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Vol.79 新しいステージに入った世界のドローン[春原久徳のドローントレンドウォッチング]

DRONE

これから世界全体がドローン勃興の時代となり、各国がArdupilotベースにドローン開発に動くなか、日本のドローン産業にとっての活路を考える

今月の上旬に行われたJapan Drone2024で様々なドローン関係者と会う機会があり、色々な話をさせていただいた。中でも前回書いた「Vol.78 日本のドローン出荷台数」に関しては、多くの方から色々と参考になったという話も頂戴した。

https://www.drone.jp/column/2024052114164888450.html

その会話の中から、世界のドローン産業が、また、新しいステージに入ったことを感じさせる部分も多かった。

ドローンの産業ステージの推移

ドローンの産業ステージに関しては、3年前の2021年5月に以下のコラムを書いた。

https://www.drone.jp/column/2021051915151345494.html

詳しくはそのコラムを読んでいただくとして、以下のようなステージを経てきている。

Drone1.0(空撮用機体の競争)~2016年

DJI Phantom vs. Parrot Bebop、3DR SOLOが典型的な競争となっている時代で、Parrotのコンスーマー機の撤退や3DR SOLOの撤退によって、Drone1.0は終わり、圧倒的なDJIの勝利のフェーズとなった。

Drone2.0(ドローンソリューションの勃興)2017年~2020年

DJIの一強時代の中、DJIのSDKを使って、様々なドローンソリューションが出てきたのが、このフェーズだ。ドローン測量用のPix4D、Metashapeなどやリモートセンシング解析用のDrone Deployなど、工事進捗用のSiteScanなど多くのソリューションプロダクトが生まれてきており、ドローンの産業向けの活用が進み始めたフェーズであった。

Drone3.0(ドローンプラットフォームの争い)2021年~

DJIの屋外フィールドで働く人々に向けた1人1台戦略(Mavicフォーカスの戦略)が功を奏し、米国の警察や消防分野において70%近くにDJIのシェアが広がる中で米国内で懸念が広がった。

そのため米国国防総省がBlue sUASといったイニシアチブを推進し、Mavic対抗の製品を北米や欧州の機体メーカーに作らせる形となり、2020年9月には米国国防総省全体において、選択された5つの企業から小型のアメリカ製ドローンを各軍が購入できるようになったのだ。

その5つの企業は、Altavian、Parrot、Skydio、Teal、Vantage Roboticsであった。これにより、DJI Mavic相当の自国内機体開発製造に成功し、警察や消防を中心とした領域でのDJIの使用禁止という法案が実効性を帯び、当時のトランプ政権は、2020年末のDJIの禁輸リスト入りを推進することができたのだ。

そこからは、いわばDJIのプロプライエタリ vs. PX4やArduilotといったオープンソースコードのプラットフォーム争いに突入した。

https://www.drone.jp/column/2022012512043050275.html

ここまでが21年に書いたドローン産業のステージである。

新しいステージに入った世界のドローン産業

昨年ぐらいから兆候はあったが、明らかに世界のドローン産業は新しいステージに入った。そのきっかけはウクライナ戦争となる。 ウクライナ戦争は双方がドローンを本格的に使った戦争となった。

https://www.drone.jp/column/2022112514314859499.html

この状況の中で、日本も同様であるが、世界各国でのドローン開発、特に今まであまりドローンを作っていなかった国でも、ドローンの開発・製造が各国の軍事費が使われる中で本格化してきている。

https://www.drone.jp/column/2023042710001165724.html

また、この環境下の中、対中国ということが非常に強くなってきており、インドなどの国の中では中国機使用禁止の国も出てきており、北米のドローン展示会などでも「China Free」といった表示がされているものも出てきている。

そして、中国も「中国商務部は、輸出管理法、対外貿易法、関税法に基づき、2023年7月31日、ドローン及びその関連品目(エンジン等)を輸出許可対象とする旨発表」といったかたちでコントロールをし始めた。

具体的には以下の項目となっている。

目視範囲を越えて手動で操縦できるドローンは、従来の1時間以内から30分以内に輸出規制が適用されるようになった。ドローンの最大離陸重量は7kg(15.4ポンド)未満に制限されている。禁止されているその他の機能には、国際的に認証された民生用電力制限を超える無線機器、発射または錘を落下させる装置、ハイパースペクトル、マルチスペクトル、精密赤外線カメラ、高出力レーザー探知機などが含まれる

例えば、DJI Agrasや新しく出たDJI FlyCart 30なども明らかにこの輸出許可対象となっており、これは中国政府の意向によって、いつでも輸出禁止にすることが出来るということだ。 (私自身もJapan Drone2024で、このDJI FlyCart 30の凄さに感嘆したが、しかし、産業での本格利用を考えた場合には、入手やサポートリスクは小さくないので、きちんと検討していくことが重要だろう)

では、Drone4.0はどんなフェーズなのか?

世界全体でのドローン勃興の時代である。

例えば、現在特殊な環境下にはあるが、ウクライナでの昨年のドローン生産台数は20-30万台といわれており、今年は桁が変わり、300万台とも言われている。(前回のコラムで書いたように、日本の出荷台数は年間50000台で、その内38000台程度がDJIおよび海外機体だ)

ドローン製造の新興国は、ここ数年以内に日本の国内生産台数を軽く超えてくるだろう。

また、この世界全体でのドローン勃興の中で、大きく変化をしている内容がある。それはDJI(プロプライエタリ)とPX4/Ardupilot(オープンソース)の比率の変化だ。

これまで、日本の環境と同様で全体の中の7-8割がDJIのシェアであったが、恐らく現時点において、そのシェアが逆転し、オープンソースが7割程度になってきている。

例えば、ウクライナにしても、その多くはオープンソースのフライトコードを利用していると思われ、新興国もその大半がオープンソースのフライトコードを利用している。

しかも、オープンソース系のフライトコードの中でもPX4ではなく、Ardupilotを利用しているケースが多い。

なぜPX4でなく、Ardupilotなのか。それは、ドローン製造の新興国にとって、現在と同水準のドローンを開発・製造するのに近道だからだ。

必要な各部品を用意し、FC(フライトコントローラー)を搭載すれば、大きな開発なしに機体を製造することが出来る。しかも、Ardupilotであれば、その機体のチューニング等もAutoで行えるし、また、簡単な衝突回避なども自分達で開発する必要がない。

そういった簡単なものだけでなく、最近の対策として重要なGPS妨害といったものに対しても、一定のフェイルセーフ機能をArdupilotであれば搭載することが出来る。

ドローン製造の新興国の機体メーカーにとって、現在必要なレベルの機能を備えたドローンをスピーディに簡単に作ることができる。こういったスピード感でドローン新興国がすごい勢いで動いている。

前回のコラムにも書いたが、日本の機体メーカーは100万円x100000台=100億円くらいの年間売上をここ2-3年の目標に立てて進まないと、世界中のドローン機体メーカーのスピードに振り落とされるだろう。

こういった動きの中で、日本のドローン産業にとっての活路は何かといえば、安定性・安全性・セキュリティなどや、より高度な制御を目的としたユニットや部品をこういった世界中の機体メーカーに提供していくことだろう。

それはモーターやバッテリーなど各種主要部品に関しては、機体制御を担うArdupilotと連動するような「インテリジェント化」の動きであり、コンパニオンコンピューターでのアプリケーション(より高度な自律化や衝突回避や非GPS環境下での制御、通信制御など)、使いやすいGround Control Station、機体管理のアプリケーションやクラウドといったものなどまだ様々な余地はあるだろう。

ここ数年内で世界中のプラットフォームがArdupilotに固まっていくような流れの中で、機体メーカーだけでなく、各種部品メーカーやアプリケーションメーカー、サービスソリューションメーカーもきちんと世界の動きを捉えながら、各社の戦略を見直すことが必要だろう。

そして、恐らく、ここ何年かでその趨勢も決まってくる。そのスピード感についていけるかが、日本の各企業としての正念場であろう。

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