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カッパだけじゃない! 志木のユニーク昔話~哀しい話からガチの呪いまで~

さんたつ

志木駅に降りるとカッパに出迎えられる。市内には28のカッパ像があるらしい。 でもそこじゃない。カッパ以外の昔話を、探してみたいと思ったのだ。

「志木のカッパ以外の話を集めたいんです、あえて」と『散歩の達人』編集Y岡は言う。ならば図書館へ。
調べてみると出てくる出てくる。カッパがかすむほどに。しかも現在でも石仏や祠(ほこら)が残り、いざ行ってみるとお供えの水やお花があって、地元の人に大事にされていることがわかる。

地図を見ると、志木は荒川、新河岸川、柳瀬川と3本の川が流れていて、カッパが出るくらいだから水由来の話が多い。なにせ市役所が2本の川の合流地点に位置し、その北側の宗岡地区はかつて海だったという。

水への恐れ、疫病やたたりの忌避、狐への畏怖。治水も医学も進化し、暗闇にも光が差すようになった今でも、何かを恐れる心は残っている。

虛空蔵菩薩と八つ目うなぎ

水の記憶を残す眼病供養の菩薩像

「せせらぎの小径」という親水緑道の脇にある。

江戸は元禄のころ、この辺りには虛空蔵池という池があり、眼を患った娘が遊んでいるうちに池に落ちて死んでしまった。あの世で娘の眼病を治してほしいと祖父と父が建てたのが虚空蔵菩薩だ。眼病に御利益があるといわれ、治癒した人が御礼に生きたうなぎを池に放したところ、みな八つ目うなぎになったという。菩薩像より池自体に霊力があったのでは……。大正のころまでは池が残っていた。

●埼玉県志木市中宗岡4-1708

汗かき不動

不動像の汗に翻弄される人間たち

赤い鳥居に隣接して不動堂がある。敷地内には庚申塔も。

始まりは木像の不動明王が見つかったことだった。名主がお堂を建てて木像を納めたが、のちに盗まれてしまう。そこで名主の子孫は鉄製の不動明王をつくる。その後も代々名主の家は不動像を信心したが、像が汗をかくと悪いことが起きた。はじめは凶兆を知らせてくれると思ったが、むしろ不吉の相ではないか。そこで厨子をつくって封じ込めた。人間の手の平返しに遭う不動像が気の毒ではある。

●埼玉県志木市柏町3-4

西川地蔵堂

イボ取りの御礼の団子にこそ霊験が?

地蔵尊は背が高く、見上げるほどの大きさ。団子はなかった。

江戸中期、西川四郎左衛門によって造立。娘を幼くして亡くし、その供養に建てたと伝わる。延命長寿、無病息災、安産祈願などで信仰を集めたが、とくにイボ取りに効能があるとされた。無事にイボが取れた暁には、焼き団子を供える風習があったが、そのお供えをこっそり持ち帰って食べるとイボ以外の病も癒えるといわれていた。むしろ団子を食べておけば万事解決な気がしなくもない。

●埼玉県志木市本町3-2-28

高橋(たかばし)の鬼女

夜の水辺には魑魅魍魎が棲んでいる

現在の高橋。人も車も通行可。橋のたもとにはビバホーム。

ある朧月夜の冬の夜更け。小原左門という侍が栗毛の馬に乗って高橋を渡ろうとすると、若い女が橋のたもとに立ち、暗くて道がわからないと言う。左門が自分の後をついてくるよう言うと、橋を渡る素振りを見せた途端、馬の尻尾をわしづかみにして引き上げた。振り返るとそこには恐ろしい形相の鬼女が! 左門はひるまず太刀を引き抜いて斬りつけると、鬼女は川に落ちた。暗い水辺にご用心。

●埼玉県志木市柏町2-3

杉の木のたたり

無闇に木を切る人間は呪われる

杉の木があった大六天神社。現在は柿の木と松が生い茂っている。

今から300年ほど前、大六天神社の境内には杉の大木が15本ほど生えていた。神社を管理していた男2人が杉を切ってこづかい稼ぎをしようと、木こりと共に幹にノコギリを入れると、3人とも突如体が震えて苦しみ始める。のちに僧侶をはじめ、杉の木を切ろうとした者はことごとく凶事に見舞われた。御神木として、木を神聖視する風習は各地に残る。長く生きているものには神が宿るのだ。

●埼玉県志木市幸町2-11 大塚大六天神社

黒いアザがあるお地蔵さま

好奇心旺盛が仇となるドンマイご本尊

宝幢寺はカッパ伝説が残る寺。ご本尊は延命地蔵菩薩(秘仏)。

宝幢寺(ほうどうじ)のお地蔵さまの右頬には黒いアザがあるという。隣村にたぐいまれな美人が嫁いできたことを知ったお地蔵さまは、寺の者が留守のときにこっそり見に行った。すると彼女は家にひとり、お歯黒を染めている。戯れに手を出したところ、驚いた彼女はお歯黒がついた筆を持ったまま、お地蔵さまをひっぱたいた。お地蔵さまは寺に逃げ帰り、恥ずかしさのあまり閉じこもって、秘仏となった。

●埼玉県志木市柏町1-10-22 宝幢寺

白狐と村山稲荷

地区一帯の鎮守にもなった稲荷

村山稲荷へ続く道。現在は民家の敷地内にあるため立ち入り禁止。

江戸時代中期、村山家の当主助右衛門が畑仕事をしていると、突然、真っ白な狐が背中に飛び乗った。助右衛門は驚いたが、白狐は慌てることもなく悠々と草むらに消えていった。白狐を見たのも初めてで、体に乗られたのはなんの予兆なのか。町民とも相談し、京都の伏見稲荷に分霊を願い出るも断られ続け、数度目にしてようやく願いを果たす。稲荷の祠を大きくつくり直して、お迎えした。

●埼玉県志木市本町

猫の大宴会

夜更けに開催される猫宴会、ドレスコードは手ぬぐい

長勝院は鎌倉時代創建の寺院。現在は桜の木(旗桜)のみが残る。

明治時代の中頃、長勝院の周辺の家で干していた手ぬぐいがなくなる事件が相次いだ。ある夜、男が隣村からの帰りに、長勝院裏手の柳瀬川の浅瀬を渡って岸に着くと、にぎやかな物音がする。見ると、手ぬぐいをかぶった猫が大勢集まって宴会をしている。中には見覚えのある手ぬぐいも。猫の間で手ぬぐいが流行っていたのか、宴会時の盛装だったのか。いつか見てみたいし、できれば参加したい。

●埼玉県志木市柏町3-11-13 長勝院跡

菖蒲沼の三面六臂の馬頭観音

どこか彼岸を思わせる茫漠とした光景

夏草の勢いで見えないが、石仏が8基あり、そのなかの1基。

本来、馬頭観音は畜生道に落ちた人間の救済のためにつくられたが、のちに牛や馬の守護神として、供養するためのものに変わってきた。この菖蒲沼の馬頭観音は、宗岡村の念仏講(在家信者が念仏を唱える会合)の本尊として1683年に建立された。3つの顔と6本の手の姿で、市の指定文化財になっている。近くに荒川が流れ、地名からも以前は湿地帯であったことがうかがえる。

●埼玉県志木市宗岡6133-1

三ツ子稲荷

徳を積んだ夫婦の子孫が稲荷を守る

長太郎の子孫である角長商店は健在。駐車場の脇にお稲荷さんがある。

江戸時代末期、商人の長太郎は板橋に仕入れに行った帰り、峠の付近で黒いものを見つけた。それは大きな狐で、苦しそうに息をして弱っていたため、家に連れ帰る。翌朝になると3匹の子狐を産んでいたものの、産後の肥立ちも悪く子狐は弱る一方で、親子ともども亡くなってしまう。長太郎夫婦は気の毒に思って、自宅の畑の隅に塚をつくって葬り、のちにお稲荷さんの祠を建てて祀った。

●埼玉県志木市本町3-3-28

文=屋敷直子 イラスト=オギリマサホ 撮影=『散歩の達人』編集部
『散歩の達人』2023年10月号より

参考=『埼玉の伝説を歩く 志木・朝霞・新座・和光編』/神山健吉著/さきたま出版会 『志木の伝説』・『志木の伝説2』/志木市教育委員会 『埼玉県の民話と伝説(入間編)』/栗原仲道編/有峰書店

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