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内村航平、瀬戸大也、福岡堅樹ら東京五輪のコロナ延期で運命が変わったアスリート

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内村航平Ⓒゲッティイメージズ

体操のエース内村航平はスペシャリストに転身

東京五輪・パラリンピックは新型コロナウイルスの猛威で1年延期され、運命が大きく変わったアスリートも少なくない。世界に急拡大する変異種の登場で今夏に大会が本当に開催できるのか不透明な事態が続く中、既に潔く引退を決意した選手もいれば、思わぬアクシデントに見舞われたエース、猶予期間を得たことでスランプから脱出しつつある選手もいる。

体操男子で32歳のベテラン、内村航平は深刻な両肩痛を考慮し、五輪2連覇中の個人総合でなく、種目別の鉄棒に絞って東京五輪を狙う大きな決断を下した。オールラウンダーからスペシャリストへの転身。コロナ禍で所属先のリンガーハットとの契約は終了したが、それでも「体操の美しさ」を追求するキングの美学は変わらない。

2020年12月の全日本選手権では種目別の鉄棒でH難度の離れ技「ブレトシュナイダー」を決めて15.700点をマークし、3年ぶり5度目の日本一に輝いた。

11月の国際大会では五輪開催に否定的な世論を念頭に「五輪ができないと思わないで、どうやったらできるかという方向に考えを変えてほしい。どうにかできるやり方は必ずあると思う」とスピーチで訴えかけ、五輪延期を追い風に完全復活を狙う。

競泳のエース瀬戸大也は不倫騒動、萩野公介は復調へ

競泳男子のエースとして金メダルの大本命と期待された26歳の瀬戸大也は2020年9月、不倫問題を週刊誌に報じられ、所属先だったANAとの契約が解除になった。

2019年世界選手権で2大会ぶりに400メートル個人メドレーの王座へ返り咲き、通常開催であれば東京五輪を象徴する存在の1人とみられていたが、よもやの暗転。日本水連から競技者資格規則の「スポーツマンシップに違反したとき」などに該当するとして2020年いっぱいの活動停止などの処分を受けた。

強化プランが大きく乱れる騒動の末、復帰戦として2月4~7日のジャパン・オープンにエントリー。東京五輪代表権を得ている200メートルと400メートルの個人メドレーに加え、日本記録を持つ200メートルバタフライにも登録して再出発を期す。

一方、瀬戸と同級生のライバル、2016年リオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介(ブリヂストン)は2020年12月の日本選手権で男子200メートル、400メートル個人メドレーの2冠を達成。ここ数年、ひじの手術の影響やプレッシャーなどから極度の不振が続き、長期休養を取った時期もあったが、五輪延期の猶予期間が追い風となり、長いスランプから復調の兆しが見えてきている。

ラグビー福岡堅樹は7人制引退で医学の道へ

ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本の史上初の8強入りに貢献した28歳のWTB福岡堅樹(パナソニック)は五輪延期を受け、7人制日本代表の引退を表明した。もともと五輪後の引退を公言しており「自分の中ではこういう運命だったのかな」と引退のタイミングを先延ばしせず、目標に掲げてきた医学の道に進むことになった。

新型コロナと向き合う医療従事者の奮闘を見たことも五輪挑戦を断念し、医学の道を突き進む決意を後押ししたようだ。

バドミントン高橋礼華やバレー新鍋理沙も現役引退

2016年リオデジャネイロ五輪のバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得した30歳の高橋礼華は五輪延期が決まり、引退を決意。松友美佐紀(日本ユニシス)との「タカマツ」ペアで東京五輪を狙っていたが、気持ちと体が限界を迎え、2020年夏限りでラケットを置く決断に至った。昨年末には金子祐樹(日本ユニシス)と結婚したことも報告した。

バレーボール女子の2012年ロンドン五輪銅メダリストで長らく日本代表を支えた30歳の新鍋理沙も引退を決断した一人だ。延期になった東京五輪の残り1年は「とても長く感じた」という。

身長175センチと大柄ではないが、経験豊富な守備力と高確率で決めるスパイクはいぶし銀の輝きがあった。極限の緊張感で現役を続けるアスリートにとって、不安定なコロナ禍でメンタル面を維持して五輪に再挑戦することは相当な覚悟が必要ということだろう。

バドミントン桃田賢斗は自動車事故とコロナ感染

バドミントンの男子シングルス世界ランキング1位で26歳の桃田賢斗(NTT東日本)は2020年1月、遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれる不運に見舞われた。

2月に入って右目の眼窩底骨折が判明して手術。五輪延期と交通事故との関連性はないが、1年延期は「目と心のケア」のためにも必要な時間だったかもしれない。仮に予定通り開催されれば万全の状態に仕上げられたかは微妙だった。

2020年12月の全日本総合選手権で346日ぶりの実戦復帰を果たし、3連覇を達成。2021年1月のタイ・オープンで約1年ぶりの国際大会に臨んで強化を本格化する予定だったが、遠征直前に成田空港で受けた新型コロナのPCR検査で陽性反応を示し、新年早々に波乱の展開で桃田以外の全選手の派遣中止にもつながった。

コロナ禍で明暗分けたテニス大坂なおみと錦織圭

テニスの日本勢は23歳の大坂なおみ(日清食品)が全米オープンで2年ぶりに女王の座を奪回し、黒人差別反対運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命も大事だ)」の発信でも世界的な話題となった。

一方で31歳の錦織圭(日清食品)は8月に新型コロナ感染が判明し、全米オープンを欠場。9月のツアー大会で右肘手術から約1年ぶりに復帰したが、全仏オープンで右肩を負傷後は大会出場を見送り、不完全燃焼でシーズンを終えた。

大坂はハイチ出身の父、日本人の母を持ち、3歳で米国に移住した「マイノリティー(人種的少数派)」として競技の枠を超えて人種差別に抗議。全米オープンではコートに入場する際に白人警官による黒人男性暴行死事件などの被害者の名前が入ったマスクを着用し、東京五輪でも日本の「顔」になるアスリートとしての存在感を高めている。

男子のエース錦織は東京五輪を控える2021年に再起を期すが、コロナ禍で競技を取り巻く環境は世界的にも依然厳しく、大会の開催も見通せない。

コロナに振り回される各国のアスリートにとって、五輪延期の1年、365日はこれまで以上に長い時間であり、メンタルヘルスを維持することも極めて困難だったといえるだろう。特に東京五輪を集大成に考えて取り組んできた選手にとっては、1年が重い。

五輪をやるのか、やらないのか―。そんな不安と向き合いながら、アスリートの運命を左右するさまざまなドラマが今後も待ち受けているに違いない。

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記事:田村崇仁

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