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TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー① 明美役・高橋李依

Febri

TOPICS2024.01.02 │ 20:00

TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー①


明美役・高橋李依

北海道最大の繁華街「すすきの」から5駅離れた「北24条」にたたずむ小さなスナックを舞台に、酸いも甘いも噛み分けたママ&チーママのタッグがクセの強いお客を相手に繰り広げる、一夜限りの夢芝居――人気ギャグマンガ『スナックバス江(以下、バス江)』が、奇跡のアニメ化。チーママ・明美役を演じる高橋李依に、作品のディープな魅力をたっぷり語ってもらった。

取材・文/前田 久

インタビュー_TOPICSスナックバス江声優高橋李依

スナックの第一印象は「おもてなし精神にあふれたところ」

――この作品に関わる前、スナックにはどんな印象を持っていましたか?
高橋 作品に出演することが決まってから、芦名みのる監督おすすめの、この作品の描写でも参考にされたというスナックに連れて行ってもらったんです。それがスナック初体験だったんですけど、ママさんたちのおもてなし精神がすごくて「スナックって、こんなに楽しい活気にあふれたところなんだ!」と感じて帰りました。でも、その印象のまま第1話のアフレコに行ったら「それはショーパブのノリだから!」と監督に言われて「え、じゃあ、何を私たちに見せたの!?」と(笑)。どうも、そのお店のとても盛り上がる時間帯に入店してしまったみたいなんです。

――たしかに、時間によって店の雰囲気も変わりますよね。
高橋 だから最初の印象は「おもてなし精神にあふれたところ」でした。そのあとで、ベテランのママさんがいるところも勉強させていただいたりして、だんだんと『バス江』につながるスナックのイメージが固まったかな、という感じです。

――原作はもともと知っていたのですか?
高橋 監督と別の作品でお仕事をしたあとに「『バス江』という作品が面白いんだ」と聞いていたので、最新巻までがっつりというわけではないんですけど、チェックはしていました。「面白いな~。監督、こういうギャグが好きなんだ~」と思っていたんですけど、まさかアニメ化するとは思いませんでした(笑)。

監督に言われてわかった明美と似ているところ

――明美という女性に対しては、どんな印象を持っていますか?
高橋 本当に物言いがまっすぐで、嘘をつかないというか、自分の気持ちに正直なんですよね。見ていてめちゃめちゃ気持ちいいです。見た目の印象はかわいらしいのに、直球の発言が出てくるギャップも面白いですね。だから演じるときも「本当はかわいい」というベースを維持しつつ、発言は忌憚(きたん)なく、ということを意識しています。

――自分に似ていると感じる部分はありますか?
高橋 最初は「私じゃ明美ちゃんのツッコミの強さには全然足りないだろう」と思っていたんです。でも。芦名監督から「高橋が飲みの席で話を終わらせようとするときの、あれだよ!」と言われて「あ、私の中にも、あったな」と(笑)。もちろん、明美ちゃんは話を終わらせようとするばかりじゃなく、食いつく話題にはがっつり食いつきますし、「私はこう思うわ」みたいに意見もはっきりと言う。そういう部分も含めて、対話のノリみたいなところは似ていたのかもなと思います。

――この作品は会話劇ですから、対話のノリが近いことは重要そうです。アフレコでは、皆さんの会話のテンポ感をやはり重視したのでしょうか?
高橋 そうなんですけど、原作を読んでいたときは、勢いのいいイメージだったんですよ。ハイテンションなギャグものだって。でも、スナックってテンションの高い場じゃないんですよね。初回のアフレコのテストで監督から「この作品はスナックなんだ!」と指導が入りまして。だから「テンポ感」を大事にするにしても、足し算で勢いを重ねていくよりは「引き算」のギャグなんですね。スナックとしての会話を成立させる「スナックギャグ」という新たなジャンルに挑戦している作品なんです。この感覚を共有できるよう、キャスト陣みんなで本当に頑張りました。

――リアルなスナックの雰囲気を、アニメの会話劇の中で見せていく。
高橋 そうです。キャストもそうですし、映像に関しても、スナックでお酒を作るときの所作などを監修の方に見ていただいているとうかがっています。きっと見終わったら、スナックに通いたくなっていると思います。

――テンポ感以外に、明美役として「らしさ」を表現するために気をつけていることはありますか?
高橋 いちばん大事なのは「ちゃんとお客さんと会話すること」ですね。目の前の相手の言葉をちゃんと聞くといいますか。言語化するのがとても難しいのですが……アニメには台本がありますよね? 台本にはセリフが書いてあって、そこで会話の流れはすでに完成している。だから自分が次に言うセリフはわかるわけですけど、それをちゃんと今、その場で、相手の言葉を受けてから生まれた言葉にしていくというか。相手のセリフを先読みしすぎないで演じることを心がけています。そうしないとたぶん「スナックギャグ」にならないんです。

次ページ「常識って何だろう?」と思わされる現場<!--nextpage-->

作品の常識をうっかり「現世」に持ち込まないように

――会話の相手は、レギュラーもゲストも濃いキャラクターだらけです。気になったり、好きなキャラクターはいますか?
高橋 現場の皆さんと話題に上るのは、やっぱり森田ですね。最初にご覧になったときは「気持ち悪い」という印象が前に出てきてしまうかもしれないですけど(笑)、意外と距離感がちゃんとしているんですよ。明美ちゃんがちゃんと断っているところもあるとはいえ。それでいて、ものすごく通ってくれるし、良客だよね……と。

――セリフは下品ですけど、強引な行動には出ないですもんね。
高橋 手を出さないところが、彼が「DT」 たる所以(ゆえん)なのかなとも思いますけど(笑)。彼に限らず、お店に来るどのお客さんも、クセはあっても基本いい人たちなんだと思います。悪い人、犯罪者とかは来ない……あ、覆面の強盗は来てましたね(笑)。

――でも、たしかに根は悪くない人たちですよね。常識はあるような、ないようなですけど……。
高橋 もう「常識って何だろう?」とすら思いますよ。この作品では、普通のことを言う人のほうが少ない。毎話数、台本の表紙にも、常識とは違う「名言」が書かれていたりするんです。この台本を毎週渡されたら、覚悟は固まりますね(笑)。現場内では、役者陣の感覚もこの作品にあわせて適応しているので、どれだけ危ない言葉を連呼しても平気になっていて。「会話として成立していれば、どんな言葉を言ってもいいですよね」みたいな。逆にアフレコスタジオで「ここの『〇〇〇〇』っていうセリフなんですけど~」みたいなやりとりを普通にしちゃうから、外でもそのノリを引きずらないように気をつけようね、という話はしていました。私たちにとっては台本の中の何気ないワンワードだけど、実際のところ、うかつに世間では言えない言葉が次々に出てくるので(笑)。明美ちゃんとして台本を読ませていただくことで手に入れた恥じらいのなさを、うっかり「現世」で披露しないように心がけています。

スタジオのノリが反映されているアフタートーク

――「とくにこれはインパクトがあった」というセリフやフレーズはありますか?
高橋 どれもこの場では口に出しづらいなぁ……(笑)。そういえば『バス江』のキャスト陣で作ったグループLINEがあるんですけど、そこに今日送られてきた写真があって。

――何の写真ですか?
高橋 サボテンの写真……(笑)。原作ファンなら、それだけでわかりますよね。インパクトのあったフレーズは、それです。

――ああ、なんだか聞いてしまってすみません……。しかしそんなエピソードも含め、とにかく現場のノリがすさまじそうですね。
高橋 「アフレコアフタートーク」という企画で、アフレコが終わった直後にMCをふたり立てて、その日の内容を振り返るトークを収録しているんです。そのとき、現場に残っている人たち全員が賑やかしで参加するんですけど……あの、これ、あくまで「愛のある物言い」ということで読んでいただきたいのですが……おじさんたちがマジでうるさい!!(笑)

――あはは。
高橋 トークを素直に回させてくれない!(笑) そんなアフタートークを聞いていただくと、今日お話ししたような現場のノリのよさがさらに伝わると思いますので、ぜひ本編とあわせて、そちらも楽しみにしていただけたらうれしいです!

高橋李依たかはしりえ 2月27日生まれ。埼玉県出身。81プロデュース所属。主な出演作に『この素晴らしい世界に祝福を!』(めぐみん役)、『魔法つかいプリキュア!』(朝日奈みらい/キュアミラクル役)、『ゆるキャン△』(斉藤恵那役)、『【推しの子】』(アイ役)など。リレーインタビュー第2回に続く作品情報

TVアニメ『スナックバス江』
2024年1月12日(金)よりTOKYO MX他にて放送開始!

©フォビドゥン澁川/集英社・「スナックバス江」常連一同

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