は、成長を続ける当時の日本を象徴する存在だったのだろう。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景

一見すると白と黒を基調とする絵の具で描かれているようだが、近づいてよく観ると、下地にカラフルな色が潜んでいることが分かる。既にこの頃から、光が内包する複雑な色彩を追い求めていたことがうかがえる。

Photo: Kisa Toyoshima『変電所』(1958年)

会場を進むにつれ、平面だった作品は徐々に抽象的かつ立体的なアプローチへと変化していく。1960年ごろからは、キャンバスに絵の具を垂らしたり、小石やガラス片を貼ったり、表面を切りつけたりと、手の痕跡をぬぐいたいという意識が感じられる作品を手がけるようになる。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景
Photo: Kisa Toyoshima作品の部分(題不詳・制作年不詳)

その後、彼女が注目したのがアルミニウムだった。ハンマーでたたき、バーナーで熱することで「手癖」から離れ、コントロールしきれない表現を生み出していった。その代表例が「周波数」シリーズだ。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景

1960年代後半になると、当時の新素材であったアクリルにも積極的に取り組むようになる。アクリルにアルミニウムを貼り付けた鏡面仕上げの作品『Phase-Space 6943』(1969年)では、シンバルのような形状をした3つの円状がモーターによってゆっくりと回転することで、周囲の環境や鑑賞者の姿を映し込み、刻々と変化する表情を生み出す。

Photo: Kisa Toyoshima『Phase-Space 6943』(1969年)

「環境を芸術の中に入れるだけでなく、芸術を環境化する」と多田が語ったように、彼女が追求したのは、作品を置くことで周囲の空間そのものを変え、鑑賞者を作品の外側ではなく取り巻く環境ごと巻き込むことだったのだ。

会場の奥へ進むと、多田の代表作ともいえる野外彫刻の作品が展示されている。全国各地で野外彫刻展が盛んになった1960〜1970年代、多田も数多くの展覧会に参加し、屋外空間を前提とした大規模な彫刻を手がけるようになった。作品のスケールが大きくなるにつれて、制作は一人の作家だけで完結するものではなくなり、「多田美波研究所」のスタッフとの協働によって進められていった。

Photo: Kisa Toyoshima『スペース』(2009年)

吹き抜けのアトリウム空間には、1980年代から2000年代にかけての大型彫刻が並ぶ。中でも目を引くのが、天井からつり下げられた『翔』(1986年)。重力を感じさせないほど軽やかに浮かぶ姿に驚かされる。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景

ここに展示された唯一の鋳物作品『究』(1999年)も見逃せない。晩年、脳梗塞で半身まひとなった多田が、動かせる右手を使って自ら粘土を形作り、その原型から鋳造された一作だ。彼女の創作への思いが凝縮されており、観る人の心を揺さぶるだろう。

Photo: Kisa Toyoshima『究』(1999年)

会場には彫刻だけでなく、照明器具や建築空間のための作品も多数紹介されている。多田が「光造形」と呼んだシャンデリアや建築のためのレリーフなど、表現の幅広さには目を見張るものがある。

Photo: Kisa Toyoshima『光造形 瑞雲』(1973年/2026年)

生涯で約200点の彫刻と、500点に及ぶ建築関連作品を残した多田。彼女が生涯を通して追い求めた光の表情を、ぜひ会場で体感してほしい。

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