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【中森明菜 Best Performance on NHK】表現者としての大きな転換点になった2曲とは?

Re:minder

1985年10月09日 中森明菜のシングル「SOLITUDE」発売日

中森明菜 Best Performance on NHK
in November Vol.1(2025/11/1配信)

4年間の中森明菜の進化とパフォーマンスが楽しめる6作品


1980年代に中森明菜が出演したNHK番組の映像がデジタルリマスターで楽しめる『中森明菜 Best Performance on NHK』。本年(2025年)4月からスタートした配信も、ついに11月に突入した。筆者も一通り視聴してきたが、同じ曲でも中森明菜の歌唱には細かな変化があり、常に進化し続けていたことが、映像から伝わってくる。また、ボーカル、振り付け、衣装、そして会場の演出を一体化させたトータルパフォーマンスを高画質で味わえるのも魅力。当時は気付かなかった彼女の表現力を再発見できる楽しみがある。11月1日からは、1982年から1985年までの11月に放送された次の6作品の配信が始まった。

▶︎ セカンド・ラブ
『レッツゴーヤング』1982/11/21放送

▶︎ 禁区
『第27回レコード祭歌謡大会』1983/11/1放送

▶︎ 1/2の神話~スローモーション
『レッツゴーヤング』1983/11/13放送

▶︎ 北ウイング
『レッツゴーヤング』1984/11/4放送

▶︎ セカンド・ラブ
『レッツゴーヤング』1984/11/4放送

▶︎ SOLITUDE
『レッツゴーヤング』1985/11/17放送

今回も従来と同じく、4年間のパフォーマンスと進化が時系列で楽しめる。1982年の「セカンド・ラブ」では少女のあどけなさが残るが、1983年の「禁区」では、力強いボーカルで堂々と歌う貫禄ある姿に一変。そして1984年の「北ウイング」と「セカンド・ラブ」、1985年の「SOLITUDE」では表現力が磨かれ、大人のアーティストへと変貌していく姿が魅力的だ。

一方で、複数の歌手が入れ替わりながら歌う『レッツゴーヤング』の企画では、ピンクの衣装で登場し「1/2の神話」と「スローモーション」のサビを歌う、楽しげな姿も見どころといえるだろう。今回はこれらの映像から「北ウイング」と「SOLITUDE」をピックアップしてみたい。この2曲が中森明菜の変化を語るうえで、大きな転換点になっていると考えたからだ。

自立した女性を歌う「北ウイング」


「北ウイング」を初めて聴いた時の感動は、41年経った今も忘れられない。ドラマチックな歌詞はもちろん、哀愁を帯びた浮遊感のあるサビのメロディーが耳に残り、一聴して虜になった。低音から高音までクリアに響くボーカルも素晴らしく、何度も聴き返した記憶がある。特に、サビ終わりの歌詞「♪不思議な力で」は、滑走路から飛行機が離陸して空の彼方へと飛び去るシーンと重なり、曲の効果を高めている。当時、中森明菜が所属していたワーナー・パイオニアのディレクター島田雄三氏は、間奏の駆け上がるようなストリングスを聴き、空港をテーマとした歌詞に変更。以降のキーコンセプトを “世界へ飛び立つ明菜” と定めたそうだ。

そんな「北ウイング」は、中森明菜にとって大きな転換点になった。それまでのシングルはバラード系とロック系の曲が交互にリリースされ、思春期の少女のナイーブさとツッパリの2面性を歌っていた。デビュー以来続いたその路線を脱し、自らの意思で海外に飛び立つような自立した大人の女性を歌う路線に変えたのが「北ウイング」であった。以降のシングルは、異国が舞台の曲や、強い意思を持つ女性を歌う曲が続き、「ミ・アモーレ」で『第27回日本レコード大賞』を受賞するのはいうまでもない。

表現者の道への転換点となった「SOLITUDE」


次の転換点となるシングルは、1985年秋にリリースされた「SOLITUDE」であろう。曲の舞台はニューヨークといわれるが、異国情緒よりも、孤独を選ぶ女性の心境を綴った歌詞と、強弱を抑えてソフトに歌う中森明菜のボーカルが印象に残る。終始ミディアムテンポで都会風のサウンドは斬新だが、シングル曲としてのインパクトに欠けるのは否めない。

しかし、そんな「SOLITUDE」を13枚目のシングルに選んだのは他ならぬ彼女自身であった。その決断からは、アイドルからアーティストへの道を進むなかで新たなタイプの曲に挑戦し、自らの表現力を高めようとする意思を感じる。そして、世間一般の流行にとらわれず、表現者の道を進む転換点になったのではないか。そのことは、「♪いつか馴れ合う 気安さがイヤなの」という歌詞の一節とも見事に呼応する。今回の映像でも、歌の世界に真剣に対峙する彼女と、馴れ合いより孤独を選ぶ歌詞の主人公とが重なり、作品の高みを追求する表現者を見ているようだ。

中森明菜の生き方と楽曲が重なる魅力



以上、「北ウイング」と「SOLITUDE」について述べてきたが、中森明菜がアイドルからアーティストに変化した転機は、10枚目のシングル「飾りじゃないのよ涙は」(1984年11月)からだという声も多い。しかし、その前段階として「北ウイング」(1984年1月)から始まった自立した女性を描いた異国路線があり、その後の「SOLITUDE」(1985年10月)から始まる女性の内面心理を追求した表現者としての路線が、彼女のアーティスト性を固めたように思えてならない。

世間に馴れ合わず、自分が進む道は自分で決めていく。そんな中森明菜の生き方と楽曲が重なって見えるのも、今回再発見した魅力である。成田空港の北ウイングから自らの意志で飛び立った中森明菜は、多様で先鋭的な曲に次々と挑戦し、表現者としての可能性に挑み続けたのだ。

<参考文献>
・オマージュ〈賛歌〉to 中森明菜 / 島田雄三・濱口英樹(シンコーミュージック 2023年)



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