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85年を超える歴史があるロイヤルホテルで䕃山社長が進めた宿泊業界のDX

さくマガ

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株式会社ロイヤルホテルとさくらインターネット株式会社は、両社の社員が互いの会社へ出向する人材交流を、2021年7月より開始しました。
この人材交流で、さくらインターネットはロイヤルホテルのホスピタリティを学び、これまで以上にお客さまのニーズに合うサービス創出を目指します。ロイヤルホテルはさくらインターネットのITスキルを学ぶことで、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進します。
創業85年を超える、歴史あるロイヤルホテルがDXに取り組む理由とは――
株式会社ロイヤルホテル䕃山社長が、DXについて語ってくれました。

䕃山 秀一(かげやま しゅういち)さん プロフィール
1956年大阪府生まれ。神戸大学を卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。2015年に副会長に就任。2015年から2017年まで関西経済同友会代表幹事を務める。2017年、株式会社ロイヤルホテルの代表取締役に就任。

ロイヤルホテルにIT導入やDXが必要だと思った背景

ロイヤルホテルは、11のグループホテルがあります。年商は400億円以上の会社です(2019年3月期 売上408億円)。
にも関わらず、私が着任したときにはITシステム人材の少なさに唖然としました。DXに対する取り組みができていないことに、着任して早々に気づいたわけです。
われわれは外資系のホテルと勝負をしようとしているわけではありませんが、このままでは国内においても企業として生き残っていけないという危機感を抱きました。これが、IT導入やDXが必要だと思った最初のきっかけです。

組織がDXを進めるうえで最も大事なこと

経営者がゴーサインを出して後追いしてあげないと、絶対に動かないと思います。
ですから私の場合は、着任してから作った中期経営計画3本柱の中に、ITシステム化(生産性の向上・効率化の推進)を据えました。
これは、ステークホルダーの人たちに対する経営のメッセージというより「約束」です。当社自身が後戻りしない決意を、表面に出しました。

DXをオープンイノベーションで進めるために気をつけること

私は関西経済同友会の代表を務めていたこともあり、ベンチャー企業の方たちと交流する機会がありました。
財界や行政が中心となっておこなっているベンチャー企業と大企業の橋渡しの場合、大企業サイドからの上から目線をとても感じます。これは前職の銀行員時代から思っていました。
大企業が自分たちの課題を、ベンチャー企業と一緒にやりたいんだと言っている割には、それをすべて打ち明けているわけではありません。
目先の課題解決には直接繋がらないかもしれないが、何かやっているうちにひょっとしたら一緒にできることがあるかもしれない。このようなアプローチの仕方をしないと、ベンチャーの方たちのいいところは引き出せないのだと思います。
こうしたことを踏まえたうえで、ベンチャーの方と大企業の方とが会う機会が増えれば、お互いにとって非常に良い刺激になるのではないでしょうか。

DXをベンチャー企業と進めたエピソード

鈴木商店さんとのエピソードがあります。
鈴木商店さんから「ベトナムでホテルの基幹システムを作ったので見てほしい」と連絡があり、訪問してくれました。当社のITシステム部長と一緒に1時間くらいお話を聞いてから、そのITシステム部長に「どう?」と聞いたのですが、「社長、申し訳ないけれどうちでは使えません」という答えでした。
「でも、せっかく来てくれたんだから何かないの?」と言ったら、「われわれのホテルには、部屋が1000室以上あります。チェックアウトの際、時間帯によって混雑して待ち時間が長くなってしまうので、部屋にいながらにして決済するシステムを作りたいです」とITシステム部長が言うので、鈴木商店さんに作ってもらえないか提案しました。
鈴木商店さんから「やらせてください」と返事をいただけたので、作っていただきました。システムは数か月でできましたが、最後に基幹システム「NEHOPS」に接続しなければなりません。ITシステム部長がNECに「こういうシステムを作ったので、システムに合うようにそちらで開発をしてほしい」と直談判し、結果、しっかりと連動できるようにしていただき、無事にシステムができました。
部屋にいながらにして決済できるシステムは便利なので、いろいろなホテルからの問い合わせもありました。
こうした新しいシステムを作って、それがNECのような大きなベンダーさんとマッチングできた事例はあまりないらしいので、何かの機会に広めていけるのかもしれないと思っています。

ロイヤルホテル ITシステム部の規模

これまでITシステム担当者の仕事は、基幹システムのメンテナンスが重要な仕事でした。
そこにシステムがわかる担当と、その人の指示のもとでメンテナンスをしている担当が2、3人しかいませんでした。これでは少なすぎます。
とにかく10人まで増やすことが、私が着任した1年目の指示です。他社からのヘッドハンティングや社内公募、若手を面接して興味がありそうな人材を投入していき、さらに金融機関から基幹システムのメンテナンスができる人材に入ってもらったりしながら、現在は11人体制に広げています。
それでも人手は足りません。CRMの導入など、マーケティングと連動したシステムをはじめているので、やればやるほど人材が足りないです。

DXに外部人材を求める理由

一番心配しているのは、この世界は日進月歩でいろいろな新しい企業や技術が出てくるわけです。その世界にどっぷり浸かっていないと、なかなか入ってこない情報があります。
もうひとつは、マーケティングとの相乗効果です。システム導入とマーケティングを、連動させる必要があります。それが社内のITシステム部だけでは、限界があるわけです。
ITシステム部は、より使いやすいシステムを入れたがりますが、入れた後にどんなことをしたいかというのはマーケティングの世界になってきます。
そうしたところは、外部の方の意見を積極的に聞かないと、間違ったシステムを入れてしまう可能性があります。
システムを入れる際に、そのシステムで何をするのかまで考えたシステムになっているか。これを考えたときに、うちのITシステム部長は「これがベストなのか不安なので、相談できるような人がほしい」と常々言っています。

DXを進めるために持っておく組織や人材の考え方

普通の企業に、ITのいわゆるシステム人材が入ったときに「サラリーマン」になってしまうわけです。これまでは、ある程度自由に動けていたのに、しっかりとしたルールの中でやらなければならないと、馴染めない人も過去にはいたようです。
われわれのホテルでは、内部事務業務をしている人は、月に1-2回、宴会サービスを手伝う業務があります。それが社内ルールになっているので、中途採用のITシステム人材の方にそれをさせようとしていた時期がありました。
「そんなこと、できないだろう」と思うわけです。もちろん、社内ルールは大切ですが、人の特性を最大限活かすために、受け入れ側の体制をしっかりと作る必要があります。

さいごに

われわれのホテルは、85年を超える歴史があります。
その分だけお客さまからの信頼感や安定感は比較的優位に立てていますが、新しいものを取り入れることに対しては慎重です。そこを変えていくのは、経営サイドです。
今回、さくらインターネットさんと人材交流をいたしました。われわれのような企業がDXを進めるうえで、かなり有益なトライアルになると期待しています。

執筆

川崎 博則
1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子
さくらインターネット社員。1児の母。主に「さくらのユーザ通信」(メルマガ)を担当しつつ、さくマガの記事執筆や編集に関わっている。

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