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坂本昌行、紫吹淳、今陽子、鳳蘭らが、時を経てより深みを増した芝居と歌唱で魅せる 『THE BOY FROM OZ』ゲネプロ&取材会レポート

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『THE BOY FROM OZ』会見より

2020年5月に公演中止となっていた坂本昌行主演のミュージカル『THE BOY FROM OZ』。1970年~80年代にアメリカを中心に活躍したオーストラリア出身のエンターテイナー、ピーター・アレンの生涯を、彼が生み出した名曲と共に描くミュージカルだ。数々のミュージカルに出演してきた坂本が、2005年の初演、2006年の再演、2008年の再々演から17年の時を経て『THE BOY FROM OZ Supported by JACCS』で再び稀代のエンターテイナーを演じる。演出はフィリップ・マッキンリー、振り付けはジョーイ・マクニーリーが手掛けるほか、坂本と同じく初演から出演しているジュディ・ガーランド役の鳳蘭、ライザ・ミネリ役の紫吹淳、ピーターの母親マリオン・ウールノー役の今陽子が再集結。さらに、新キャストとして末澤誠也(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)、宮川浩が加わった。取材会には、坂本昌行、紫吹淳、末澤誠也、宮川浩、今陽子、鳳蘭らキャスト陣と演出のフィリップ・マッキンリーが登壇した。

ーーまずは初日を迎えるにあたっての思いを教えてください。

坂本:気付けば初演から十数年になりましたが、こんなにも色褪せず、新鮮にドキドキできて楽しめる作品はなかなかないと思います。稽古場ではいつものメンバー、新たな仲間と非常に楽しい時間を過ごすことができました。こんな贅沢な時間をお客様とまた共有できると思うと最高です。

紫吹:またライザを演じさせていただけるのは、私にとっては驚きでした。坂本さんがおっしゃったように、稽古場にいると時が当時に戻ったような不思議な感覚がありました。貴重な経験をさせていただけることに感謝しています。

末澤:僕は今回からの参加なので、どんなふうに入っていけばいいか正直緊張しました。でも、皆さん本当に優しく迎えてくださって、宮川さん筆頭にいじってくれたのですごく楽しく稽古ができました。

宮川:本当は2年前に出演できるはずだったので、2年待ちました。素晴らしい作品で、今回はピーターの父とマネージャー、全く違う二役を楽しませていただいています。千穐楽まで頑張りたいですね。

:今日が通し稽古でしたが、オーバーチュアがはじまった瞬間に感激してしまいました。初演から17年経って歳をとりましたが、うちの息子も全然変わらなくて(笑)。本当に嬉しく思います。

:ミュージカルって曲が命で、回を重ねていると血管の中に曲が入ってくるんです。曲を聞いただけで胸が熱くなって涙が出てきます。あと、婿殿に恋をしていますね(笑)。

坂本:(笑)。

フィリップ:上品なワインのように、作品がとても熟成されたと思います。実を言うとこの作品は私にとって、コロナによるパンデミックが起きてから2年ぶりの演出です。故郷に帰ってきたと思えるのはこの作品だからこそ。このタイミングで幕を開けられたことに喜びを感じます。

ーー坂本さんと女性陣は初演から続けての出演ですが、変わったところ、変わらないところはどこですか?

坂本:真面目に答えると、作品についてより深く考えるようになりました。この17年間で僕自身も多くの人との出会いや大切な人との別れを経験し、旅立った人を心から愛していたと改めて思えましたね。それを反映して演じている部分はあります。

紫吹:変わらないことはまつ毛の大きさです(笑)。変わったこととしては、年齢を重ねて二幕の気持ちが分かるようになりました。あと、ピーターとグレッグが素敵すぎて、ちょっとグレそうです(笑)。新たな感情が芽生えて、稽古場でも末澤くんに、「あなたのために歌ってるのよ、私のためには歌ってくれないのよ」ってずっと言ってました(笑)。

:初演メンバーがみんな変わらないのが素晴らしいです。みんながまた揃ったのも嬉しいですし、私はツレさん(鳳の愛称)よりちょっとだけ年下なので背中を追いかけたいです。

:ミュージカルって、お客さんも演じる側も、回数を重ねるにつれて感じ方が深くなっていくんですよね。本当は初演でこのレベルまで持ってきていないといけなかったので反省もあります。

ーー歴史ある座組みに参加されるお二人はいかがでしょう。

宮川:大先輩二人とは共演したこともありますし、素敵なカンパニーなので入りやすかったですね。前回までのキャストと比べられるかもしれないという心配はありましたが、今はその不安も消え、楽しくやっています。

末澤:僕は今回初ミュージカル。不安も大きかったですが、先輩たちもフィリップさんもすごく丁寧に説明してくださって、「遠慮しないで」と言ってくれました。ミュージカルなので発声も違って思っていた以上に難しかったです。教えてもらいながら掴んでいけたので、すごく勉強になりました。坂本さんとは恋人同士の役で、関係性や感情のベクトルの提案などもしてくれてすごくやりやすかったです。悲しみや死への恐怖や悔しさの表現について、前面に出すだけじゃなくて抑える方法もあるんじゃない? ってアドバイスもくれました。

坂本:普段は弟的な可愛らしさがあるんですが、芝居は日々進化していくので、つい色々アドバイスしてしまいました。それを自分なりに吸収し、フィルの言葉も自分の中で消化して芝居に落とし込んでいるので、お客様の反応も楽しみですね。

ーーステージ上ではとても親しくなるお二人ですが、プライベートではどうですか?

坂本:いや、特には。

末澤:早いです!

坂本:(笑)。このご時世なので遊びに行くとかはしていませんが、関係性はできています。稽古中もふざけ合いつつ締めるところは締めて。初めてという感じはしなかったですね。

末澤:本当に大先輩なので、どう接するか迷いもありましたが、役柄的なこともあってぐいぐい話しかけさせてもらいました。

坂本:本当に壁がなくて、僕のボケも全部拾ってくれるので一緒にいる時間が楽しいです。

ーー最後に坂本さんから一言お願いします。

坂本:ピーター・アレンという人物を知らない方でも楽しめる作品です。舞台を観る2~3時間を本当にお楽しみいただけるように、僕らも自由に楽しみます。エンターテインメントの魅力を十二分に感じていただけたらと思います。


以下、ネタバレとゲネプロ写真あり。

【あらすじ】
抜群の音楽センスを持つピーター・アレン(坂本昌行)。母であるマリオン・ウールノー(今陽子)の心配をよそに、スターを夢見てオーストラリアの小さな田舎町を飛び出した彼は、友人とコンビを結成。ある日、香港で行ったステージが大女優で歌手のジュディ・ガーランド(鳳蘭)の目にとまり、ピーターたちは彼女のショーの前座に抜擢される。アメリカへと渡り、ジュディの娘ライザ・ミネリ(紫吹淳)と電撃的な結婚を果たすピーターだが、幸せは長くは続かなかった。ハリウッドで成功し大女優へと飛躍するライザと、仕事が行き詰りつつあったピーター。ピーターが同性愛者であることも明らかになり、ぎくしゃくする二人はついに離婚してしまう。その後、ソロで歌い始めたピーターは新しい恋人グレッグ・コンネル(末澤誠也)と敏腕マネージャー、ディー・アンソニー(宮川浩)に出会う。優秀なブレーンの力も得て次々に夢を実現させ、人生の絶頂に立ったかに見えたピーター。しかし、すべての幸福を覆す事実が発覚し――。

『THE BOY FROM OZ』舞台写真

物語はピーターが自らの生涯を振り返る形で進んでいく。坂本の深みと艶のある歌声が名曲たちとマッチ。野心を抱いて田舎を飛び出した若い頃から様々な経験をして人生を振り返る晩年にかけて歌声も少しずつ変化しており、奥行きが感じられる。計算高く身勝手に見える一面もあるものの、放っておけないと思わせる可愛げもあり、目が離せない存在感が大きな魅力。ピアノを前に弾き語る姿から客席を巻き込んだアドリブのようなやりとり、パフォーマーやロケッツと共に見せる豪華なショーまで、多彩なエンターテインメントを楽しめるのも嬉しい。

また、ゲネプロではリトルピーターを重松俊吾、ヤングピーターは木村咲哉が演じた。共に自信と夢に溢れた若い頃のピーターを瑞々しく表現。軽やかなタップ、母・マリオンとの心の通ったやりとりなど、重要なシーンもチャーミングに見せてくれる。

ピーターの運命を大きく変える出会いのひとつ・大女優のジュディを演じる鳳は高い歌唱力で貫禄を見せる。ここぞという場面で聴かせてくれる安定感はさすが。大スターとして活躍しつつ、神経症や薬の影響で不安定な生活を送っていた彼女を危ういが可愛らしい女性として演じている。

紫吹は母親の影に隠れていた少女が大女優かつ自立した大人の女性へと成長していく様子を繊細に見せている。ピーターとの微笑ましいロマンスが切ないすれ違いを経て深い友情に変わっていく様子を芝居と歌唱で見事に表現し、魅力的な女性像を描き出していた。「音楽を聴くのが大好き」などのナンバーで披露される華やかさ満点なショーステージも見応えたっぷりだ。

そして新たな恋人・グレッグを演じる末澤は、これが初めてのミュージカルとは思えない安定感。頑固でクールな雰囲気だが愛情深さも伝わってくる芝居と、キャラクターにあったまっすぐな歌唱が心地よく、強い印象を残している。

宮川はピーターの父・ディックと敏腕マネージャー・ディーの二役を好演。それぞれ出番は多くないものの、真逆の個性とそれぞれがピーターに対して抱く思いをしっかり見せてくれている。

ピーターを心配しつつ、ありのままを受け止めて見守る母・マリオンの愛情も見どころだ。今は歌唱はもちろん、ふとしたシーンの表情や声のトーンでも息子を案じる母親の深い愛を感じさせる。ライザやグレッグとの関係性にも母親らしいあたたかさがあり、波瀾万丈なピーターの人生を追う中で安らぎを与えてくれる。

辛いことも多い人生ながら、見終えてまず感じるのはあたたかい気持ち。これはピーターの周囲に愛情と理解があり、ピーター自身が自らの人生を愛していたからだろうと思わされる。初演からのメンバーの信頼関係がうかがえるのはもちろん、新たに加わったメンバーやアンサンブル、バンドを含めた全員がピーターの生み出した音楽やエンターテインメントを全力で楽しんでいることが伝わってきた。切なくも美しい人生を、ぜひ劇場で見届けてほしい。

本作は2022年6月18日(土)より東急シアターオーブで上演され、7月14日(木)からはオリックス劇場で大阪公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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