災害時にも大事!これから町内会はどう維持する?
災害が起こった時、地域とのつながりが大事というのを耳にしますよね。しかし、一方で、町内会自治会は、会長を始めとした役員の担い手不足が深刻とも聞きます。
そこで今日は、これからの町内会・自治会についてのお話です。
地域の助け合いが成立していれば町内会でなくてもいいですが・・・
まずは、地域社会学がご専門の放送大学教授の玉野和志先生に、「地震や水害など、災害が頻発する今、やはり町内会自治会は大事なのですか?」と聞いてみました。
放送大学 玉野和志教授
「町内会自治会があるからと言って、災害時に役に立つとは限らないんですね。要は地域の関係が日頃からある程度、顔の見える関係があって、あそこの家はどうしてるとかそういうのが、助け合いという形で成立しているかどうかが問題なので、町内会自体がある・ないっていうことよりは、そういう実質的な関係があるかどうかっていうことの方が、需要だっていうのがホントのところなんですね。
ただ、町内会自治会が日頃から日常的に活動していて、地域の関係を維持していれば、自然とそういうものが機能するっていうことは言えると思いますので、それなりの、まあそんなに盛んじゃなくてもいいんですけども、定期的な活動は維持されていて、人と人の関係がつながるような機会を保障していれば、それなりの意味はあるということですね。」
隣近所が顔見知りで関係が築けていればいいので、必ずしも町内会である必要はない。むしろ、ただ町内会があればいいってものではない、と玉野先生。
しかし、災害直後の助け合いや、災害後しばらくしてからの自治体との交渉の際に、地域の人の意見や要望を把握して窓口になれる人がいるのは大事なので、そう考えると町内会自治会はやっぱりあった方が良さそうですよね。
元も子もなくならないためにも、ほどほどの町内会活動を!
ただ、玉野先生は『そんなに盛んじゃなくてもいいんですけど』と言ってましたよね。それはどういうことなのか?再び玉野先生に聞きました。
放送大学 玉野和志教授
「完全に無くなったっていうのはそんなに多くは聞かないんですけども、どこも活動を見直さないとなかなか担い手もいないし、役職者も引き継ぐことが難しいっていう風になってるのは確かですね。
いざって時に必要になるものなので、日ごろは、できれば誰かが維持してくれてるならば、まあ自分はそこそこでいいかなっていう感じになるところがあって、まあその辺が、日ごろの維持という点では非常に難しい組織っていうところがあるんですね。
あの、日ごろからあんまり一生懸命やっちゃうとかえって負担になっちゃって、やめちゃえ!っていう形になっちゃうと、元も子もなくなっちゃうので、その辺はぜひ見直しながら、負担の無いカタチで最低限維持して、何かあったときに結集できるようにするっていうようなのを、なによりも町内会の役割という風に考えていただくのがいいかなと思いますけどね。」
町内会自治会を維持していくためにも、ほどほどの活動で、ということ。
実際、活動を見直して、普段の負担を減らさないと、町会長など役員の担い手がいなくて、引き継げない町会が増えているのは確かなのです。
会長歴3年!二十歳の町内会長!!
そんな中、町内会の世界(?)に新しい風を吹き込んでいるのが、鹿児島市の唐湊山の手町内会、会長の金子陽飛さん。現在20歳で会長歴は3年。なんと会長になったのは高校3年生の時。どうして町内会長になったのか、伺いました。
鹿児島市唐湊山の手町内会長 金子陽飛さん
「僕の町内会自体が一年に一回役員が変わっていく形なんですけれども、ちょうどその高校三年生の時、僕の家が担当が回って来ちゃった段階で、リビングで(家族と)その話をしてた時に、僕に、町内会長お前がチャレンジしてもおもしろいんじゃね?みたいな感じの話題が出て、なんて言うんですか?僕の中でも、高校生が地域の会長で何かチャレンジするって、少し面白そうだなっていう感じになりましたね。
最初はもう断られる気満々というか、断られるだろうなと思ってたんですけど、立候補することに関しては全然アリかなと思って、実際に会長を決める場に初めて出席したんですけども、役員決めを行う瞬間があって、やっぱりなかなかみなさん会長だったりとか、なりたがらないというか避けてしまうのがあったんですけど、そこで立候補して、もちろん最初はみなさんすごい困惑されてたのは、すごく僕自身も覚えてはいるんですけども、色んなことにチャレンジしたい思いだとかを話した結果、最終的に受け入れてくださって、で、実際に会長になれたって感じですかね。」
金子さんは、人とのコミュニケーションはむしろ苦手だし、あまりしたくないこと、というタイプだったそうですが、会長はなんだかおもしろそう!と思えたとか。
シーンとする役員決めの会場で、僕がやります!と手を挙げました。(すごいですよね!)
町内の困りごとと住民のマッチングで、地域参加へ!
町内会の高齢化や人手不足があるので、昔のような、町内会のお祭りや運動会などは、負担が大きくて現状では難しいのが現実。そこで、金子さんは今までにないやり方で町内会のつながりを作ろうとしています。
鹿児島市唐湊山の手町内会長 金子陽飛さん
「どこに目線を当てて地域づくりすべきかなって考えたときに、全然その地域のことを知らないなっていうのがあったので、地域を知ることがまず一番最初は大事だろう、じゃあ住民一人一人にスポットを当てて考えてみようってことで、それぞれの得意なことや好きなことを聞いて回って、それを町内会や今後の活動に上手く活かせないかなってことで。
例えばですね、新しく引っ越してきた方々への声かけとか、なかなか僕含めて、すごくハードル高いものだったんですけど、元々営業されてた方が、私はそういう風な声かけするのはすごく得意だからって言ってくださって、実際にその方にお願いして、ホントに一周サラッと声かけするだけで、なんか3、4世帯増えたりしてですね。
そういう風な得意なこととか好きなことで地域に貢献してもらって、そういう風なカタチで地域を知ったりとか、住んでる人たちを知るのは、すごく僕自身も楽しかったので、すごくやって良かったなと。」
街灯が切れれば電気関係の仕事の人が交換。金属加工ができる人やドイツ語が出来る人、料理やピアノを教える人。町内で必要な仕事を書き出して、それが出来る住民に担ってもらうというマッチングの仕組みを作りました。
地域の行事に参加という形ではなくて、自分の出来ることで参加するのでハードルが下がるし、仕事を担って、頼んで、地域の人々の関係も築ける!
昔の町内会のことは知らない新しい会長の、新しい町内会。
肩に力が入ってなくて、維持するためのほどほどってこういうことなのかな?と思いました。
玉野先生も、活動を見直して維持を図るために、さまざまに模索している町内会自治会は増えています、とおっしゃっていましたが、まさに今、大きな曲がり角に来ているのかもしれませんね。