「親の夫婦喧嘩に気を遣っている…」“家庭の空気”を子どもに背負わせない方法
臨床心理士・公認心理師のyukoです。怒鳴ることも、暴力を振るうこともない。それでも、無視やため息、機嫌の悪さを利用して相手をコントロールするような関わりは、子どもに大きな影響を与えることがあります。子どもは言葉以上に、家庭の空気や夫婦の力関係を敏感に感じ取るもの。子どもが家庭の空気を背負わないために親ができる関わり方を考えます。
夫婦喧嘩で子どもに気を遣わせてしまう
「はあ、またか」と長男が呟く。朝、些細なことから夫婦喧嘩をしてしまった。夫は怒っても怒鳴ったり暴力を振るったりすることは決してない。しかし何日も必要最低限しか話さず、私が話しかけても無視する。子どもの前ではなんとか普通に振る舞っているが、小5の長男はすぐに気づいて私たちの機嫌をうかがうようになる。弟に「パパ機嫌悪いから明日にしな」と声をかけるのを見て、必要以上に家庭の空気を背負わせてしまっていると、申し訳なく感じる。
うちがしてるのはどこの家庭にもある夫婦喧嘩なのか? それともうちのパートナーはモラハラなのだろうか?
他の家庭の夫婦喧嘩を詳しく知る機会はそう多くないので、うちは普通なのか、そうではないのかがわからない人は多いもの。
ここで重要なのは、夫婦喧嘩が子どもにどう影響しているか、どんな喧嘩が繰り返されているかという点。
一度振り返っておきたい、夫婦のコミュニケーションについて考えます。
子どもが見ているのは家庭の力関係
・意見が合わないと何日も無視する
・ため息や無言で相手を責める
・「お前のせいだ」と責任を押し付ける
・生活費を必要以上に管理し、相手の自由を奪う
こうした関わりは、当事者にとっては「夫婦ならよくあること」と受け止められている場合があります。
ここで、大切なのは一度起きた出来事ではなく、それが家庭の中で繰り返されるパターンになっていないかということ。
子どもが見ているのは言葉そのものよりも、「誰が我慢しているか」「誰が力を持っているか」という家庭の力関係です。
「お父さんが黙ると、お母さんが謝る」「機嫌が悪い人に気を遣う」。
そんなやり取りを繰り返し見ていると、子どもは無意識のうちに「家族とはこういうものなんだ」と学んでいってしまいます。
子どもが安心して過ごせるように、家庭ではどう工夫すればよいのでしょうか。
子どもの安心を守るために、家庭でできること
子どもが空気を変えようとしたら、大人が引き受ける
子どもが親に気を遣っているかどうかは、こんな風に現れます。
・急に明るい話題を持ち出す
・弟や妹を別の部屋へ連れていく
・「お父さん、これ見て!」と笑わせようとする
一見、気を利かせているだけに見えるかもしれませんが、その背景には「家の空気を何とかしなきゃ」という緊張が隠れているんです。
子どもが親に気を遣っている様子に気づいたら、
・「ありがとう。でもこれは大人の話だから大丈夫」
・「気を遣わせてごめんね、あなたは気にしなくていいよ」
と、空気を整える役割を親が引き取ることが大切です。
「あとで二人で話そう」を子どもの前で言葉にする
夫婦の考えが違い、多少衝突する場面は、避けられません。
ただ、そのやり取りをずっと子どもの前で続けると、子どもに負担を強いてしまいます
長引きそうなときは、
・「この話はあとで二人で話そう」
・「今は子どもとの時間だから、続きは後にしよう」
・「今は落ち着いて話せないから、少し時間を置こう」
そんな一言を交わすだけでも、子どもは安心します。
子どもは、「意見が違うこと」よりも、「この空気はどうなるんだろう」という先の見えなさに不安を感じやすいもの。
大人が話し合いの区切りを示すことで、「これは大人同士で話し合うことなんだ」と受け止めやすくなります。
修復した姿を子どもに見せる
夫婦がぶつかること自体が、子どもにとって悪なわけではありません。
むしろ、意見が違っても話し合えば関係性は壊れないと示すのは、人間関係のモデルともなります。
そのため、喧嘩したあとは修復した姿を子どもに見せるのも大切です。
・「昨日はお互い言い方がきつかったね」
・「パパもママも昨日は疲れてて、嫌なところを見せてごめんね」
・「さっきはうまく言葉にできなくてごめん」
そんなやり取りが、少し耳に入るくらいがよいでしょう。
臨床相談では、「親が喧嘩をしたこと」よりも、「その後どうなったか分からなかった」という体験が、不安として残っている子どもも少なくありません。
子どもが、「なんだ、よかった」と思い、喧嘩は終わったものと理解してもらうのが大切です。
怒鳴り声や暴力がなくても、子どもは親が作る家庭の空気を敏感に感じ取っています。
だからこそ目指したいのは、「喧嘩をしない家庭」ではなく、子どもが「この家では、大人がちゃんと大人の問題を解決してくれる」と信じられる家庭。
親子ともに、安心して過ごせる家庭を作っていけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師