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【体験談】就学前は平均IQ…でも小4で家庭学習は限界に。WISC再受検の結果で「霧が晴れた」瞬間

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【体験談】就学前は平均IQ…でも小4で家庭学習は限界に。WISC再受検の結果で「霧が晴れた」瞬間

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

見慣れた景色が教えてくれた、息子と歩んだ「宝物」の時間

長男あー(ASD/自閉スペクトラム症)が小学4年生の頃、わが家の家庭学習の時間はまさに「地獄絵図」でした。出口の見えないコロナ禍の孤独、そして日々のストレス……。ある日の夕方、とうとう堪忍袋の緒が切れた私は衝動を抑えきれず、夫と子どもたちを残し家を飛び出しました。

家を飛び出す……といっても財布も持たずに近所に出ただけなので、ただただフラフラ見慣れた景色の中を歩くだけでした。でも、この景色が思い出させてくれたのです。

まだ小さかった長男あーと毎日お散歩した夕暮れの公園、「一つだけだよ」と言ってお菓子を選んだドラッグストア、絵本コーナーから動かなかった本屋さん。歩くのが大好きだったあーと、ひたすら階段を上り下りしたおもちゃ屋さん。

当時のあーは、手を繋いでいてもすぐどこかへ行く、気になることがあったら動かない、引き離そうとすれば道端で大泣き……。偏食や場所見知りもひどく、まったく思い通りにいかない子育てに追い詰められて、本当に本当に大変な毎日でした。

けれど、あーはこんなにも輝かしい思い出を私に残してくれた。

「子育てこそ、結果じゃなく過程が大切なのかもしれない」

溢れる思い出に、涙が止まりませんでした。

「お勉強のない世界に行く」――息子の言葉に気づかされた私の「型はめ」

胸いっぱいで帰宅すると、あーが晴れやかな顔で「ぼく、お父さんとはなしたんだ。ぼく、お勉強のない世界に行くよ」と言うのです。
え、何それ。ややずっこけましたが(お父さんも何よく分かんない結論で合意してんだよ)、そこで気づきました。

今まで、学校の勉強という「みんなと同じ」の典型に、あーを当てはめようと無理をさせすぎていたんだ、ということ。小さい頃に比べたら格段に成長した。でも、あーはあー。今のあー自身を見てあげなきゃだめだったんだ、と思い至ったのです。

入学時は「標準」だったからこそ、捨てられなかった「みんなと同じ」へのこだわり

あーに適切な学習環境を整えるため、私はあーのかかりつけの病院へ向かいました。WISC(ウィスク/ウェクスラー式知能検査の1つ)を改めて受けることにしたのです。

入学前に受けた検査では、あーのIQは102。各指標の数値に多少の凸凹はあったものの、全体IQの数値で見れば標準の範囲内でした。だからこそ私は「みんなと同じ」にこだわってしまったけれど、あれからずいぶん経って数値が変わっている可能性もある。それが今の彼に合ったアプローチを知るためのヒントになるかもしれないという期待を胸に、検査に臨みました。

あーは検査中も落ち着いていて、飽きることなく最後まで受けてくれました。それだけでも、彼の大きな成長を感じて胸が熱くなりました。

IQ78という結果。ショックの後に訪れたのは「霧が晴れたような安堵」

結果はIQ78。境界知能(いわゆるグレーゾーン)に当てはまる数値でした。

幼稚園の頃から20以上下がった事実に、親としては正直ショックな気持ちもありました。けれど同時に、霧が晴れたような安堵感もあったのです。「そうか、だから今まで言葉が届きにくかったり、どうしても取り払えない壁があるように感じたんだ」と、まさに膝を打つ思いでした。「勉強が苦手」なことの背景に、彼なりの特性や困難さがあったのだと理解できた時、私の中にストンと納得感が落ちてきました。

苦手を理解し、得意を伸ばす。親子が楽になる「カスタマイズ学習」

理由が分かれば、学校への打診も具体的になります。検査結果をもとに、私は特別支援学級の先生に相談し、今後のあーの学習の方針を以下のようにしていただきました。

算数: 概念的な理解は難しいから、まずは計算問題を強化して自信をつける。
国語: 文章の読み取りは厳しくても、得意な漢字を伸ばしていく。

苦手なことは少しずつ、得意そうなところを伸ばす。これぞ、わが子に合わせた「カスタマイズ学習」です。

子どもに無理をさせず、保護者もつらくない道を選ぶ。もし今、言葉に言い表せない学習の壁に親子で苦しんでいるのなら、知能検査という選択肢もありだと思います。数値に縛られるためではなく、今のわが子を理解し、お互いが安心して過ごすためのヒントとして。この経験が、迷える親子の一助になることを願っています。

※WISC(ウィスク)は、お子さんの知的発達の程度やバランスを把握するための知能検査です。実施可能な専門機関や資格者が限られており、知能検査が必要だと判断された場合に受検となります。検討される際は、地域の子育て支援センターや自治体の相談窓口、学校の先生、スクールカウンセラー、かかりつけ医などに相談してみましょう。

執筆/よいこ

知能検査の再検をきっかけに、お子さんの学習面での困難さが整理されたご経験を聞かせてくださり、ありがとうございます。
知能検査は、その時々の体調や意欲、環境条件などの影響を受け、数値が変動することは臨床でもしばしば経験します。特に5~6歳頃に実施するWISCは、適用年齢の下限に近いこともあり、発達の伸びや凸凹の現れ方によって数値が動きやすい側面もあります。再検の時期はケースバイケースですが、日常の様子と検査結果との間にギャップを感じるようになった場合、専門家の判断で再評価が提案されることがあります。

再検でIQが下がっていたという結果は、保護者として複雑な思いがあったことでしょう。一方で、「なぜうまくいかないのか」と追い詰められていた状況の背景が整理され、支援の方向性が具体化したことで、霧が晴れたように感じられたという点は大きな意味があります。数値はお子さんの価値を示すものでは決してありませんが、学習環境を調整するための有力な手がかりにはなります。

算数や国語の目標を絞り、得意を伸ばしながら自己効力感を育てる「カスタマイズ学習」は、合理的配慮の本質を体現しています。「みんなと同じ」から「その子に合った形」へと視点を転換できたことこそ、大きな転機だったのでしょう。検査はレッテル貼りのためではなく、親子がより楽に前へ進むための羅針盤になり得ることを示す体験談だと感じました。(監修:信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教 新美妙美先生)

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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