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「もし数十秒遅れていたら…」――語り継がれる長岡空襲の記憶(新潟県長岡市)

にいがた経済新聞

「あのとき、あと数十秒あの小屋に留まっていたら、私はここにはいませんでした」。1945年8月1日の長岡空襲を8歳で体験した野本九萬雄(のもと・くまお)さんは、静かにそう語った。

当時、空襲警報が鳴った瞬間、野本さんの一家5人は、避難場所として事前に決めていた平潟神社へと急いだ。だが、神社はすでに避難者であふれ、防空壕にも入れなかったという。やむなく柳原方面へと進路を変更し、火の粉が降るなか、防空頭巾を防火用水に浸してかぶりながら、長生橋を目指した。

しかし橋は通行止めとなっており、家族は左近の土手にあった農家の作業小屋に身を寄せた。食料が乏しい中、小屋にあったジャガイモを生でかじり、飢えをしのいだという。やがて空襲の音が止み、安全を確認して外に出た直後、小屋は直撃弾を受けて炎に包まれた。

自身の戦争体験について語る野本九萬雄さん

終戦から80年となる2025年7月13日、新潟県長岡市城内町にある長岡戦災資料館では今年度2回目となる「長岡空襲の体験を聞く会」が開かれた。市内からは40人以上が参加し、戦争体験者の証言に、静かに耳を傾けた。登壇したのは野本さんのほか、当時7歳だった武笠和子(たけがさ・かずこ)さん。武笠さんによれば、「多くの家庭が防空壕を作ったが、実際には逃げることを優先し、ほとんど使われなかった」という。

主に終戦後の学校生活について語った武笠和子さん

体験談に続いては、長岡市内で紙芝居塾を主宰する今井和江さんによる、紙芝居『思い出の木』(原作・高橋直則)の上演が行われた。作品は戦後すぐに描かれたもので、空襲の夜とその後の暮らしを当時の色調で再現している。

会場には10代の参加者も多くみられた。長岡市立南中学校に通う2年生の大塚凌久(りく)さん(14歳)は「調べるより、実際に話を聞くと戦争の悲惨さがよくわかる。大人の言うことに従うだけだった戦時中の教育には驚いた」と語った。

大塚凌久さんは、戦時中と現代の教育の違いに驚きを隠せない

また、歴史が好きで、今回初めて母親と参加した池田凜之介さん(9歳)は、「戦争の苦しみがよくわかった」と話していた。

直接戦争を体験した語り部の存在が年々希少となる今、若い世代に平和の尊さを静かに、しかし力強く問いかける、誠に意義深い催しとなった。

最年少で話を聴いていた池田凜之介さんは、歴史が好きだという

会場には、体験者の話に真剣に耳を傾ける参加者の姿があった

(文・写真 湯本泰隆)

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