死なないクラゲがいるって本当?
ふらっと こども電話相談室
2024年6月5日放送
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. 死なないクラゲがいるって本当ですか?(東京都 こうせいくん 7歳 小学2年生)
(回答した先生)鈴木香里武さん/岸壁幼魚採集家
向井おにいさん:こうせいくんは今日、何をしてましたか?
― 習い事です。
向井おにいさん:なんの習い事をしてるんですか?
― 走り方教室です。
向井おにいさん:ええっ、走り方教室! いつから行ってるんですか?
― 1年生ぐらい。
向井おにいさん:1年生から行ってるんだ。なんでそこの教室に通おうと思ったの?
― 足が遅いから。
向井おにいさん:ああ、そうなんだ。そこに行ってからどう、足は速くなりました?
― はい。
向井おにいさん:ああ、すごいねえ。さあ、こうせいくんの質問、これはどこで聞いたの?
― お兄ちゃんから聞きました。
向井おにいさん:死なないクラゲがいる・・・。こうせいくんはどう思いますか? いるか、いないか。
― いると思います。
向井おにいさん:うん。さあ、この死なないクラゲがいるかどうか、香里武先生お願いします。
香里武先生:はい。こうせいくん、こんにちは。
― こんにちは!
香里武先生:今日は質問してくれてありがとうね。死なないクラゲ、実はね、そういうクラゲは海にいるんですね。ベニクラゲっていうクラゲです。大人になっても1センチくらいしかない、ちっちゃなちっちゃなクラゲなんです。
― はい。
香里武先生:さっき、死なないって言ったよね。死なないって、魚に食べられても、海水の温度が100度になっても、電子レンジでチンしても、何をやっても死なないスーパーマンみたいな存在かっていうと、そういうクラゲではないんですね。魚に食べられちゃったら、それは死んじゃいます。海水の温度が高くなったら、やっぱり死んじゃいます。そういう意味では死なないクラゲではないんだけれども、実はね、このクラゲは赤ちゃんに戻るっていう技を持ってるんですね。
― はい・・・。
香里武先生:イメージできるかな? 今、こうせいくんが7歳だよね。このあと大人になって、17歳、27歳、37歳・・・。そして、もしかしたら107歳までいっちゃうかもしれないね。107歳ぐらいになったこうせいくんがね、「あれ、なんか気温が上がってきちゃってちょっと住みにくいな。暮らしにくいな」って思ったとしましょう。
― はい。
香里武先生:そうしたらね、「よし、もう一回やり直そう」って、0歳に戻っちゃうの。これがベニクラゲのすごい技なんですね。つまり、大人になったベニクラゲがけがをしちゃったり暮らしにくい海の環境になったときに、若返りっていう技を持ってるんですね。もう一回、一生をやり直すことができる。これが何回でも若返りできるっていうふうに考えられてるんですって。
― そうですか。
香里武先生:うん。だから、そのクラゲがおじいちゃんになって、赤ちゃんになって、おじいちゃんになって、赤ちゃんになって・・・っていうのを何回も繰り返せば、確かにずーっと死なずに命をつないでいくことはできるかもしれないですよね。
― はい。
香里武先生:こうせいくんは、クラゲが赤ちゃんの頃どんな姿をしてるか見たことあるかな?
― 見てません。
香里武先生:クラゲってふわふわって泳いで漂ってるよね。水族館で見るとプワプワ浮かんでると思うんだけども、実はあれはクラゲが大人のときだけの姿なんです。赤ちゃんのときは岩から植物みたいに生えてるんですね。岩から生えてるときをポリプって呼ぶんだけども、ポリプのときにはね、自分のクローン・・・クローンってわかるかな。あんまりわからないかな?
向井おにいさん:ちょっと難しいかな。
香里武先生:ちょっと難しいかな。
向井おにいさん:分身みたいな。
香里武先生:分身ですね。自分と同じ顔、同じ声、同じ見た目の人がどんどん増えていく。そういうのをクローンって言うんですね。クラゲは赤ちゃんの頃はそうやってクローンでどんどん自分と全く同じものがふたつ、みっつって増えていくことができる。そういう意味ではベニクラゲだけじゃなくて、クラゲ全体がちょっと変わった一生を送っていますよね。そうやってクローンがどんどん増えていくって考えたら、一匹としての寿命はあるかもしれないけれども、クラゲはみんな無限の命を持っているのかもしれないですね。
― はい。
香里武先生:クラゲはとっても面白いから、ベニクラゲだけじゃなくて、いろんなクラゲがどんなふうに成長するのか、ぜひ今度、水族館に行ったら詳しく見てくれると嬉しいです。
― はい。
向井おにいさん:こうせいくんは100歳まで生きてもう一回、0歳から生まれ変わりたいって思う?
― 変わりたいです。
向井おにいさん:ああ、いいですね。ずっと楽しい人生を永遠に繰り返すことができるってことですもんね。こうせいくん、また何か聞きたいことや質問が浮かんだらぜひ送ってください。
― ありがとうございました!
向井おにいさん:はい、ありがとうございました! 元気なこうせいくんでしたね。
香里武先生:走り方教室っていうのがすごくかわいらしくてねえ。魚にも泳ぎが遅い魚がいますけど、そういう魚は別の方法で身を守ったりしているんです。魚って短所にくよくよしないんですよね。それをカバーする長所をどんどん伸ばしていくっていう、そんな幼魚たちの生きざまからもぼくは勇気づけられるなあと、今、こうせいくんのお話を聞いていて思いました。
(回答者プロフィール)鈴木香里武さん。全国の漁港に出かけ岸壁に集まる魚の赤ちゃんを観察・研究している「岸壁幼魚採集家」。たくさんの人に魚の魅力を伝えながら、幼魚ばかりを集めた世界的にも珍しい「幼魚水族館」(静岡県清水町)の館長も務めています。