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劇団鹿殺し『ランボルギーニに乗って』菜月チョビ×丸尾丸一郎×河内大和インタビュー~「一周回って、旗揚げ時みたいになってます」

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(左から)河内大和、菜月チョビ、丸尾丸一郎

2000年に旗揚げ、2021年に活動20周年を迎えた劇団鹿殺し。2021年から2022年を「劇団鹿殺し20周年YEAR」と銘打ち、2021年には活動20周年記念公演第一弾として、2016年に上演した作品の再演である『キルミーアゲイン’21』を上演。そして今年7月、活動20周年記念公演第二弾として、新作本公演『ランボルギーニに乗って』が、東京・あうるすぽっと、大阪・近鉄アート館で上演される。今回、インタビューに登場してくれたのは劇団を牽引してきた菜月チョビ丸尾丸一郎の2人、そして近年はNODA・MAP番外公演『THE BEE』への出演をはじめ活躍著しい俳優であり、鹿殺しには今作が初参加となる河内大和。丸尾が1977年生まれ、菜月と河内が1978年生まれと、同世代演劇人3人が語る“鹿殺しの創作現場”とは。


――第二弾は、待望の新作ですね。
丸尾 「2本目には新作を」というのはずっと考えてました。コロナ禍もありましたし、公演中止になる可能性を考えると2本とも新作というのはなかなか難しいだろうと。

――20周年という、ある意味節目であり、新たなスタートの作品で。どういう方向性になるんだろうと思っていたんですが、脚本を拝見するととても「鹿殺しらしい」作品だなと思いました。

丸尾 そうですね。今回は結局、「自分のこと」を書こう……「自分にしか書けないこと」を書こうと改めて思ったんですよ。だから原点回帰的な色が強く出てるかもしれないです。

丸尾丸一郎

――でも、劇団活動20周年という本来ならば大々的にいろいろやるような状況のときに、コロナ禍という状況が重なってしまったわけですよね。鹿殺しのお二人の中では、どういう思いだったんでしょうか。

菜月 20周年を迎える前にコロナがドンッてきて。公式サイトでも「劇団再起動宣言」っていうのを出したしたんですけど、コロナ禍のなか、「演劇がなくても大丈夫」と思わされるような時期がしばらくあったじゃないですか。やっぱりそれで辛くなった人もたくさんいたし、劇団員で改めていろいろ話したんですよね。これまでは「劇団を守ってとにかく続けていこう、大きくなって上を目指していこう」とあまり迷わずにただ進んでいたところを、「自分たちは劇団を本当にやりたいのか」と再確認したというか。劇団というすごく「しんどいこと」をやってでも、何か成し遂げたいことがあるのか。ここには面白いことがある、そう思える人だけでやっていこう……という意思を確認し合ったんですよ。

――その作業があってからの20周年イヤーだったと。

菜月 今までだと、「◯周年」って集大成というか、「ここまで来ましたよ」っていうのをみんなに見せなきゃ、みたいな気持ちがあったんですよね。でもコロナ禍での制約もあるし、「今できる中で一番楽しいこと、新しいこと」を探そうという新鮮な気持ちで迎えることができた。活動10周年、15周年のときのほうがプレッシャーがあったような気がします。

――コロナ禍で公演ができない中、皆さん「自分たちがやっていることの意味」を考えざるを得ない状況でしたしね。

丸尾 「人生」にとっては、逆にいい機会だったんじゃないかなと思うんですよ。これまで「演劇が全て」みたいな感じで、「いかにして売れてやるか」みたいなそういう気持ちで演劇に取り組んでたけど、なんか人生そのものが豊かになった感じがするというか……演劇自体がライフワークじゃないけど、「息をするように演劇を作る」という感覚になってきた感じがしますね。

――ゲストの方々は初参加の方も多いですし、そういう意味では「集大成」というよりは「今やりたいことをやろう」という意思を感じます。

菜月 今は本当に、このカンパニーにゲストさんが入ることで、その出会いを楽しむというか……一瞬一瞬を楽しんで、幸せでいようという願望がすごく強いんですよ(笑)。2013年にカナダに留学したときもそうだったんですけど、ちょっと日本の演劇界から1回離れたとき「売れるって何だ?」とか「誰に褒められたら成功したって思うんだろう?」とかいろいろ考えたんですよね。結局、誰かに褒められる、日本で褒められるためとか、そういうことのために頑張り続けてもそれで本当に幸せって言えるのか。コロナ禍でいろんな公演が中止になって、その世界もいつ壊れるかわかんないのに……みたいなことをすごく考えたんですよ。だとしたら何が「勝つ」ことなのか、それは自分の中で悔いがないって思えるかどうかかな、と。

菜月チョビ

――そんな「出会いを楽しみたい」人の一人が、河内さんだったと。どういう経緯でゲスト出演することになったんでしょうか?

丸尾 劇団員の有田あんが「野生児童」というプロデュースユニットをやってるんですけど、そこに参加されてたんですよ。2016年かな。そのときにまず思ったのは「この人をこんな近くで見れてラッキーだな」と。素敵な人がいたもんだというか(笑)。

河内 すごく持ち上げられてる(笑)。

丸尾 いやいや!(笑) 20周年ということで、今までのゲストの方にも出ていただきたい気持ちもあるし、でも新しい出会い、僕らが刺激を受けるような方と一緒にやりたい……という気持ちもある。それで制作も含めて一緒に案を出し合ってたときに、河内さんの名前が出て。菜月ともぜひ一緒にやりたいねと意見が一致して、それでオファーしたんです。

――河内さんは野生児童に参加する前にも、鹿殺しは観たことあったとか。きっかけは何だったんですか?

河内 いや、なんで観ようと思ったんだろうな……嗅覚?(笑)。でも観て思ったのは、「カッコいいな」と。それも不格好なカッコよさというか……ダサくてもいいから生きようぜ! みたいな、カッコつけてないところがめちゃくちゃカッコいい、そう思ったんですよね。でも今回呼んでいただいて話してみたら、お二人ともドンピシャ同世代だったという。嬉しいですよね。

――河内さんといえばメインはシェイクスピア劇で活躍されている方ですし、近年ではNODA・MAP などメジャーな作品への参加が多いですよね。鹿殺しのような「小劇場」作品の魅力を改めて感じる部分はありますか?

河内 「小劇場作品」でしかできないことってあるじゃないですか。客席も、仲間たちとも、より近い距離感で芝居を作る。その辺はやっぱり、小劇場でしか向きあえないものがあると思います。だから、オファーが来たときはすごく嬉しかったんですよ。

菜月 こちらはほら、喋ったことなかったから。「ダサい」とか「あれは演劇じゃない」とか思われてるかもしれない……と思いながらオファーしましたけどね(笑)。

河内 いやいや! めちゃくちゃ演劇でしょう、鹿殺しは(笑)。

河内大和

――でも、河内さんは鹿殺しの世界観にピッタリとハマる気がします。

丸尾 体が動く、声がいい、演技も上手いっていう「役者としてのスキル」が整っているのはもちろん、何か「売れる準備ができてる」っていうか……。

河内 わははは(笑)。

丸尾 それプラス、どこか「陰」の部分があるんですよ。そこがすごく好きなんです、人間らしさを感じられる気がして。でもほんと、「野生児童」で観てびっくりした身としては、今のご活躍が納得というか。

菜月 そりゃそうだよねー! って。

丸尾 だって野田さんの作品だって、最初はアンサンブルキャストだったわけでしょう? そりゃアンサンブルだと浮くよね、っていう。

河内 でもそれも、年齢とともに自然と「良いところ」に収まってきてて、素晴らしい出会いに恵まれてきたおかげだな、と感じてます。

――河内さんは鹿殺しの稽古場を今初体験しているわけですが、どうですか?

河内 楽しいですよ! なんかスピード感がありますよね。そんな急ぎます!? って言いたくなるぐらい(笑)。

菜月 私も丸さんも、基本超せっかちだから(笑)。

河内 でも、そのスピード感が心地いいっていうか。むやみに考え込まないで、とりあえずパーっと作って次に行こう、っていうような転がし方なんですよ。きっとここからもう一度最初に戻って、どんどん細かくなっていくんでしょうけど……このゴロゴロ転がってる感じ、「止まらない」ところは、いいなと思うし、好きですよ。

――菜月さんは近年、商業作品での外部演出もだいぶ増えましたよね。そういう経験が劇団での作品作りに活かされたりというのはあるんでしょうか?

菜月 いやこれが、いつまで経っても(作品作りに)慣れなくて(笑)。外部仕事だと早くから台本がもらえたりするので、しっかりプランを決めて稽古場に行けるからいいんですけど……今回は新作なんで、ギリギリまでわからなくて。かつ、丸さんは演出もする人だから、書きながらどこか「演出の画」を持ってますし、自分が書いてる分だけ見えてる絵が大きい。だからしっかり演出を思いついてる方がとりあえず進める、みたいな状況ですね。せっかく二人いるから、二人の全アイディアを使いたいとも思うし。ただまあ、私が人見知りというか、説明が下手糞なのもあるので……そこにせっかちな丸さんが「お前から説明してると遅いからどけ」みたいな感じになったりね(笑)。

河内 そこの関係性が面白いよね。

菜月 初期の頃って、こういう作り方を「上手くないな」と思ってたんですよ。もっと賢い人や、もっと大人の演出家だったら、上手に説明して稽古場もスマートなんだろうな、いつかスマートになるんだろうな私たちもって思ったけど……なんか一周回ってもスマートにならない。何なら今回なんか、こんなに2人がぶつかり合いながらやる感じは久しぶりだなと思ってますよ。「旗揚げの時みたいな気分でやりたい」とは思っていたけれど、理想通りに元に戻っちゃってる(笑)。でもそれを楽しんでくれるゲストの皆さんなので、すごく助けられてます。

丸尾 昨日作ったシーンなんかも、頭の中にイメージだけはあって、具体的にどうするかはちょっとやってみながら考えようというときに、河内さんなんかは「こうしたら?」というのをちゃんと提案してくれるんですよ。やっぱり、今までのキャリアがあって、いろんな引き出しがあるから言えることなんだろうなと実感してます。

河内 いやいや、でしゃばって申し訳ない。

菜月 でも河内さんは、鹿殺しの作品を観てくれてるじゃないですか。だから私達が守りたいこととか、作りたいものを信じてくれてるんですよね。だから嬉しいしやりやすい。まあ、昨日のアイディアはめちゃくちゃ「……大丈夫?」みたいなやつだったんですけど(笑)。

河内 でも面白かったよ? 思い付かないよあんなの。「何言ってるんだろう!?」って思ったもの。

菜月 「人に説明するため」に稽古してるんじゃなくて、「信じた先に何かがある」と思える稽古、だからもっと良くしようと思える稽古って、本当に幸せですよ。

河内 毎日「演劇やってるな」って感じです、本当に。

丸尾 なんかね、僕らすごく河内さんの早替えシーンを作りたがるんですよね(笑)。

河内 そう! あるシーンが終わったから、袖に戻れると思ったら「次も出ます」って言われて、それが終わったらすぐもう1回とか。こんなに大変なんて「聞いてないよー」って(笑)。

丸尾 これはネタバレにはならないと思うんですけど、河内さんに中学生の役で出てもらう場面があるんですよ。そこの中学生がもう、見事なんです。テンションの上げ方というか、いらんことしい感が(笑)。皆さんぜひ、楽しみにしててください。

河内 がんばります(笑)。

取材・文=川口有紀  写真撮影=池上夢貢

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