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未曽有の新作は、どんな熱狂に包まれるだろうか K-BALLET TOKYO Spring Tour 2026『パリの炎』公開リハーサルをレポート 

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熊川哲也 K-BALLET TOKYO Spring Tour 2026『パリの炎』公開リハーサルより

2026年5月23日(土)より、東京・Bunkamuraオーチャードホール、大阪・フェスティバルホールにて、K-BALLET TOKYO Spring Tour 2026 『パリの炎』が上演される。この度、公開リハーサルが行われ、その模様をレポートする。
Kバレエの最新作は18世紀フランス革命を描いたロシア(ソ連)・バレエの名作『パリの炎』。新芸術監督・宮尾俊太郎が総演出・再振付を手掛ける初の全幕プロダクションとなる。新しい芸術監督体制になってからの上演は既に『ドン・キホーテ』と『ロミオとジュリエット』が高い評価を得ており、宮尾は熊川哲也の後継者という責任重大な任務を全身全霊でつとめている。小石川のスタジオでの公開リハーサルでは、宮尾による抜粋シーンの説明があり、原典版にはないパリの庶民が蜂起して革命のエネルギーを爆発させる場面からはじまった。

Act1 Scene1「決起の踊り」

ダンサーは斧や農具や鉄砲を持って生命力に溢れるダンスを展開する。ヒロインのジャンヌを踊る若きプリンシパル岩井優花のワイルドなステップと氷上で回転しているかのような凄い速さのピケターンがつむじ風のような鋭さだった。恋人フィリップはカンパニーの主要作品で重要な役を踊ってきたプリンシパルの山本雅也、ナポレオンは『ロミオとジュリエット』のベンヴォーリオや『眠れる森の美女』のブルーバードで頭角を表してきた山田博貴で、このナポレオン役も新たに登場するキャラクターだが、はじけるような回転やジャンプ、鋭いステップなど、見るべきものが非常に多い。山田は凄いスピードでセンターに入ってきている感がある。ジェローム役の石橋奨也も革命の戦士の雄々しさに溢れ、山本雅也も以前より格段にワイルドさを増しているだけに、山本・山田・石橋の3人が揃うと、かつてないほどパワフルでマスキュリンな踊りが可能になる。リハーサルの床も思い切り足踏みで鳴らして、『白鳥の湖』のようなクラシック作品とは全く異なる「殺気」のようなものさえあった。男女8組のペアによる高いリフトのダンスは高度な技術を誇るKバレエならではの見どころで、ダンサー全員が全身全霊で取り組んでいた。

撮影:堀貴文

Kバレエ 公式インスタグラムより 


Act1 Scene2 貴族の踊り~マリー・アントワネットとルイ16世のアダージオ

チュイルリー宮殿の宮廷シーンでは、一転してバロックの雅やかな音楽に合わせて、おっとりとしたムードの中、男女がダンスの稽古をしている。先日の『ロミオとジュリエット』で誇り高い婚約者パリスを演じたソリストの田中大智が貴族を演じ、ユーモラスな表情も見せ、蜂起する平民たちのキャラクター・ダンスとは正反対の宮廷ダンスを、雅な男女たちは風流に踊る。全身からオーラを放つ美しいマリー・アントワネットをプリマ日髙世菜が、ルイ16世をプリンシパルに昇格したばかりの栗山廉と踊るアダージオは、大きな花が咲いたよう。この日の公開稽古ではグラン・パ・ド・ドゥの中の優美なアダージオのみが踊られた。

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文


Act2 Scene1 通し

この場面は空間全体が炎と化したような熱気に溢れる群舞で、パリの広場でマルセイユ義勇軍を迎えたパリ義勇軍が熱狂的な踊りを繰り広げる。床を踏みしめるステップの音はもうひとつの音楽のようでもあり、女性ダンサーもキャラクターシューズでダイナミックなバスクの踊りを踊る。大久保沙耶のオランプとナポレオン山田博貴の踊りも、熱狂の中にいる個人の愛や生命の力を強く感じさせる。

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文


Act2 Scene2 ジェロームとアデリーヌの悲劇のパ・ド・ドゥ

貴族の父を庇い、革命軍の戦士ジェローム(石橋奨也)の愛を失いたくないアデリーヌ(島村彩)の精神は次第に壊れていく。アデリーヌの狂気の表現は苛烈で、稽古場で見るとそのリアルさに心が粉々になる心地がする。父の処刑に耐えられず止めようとするアデリーヌと、素性がばれて革命軍に処刑されてしまう彼女を最後まで庇おうとするジェロームの演技が振り切れていた。

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文

撮影:堀貴文


Act2 Scene5 ポルガル侯爵の処刑~ラスト

抜粋の稽古ではあったが、ラストへなだれ込む宮尾版の緻密な構成は、このカンパニーで長く活躍してきただけあって「物語を語るバレエを踊る」というカンパニーの本質を最大限に引き出していた。これからまだクリエーションは続き、ゲストも到着し、舞台美術や衣裳、照明も加わってくる。リハーサルだけでも、ダンサー全員が新しい局面に入り、一人一人が力を出し切って踊ることの喜びを表現していた。改めて、技術のレベルが驚異的に高く、その踊りからも表情からもモティベーションの高さが伝わってくる。この日のロベスピエールは名誉プリンシパルの遅沢佑介で、完璧な当たり役に見えたが、後日発表されたところによるとトリプルキャストで、遅沢のほかに宮尾芸術監督と、特別出演の熊川哲也総監督も登板が決まった。豪華ゲストと豪華ベテラン陣が揃い、これ以上ないほどの役者が揃ってバレエは幕を開ける。現実の世界が混沌の中にある2026年、未曽有の新作は、どんな熱狂に包まれるだろうか。リハーサルを見学したのは4月30日。稽古は続き、アップデイトが重ねられている。

取材・文=小田島久恵

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