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ひきこもり演劇の金字塔! ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』(作・演出 岩井秀人)が4都市で公演

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ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』

ハイバイの代表作『ヒッキー・カンクーントルネード』が2021年8月11日(水)~8月26日(木)の東京公演(於 すみだパークギャラリーSASAYA)を皮切りに、高知、山口、札幌の4都市で上演される。本作は岩井秀人が主宰する同劇団の旗揚げとして2003年に初演。今回はオーディションやワークショップで選ばれた10人の俳優が”拝み渡り”と”トペ・コンヒーロ”の2チームにわかれて出演するダブルキャスト編成だ。


あらすじ
プロレスラーを夢見ているが自宅から一切出られない引きこもり(ヒッキー)の登美男。妹の綾が彼の唯一の理解者。ある日、心配した母が連れてきた「出張お兄さん」なるカウンセラーもどきの男・圭一に登美男は説得をされるが、逆に圭一が登美男と共に引きこもってしまう事態に。続いてやってきたカウンセラーは、ふたりを家から外に出すべく、新たな策を練る。果たして、登美男は外に出られるのか……。


16歳から20歳までひきこもっていた岩井自身の経験をもとに書かれた本作。演劇科の大学を卒業後、28歳の時に地元・小金井のデニーズと自宅を往復しながら大学ノートに書き綴ったと岩井は語る。笑いながら、そして心のどこかで泣きながら、たった3日で一気に台本を書き上げたのは、後にも先にも『ヒッキー・カンクーントルネード』を執筆した時だけだったそう。

ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』(2010年公演©︎曵野若菜)

吉祥寺の小さな劇場で産声を上げたこの作品は、男性俳優がパーマヘアのかつらをかぶり、スカートをはいて(女性という性をことさら意識せず)「母」を演じるハイバイ上演スタイルの”礎”となった。その後も岩井とさまざまな俳優たちにより、再演のたびにブラッシュアップされてきた”ひきこもり演劇の金字塔”だ。


岩井秀人コメント
『ヒッキー・カンクーントルネード』は僕自身が引きこもっていた時のことを元に書かれたものです。そして、再演作品も多くあるハイバイの作品群の中でも、断トツで再演を重ねてきたものです。僕がしつこく言っている、「面白ければ再演を何度やっても、お客さんは減らない」ということを立証し続けてくれている作品です。去年、「ワレワレのモロモロ」と共に上演する予定でしたが延期となり、今回、稽古場の安全を考慮して「ヒッキー」のみの上演となります。正直悔しいですが、こんな時期にあえて家を出て、劇場で見てもらえることの価値を感じながら、改めて作り直してみようと思います。

初演から18年の時が経って、ひきこもりに対する世間の見方も変わり、なによりこの1年半でわたしたちを取り巻く日常はすっかり変容してしまった。

15年間自宅にひきこもっている登美男が外に出ることが彼の幸福につながるのか?唯一の理解者である妹の綾は、じつはもっとも残酷な存在ではないのか?おじさんに見えなくもない母は一体どんな想いで息子と向き合っているのか?そもそも登美男自身は本当に外に出たいと願っているのか……?

そんなさまざまな問いを胸に置きながら、自宅にいることを推奨されている2021年の今、わたしたちは家から出られない登美男の物語をどう受け取り何を想うのか。岩井と彼が信じる俳優たちによる”ひきこもり演劇の金字塔”を笑いながらじっくり噛みしめたい。

あ、あと、東京公演の前半は売り止め続出しそうな状況らしいので「すみだパークギャラリー……錦糸町駅からめちゃくちゃ遠いんだよな……」と目が泳ぎ気味の人は(わたしもだけど)、早めにポチっといったほうがいいかもしれないです。暑いしゲリラ豪雨もめんどくさいけど。


◆参考記事◆
【ハイバイ・岩井秀人に聞いたモロモロ「オーディション、カツラ、学生時代、蜷川さん、ひきこもり、ゲーム、俳優、私演劇」】→ https://spice.eplus.jp/articles/267863

文=上村由紀子(演劇ライター)

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