内野聖陽、saraら全キャストが解禁 脚本・鈴木アツト×演出・白井晃、舞台『ヨハンナ』上演
2027年2月~3月にシアタートラムにて上演される、舞台『ヨハンナ』の出演者が決定した。
20世紀初頭のシカゴの食肉市場を舞台とするベルトルト・ブレヒト原作『聖ヨハンナ』。本作では、その構造を現代の食品産業に重ね、大量生産・大量消費・大量廃棄などの環境問題や格差、雇用の不平等といった私たちの暮らしに直結する問題を扱っていく。
利益こそが世界を動かすと信じ、富と権力を手にしてきた経営者・モーラー。その前に現れるのは、損得ではなく、自らの「正義」のために行動する少女・ヨハンナ。二人の対峙を通して、経済と倫理、世代間の隔たり、豊かさや働くことをめぐる価値観の断絶と対比が浮かび上がる。ヨハンナのまっすぐな問いに、一度は心を揺さぶられるモーラー。しかし、巨大な社会の仕組みを前に、彼は最後に何を選ぶのか。正義はどこから生まれ、誰のために語られるのか――本作は、容易には答えの出ない問いを観客一人ひとりに問う。
脚本を手掛けるのは、自らの劇団「印象-indian elephant-」を拠点に、歴史と現代社会を結びながら国内外で作品を発表してきた鈴木アツト。演出は、『三文オペラ』『アルトゥロ・ウイの興隆』『セツアンの善人』など、数々のブレヒト作品に取り組んできた、世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃が務める。本作は世田谷パブリックシアターが取り組む「あたらしい国際交流プログラム」の第四弾として上演されるもので、脚本の鈴木アツトは本プログラムにおける人材育成対象者の一人。鈴木は2026年8月シアタートラム上演の『月を抱く人魚』―雨月物語より―では同世代の演出家・生田みゆきと組み、日本の傑作古典を躍動感と哀愁に満ちた作品として立ち上げたが、今回は同劇場の芸術監督・白井晃と初めてタッグを組み、ブレヒトの名作に現代的な視点を加えながら、世代を超えた協働による新たな創作と、その国際的な発信に挑む。
富と権力を手にした巨大食品企業の経営者・モーラーを演じるのは、唯一無二の存在感と確かな演技力で、数々の舞台を牽引してきた内野聖陽。演出の白井晃とは、2012年の『幻蝶』以来となるタッグ。また、本作で初めてシアタートラムの舞台に立つことも、見どころの一つだ。
モーラーと対峙する少女・ヨハンナ役には、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど、いま注目を集めるsara。世代も俳優としてのキャリアも異なる二人の初共演が、互いの価値観を揺さぶり合う、緊張感に満ちた関係を立ち上げる。
さらに、白井演出作品に数多く出演し、確かな実力と個性を備えた大鷹明良、粟野史浩、斉藤悠に加え、宝塚歌劇団雪組トップスターとして活躍し、退団後も舞台を中心に第一線で活動を続ける朝海ひかるが出演する。
原作に登場する30人を超える人物を、わずか6人の俳優が演じ分ける本作。俳優たちは、資本を持つ者と労働する者、救う者と救われる者など、異なる立場の役を往き来しながら、誰もが社会のなかで「上」にも「下」にもなり得る現代の不安定さを、身体そのものによって可視化する。さらに生演奏を交え、俳優の言葉と身体、音楽が響き合う、立体的で躍動感のある舞台を目指す。
舞台『ヨハンナ』は、2027年2月に東京・シアタートラムで幕を開け、3月中旬までの上演後、3月から4月にかけて兵庫、静岡、愛知での公演を経て、4月にはソウル公演も予定されている。
>脚本・鈴木アツト、演出・白井晃、出演・内野聖陽、saraのコメントは次のページへ
鈴木アツト(脚本)
人間の本能的な営み「食」が、大量生産大量消費のために産業化していった20世紀前半。そこに経営者による従業員への搾取の構造を看破し、ブレヒトは「聖ヨハンナ」を書きました。ブレヒトの時代よりも社会システムが複雑化した現代において、「理想論」にどんな意味があるのか?それを問うていく作品になる気がしています。
白井晃さんからは、旧世代と新世代の対立をよりはっきりと打ち出してほしい、というオーダーがあり、内野聖陽さん演じる食肉業界のドンで資本主義の権化モーラーと、saraさん演じる活動家ヨハンナがどうぶつかっていくと面白いのか、頭を悩ませているところです。今、国際社会および地球環境は、劇的に「システム」を変えなければ破滅しかねないところに来ています。しかし、多くの人は極端な正論や徹底的な変革にはついていけません。そのジレンマを描くことがこの作品のポイントですし、演出家を刺激し、挑発するような戯曲に仕上げなければと思っています。
白井晃(演出)
ブレヒトの「聖ヨハンナ」は、100年前に書かれたにもかかわらず、経済格差が広がる現代社会においてますます重要なメッセージを持っています。こうした作品が再び必要とされている時代に、今回の上演があることに大きな意義を感じています。
内野聖陽さんが演じる経営者モーラーは、揺れ動く複雑なキャラクターです。内野さんの特別な存在感と深く繊細な演技力によって、モーラーの内面的葛藤や権力構造を効果的に描いていただけるものと確信しています。また、若手実力派のsaraさんには、彼女の力強さと情熱的な表現によって、社会の矛盾を指摘する現代の弱者の立場を際立たせてくれると期待しています。
さらに、鈴木アツトさんとの出会いは私にとって特別な意味があります。鈴木さんの独自の視点は、現代のジェンダーや世代間にある格差と、正義の根拠の不確かさを浮き彫りにし、ブレヒトの作品に新たな視点を加味します。この共同作業を通じて豊かな表現が生まれ、演劇に新しい力を与えることができることを願っています。
内野聖陽
原作を初めて読んだとき、シンプルな物語のなかに、深く鋭いメッセージを秘めた戯曲だと感じました。鈴木アツトさんがこの作品を現代に向けてどのように生まれ変わらせるのかを心待ちにしつつ、ブレヒトの叙事的演劇の哲理に楽しさを見いだし、モーラーという役を通して、新たに立ち上がる世界を自在に泳ぎ回りたいと決意を新たにしています。
また、演出の白井晃さんの、世の中と真摯に向き合い、生真面目に作品づくりをする稽古場が僕は好きなので、 久しぶりにご一緒できることに喜びを感じています。そしてsaraさんという若い才能をはじめ、大好きな俳優の皆さんと、初めて立つシアタートラムの濃密な空間でものづくりができることに、今から心が躍っています。
作り手の興奮と舞台に生まれる熱が、そのままお客様に届くような作品になることを期待しています。
sara
ブレヒト作品に参加させていただくのは、音楽劇『コーカサスの白墨の輪』に続き、二度目となります。はじめてご一緒させていただく演出の白井晃さん、脚本の鈴木アツトさん、そして内野聖陽さんをはじめとする素晴らしい座組の皆さまとともに、シアタートラムの濃密な空間で、再びブレヒト作品の激動の世界を生きられることがとても嬉しく、身も心も引き締まる思いでおります。信念と現実、相対するものの狭間で、ヨハンナという少女はどう生きるのか。抗う中で、ひとりの人間からどんなエネルギーが生まれるのか。そして、劇場という空間でどんな化学反応が起きるのか。作品の持つ大きな力に身を委ねながら、その旅路を体感していただけるように演じられたらと思います。