【ポケモンGO】ナイアンティック社に「シティサファリ」や「リアルイベント」について色々聞いてみた / 8000文字ロングインタビュー
現地時間の2025年9月27日と28日、世界5都市で『ポケモンGO シティサファリ』が開催される。2023年のソウルから始まったシティサファリも、今回で合計16都市で開催されることと相成った。
それにしても「5都市同時開催」とは普通にやりすぎでは? そんな疑問も含めつつ、ナイアンティックのリアルイベント担当者に話を聞くことができたのでご覧いただきたい。
・あらまし
それまでは会場型のイベントだった「サファリゾーン」から派生して、街を舞台にした「シティサファリ」が誕生したのは2023年のこと。同年はソウル・バルセロナ・メキシコシティの3カ所でシティサファリが開催された。
翌年も台南やジャカルタでシティサファリが開催されつつ、初めて「同日開催」があったのは2024年12月の香港とサンパウロ。そして今年3月にはミラノ・ムンバイ・シンガポール・サンティアゴの4カ所でシティサファリが同時開催されている。
そんな経緯もあり「同時開催」については薄々わかっちゃいたが、まさか5カ所とは……! 2025年9月27日と28日にシティサファリを控えているのは、以下の5都市である。
アムステルダム(オランダ)
バンコク(タイ)
カンクン(メキシコ)
バレンシア(スペイン)
バンクーバー(カナダ)
さて、今回も話を聞かせてくれたのはアジア地域のリアルイベント担当者・ナツキさんである。以前、GOフェス大阪で話を伺った際は「今後のイベントもご期待ください。フフフ」と言っていたが、さすがに5カ所はやりすぎじゃないですかーーー!
・5都市になった経緯
──ナツキさん、シティサファリも息の長いイベントになってきました。その中で前回は4カ所、今回は5カ所になった経緯からお伺いしてよろしいですか?
ナツキさん「はい、まずリアルイベントチームとしては、リアルイベントを多くの人にお届けしたい、リアルイベントを多くの場所で開催したいという気持ちは常に持ち合わせています」
──はい。
ナツキさん「開催都市との調整もそうですし、気候等もそうですが、毎回複数の都市で開催できるとは限りません。ただ今回は諸々の調整が上手くいって5都市で開催できることになった、という感じですね」
──複数都市開催ありきではないんですね。
ナツキさん「はい。我々としてはなるべく多くのみなさんに楽しんで欲しいので、複数の都市で開催したい想いはあるんですが、相手方がいることですし。今後、今回より少なくなる回もあると思います」
──ちなみに同日開催にはこだわっているんですか?
ナツキさん「はい、それはこだわっています。トレーナーのみなさんに同じスペックかつ同じタイミングでゲームをご体験いただけるといいな、と考えています」
・満を持して……バンコク
──わかりました。では今回のシティサファリについてです。ヨーロッパは2か所ですが、それ以外は世界各地に散らばっていますね。
ナツキさん「そうですね、これは意図的に散らばせたつもりです」
──ふむふむ。では1カ所ずつ見て行きましょう。まずバンコクですが、タイでポケモンGOのイベントが開催されるのは初めてですね。
ナツキさん「そうですね。いわゆるリアルイベントは初めてですね。ただ実は小規模なイベントは何回か開催したことがあるんです」
──あ、そうなんですか?
ナツキさん「ブースを立ててステッカーを配る程度のイベントだったんですが、そういう試みはバンコクに限らず複数の都市で実施したことがあって、我々はマーケティングアクティビティと呼んでいます」
──なるほど。韓国も最初はショッピングモールのイベントから始まり、徐々に格上げされました。それと同じコースなんですね。
ナツキさん「よくご存じで。シティサファリ級のリアルイベントだと、その都市に熱心なコミュニティがあるかが重要です。バンコクはその点で申し分ないと判断しました」
──ほうほう。東南アジアではシンガポールに次いで2カ所目の開催ですね。タイの市場というか、トレーナーの熱量的にはいかがですか?
ナツキさん「熱いと思います。実はかねてからバンコクは、リアルイベントを開催できないかいつも候補に挙がる都市でした」
──そうなんですね。
ナツキさん「ただGOフェストやGOツアーだと大きな公園が必要だったり、交通の利便性だったり、ネットワークの環境だったり、まだちょっとハードルが高い都市かなという印象です」
──ふむふむ。
ナツキさん「その点、シティサファリならバンコクは観光名所も多いですし、旅行がてらポケモンGOをプレイしていただくのには相性がいい都市ではないかなと。バンコクに関しては満を持して、という感覚です」
──満を持して! なるほど、5カ所を見ると「日本のトレーナーはバンコクへどうぞ!」というメッセージかと思っています。韓国や台湾と比較すると遠いですが、それでも日本から行きやすい都市ではありますよね。
ナツキさん「そうですね。日本だけではなく韓国や台湾からもアクセスが良いので、そのあたりは考慮したつもりです」
・ゴッホコラボもあったアムステルダム
──わかりました。では2カ所目のアムステルダムに行きましょう。アムステルダムもポケモンGOのイベントが開催されるのは初ですね。
ナツキさん「初です。これまでイギリスやドイツでGOフェストを開催してきましたが、やはりオランダなりその他のヨーロッパの地域から参加される方も多かったんですね」
──はい。
ナツキさん「彼らから “自分たちの国でもイベントを開催して欲しい” というご要望はいただいていました。ただGOフェスト級となると、周りの国からのアクセス等でパリやロンドンなどの大都市になってしまう傾向がありまして……」
──シティサファリは収まりが良かったと?
ナツキさん「そういうことですね。アムステルダムは観光地も多いですし、バンコク同様シティサファリとの相性がいいかなと考えています」
──アムステルダムに関しては昨年、ポケモン社がゴッホ美術館とピカチュウのイベントを開催していましたよね。なのでポケモン的な土壌はある国なのかと考えていました。
ナツキさん「そうなんです。日本と比較してオランダはとてもポケモンGOが盛んな国とまでは言いませんが、熱心なコミュニティもありますし、少しずつ育ってきている国ではあります」
・重要エリア、スペイン
──なるほど。で、お次はバレンシアですか。スペインはやたらとイベントが多いですね。
ナツキさん「はい、スペインは我々が頑張りたい地域の1つで、そういった流れもあって開催する運びとなりました」
──以前、マドリードでヨーロッパのリアルイベント担当の方にインタビューさせていただいた際「スペイン語圏でイベントを開催することが大切だと思っている」と仰っていました。
ナツキさん「当然それもあります。スペインは熱いトレーナーが多いというのも1つですし、秋のタイミングだとスペインはフランスやイギリスからの観光地として選ばれやすい地域なので、そのあたりを総合的に判断しました」
・カナダでは2度目、バンクーバー
──なるほど。お次にバンクーバーですが、これはアメリカ在住の方もターゲットにしていると考えていいでしょうか? アメリカ在住のフレンドが「頑なにアメリカでシティサファリがない!」と嘆いていました。
ナツキさん「まさに仰る通りです。決定しているワケではないんですが、例年アメリカではGOフェストもGOツアーも開催されているので、そのあたりのバランスは考えています」
──なるほど。
ナツキさん「ただ、そのGOフェストやGOツアーの会場で “アメリカでもシティサファリを開催して欲しい” といったリクエストも非常に多くいただいていたんですね」
──熱量すごい。
ナツキさん「なので我々としても、アメリカからアクセスが良い地域でイベントを開催したいと考えていました」
──ほうほう。
ナツキさん「また明言はできないんですが、アメリカ国内でもシティサファリを開催したい意向は強くあります。そのあたりはご期待ください、ということで(笑)」
──わかりました。カナダでは2019年にモントリオールでサファリゾーンが開催されました。今回はカナダで2度目のイベントですね。
ナツキさん「そこからかなり空いてしまったんですが、リアルイベントも精度が上がってきていると思うので、現地の方にはぜひお楽しみいただきたいですね」
・南米も頑張りたいエリア
──OKです。最後にカンクンは世界有数のリゾート地ですし、こちらもアメリカのトレーナー向きなんですかね?
ナツキさん「それは1つあります。ただメキシコ含めて南アメリカはポケモンGOとして頑張っていきたい市場の1つとして捉えているんです」
──あー、さりげなくイベント多いですもんね。メキシコシティもそうですし、チリのサンティアゴもそうでした。
ナツキさん「はい。バンコクのように南米でもマーケティングアクティビティは実施しています。その過程で徐々にコミュニティもできてきている段階です」
──ほうほう。スペインも南米も頑張りたいエリアなんですね。
ナツキさん「ですね。ただGOフェスト級の大型イベントを開催するにはまだ早いのかなと。安全性を担保する必要もありますし、こちらも収まりの良さでシティサファリが開催されることになりました」
──そうなんですね。
ナツキさん「ちなみにサンティアゴも同じ意図で開催しました。南アメリカのリアルイベントをもう少し増やしたい、とはいえまだGOフェスト級の大型イベントを開催するのはちょっと早いという感じです」
──ということは、御社としては将来的に南アメリカでGOフェスを開催することも考えているんですか? GOフェスにはアメリカ・ヨーロッパ・日本の3カ所開催という暗黙の了解がありますが。
ナツキさん「将来的な可能性はゼロではないです。コミュニティが育ってきて、熱い声が多く届いて、後は交通の利便性や気候などの条件が整えば、開催することもあり得るかと思います」
──なるほど。他の方にインタビューさせていただいてもそうなんですが、意外と御社はその辺りを柔軟に捉えていますよね。
ナツキさん「おそらく私以外のリアルイベント担当者も同じことを言うと思うんですが、型が決まっているように見えつつ新しい可能性も常に探っています。それは完全にトレーナーさんのために、という視点でです」
──ふむふむ。
ナツキさん「なので機が熟したり条件が整えば、他の地域にも大型イベントをお届けしたいという気持ちは常に持ち合わせています」
──確かにGOフェスも3カ所じゃなきゃ絶対にダメだという内容ではないですもんね。以前、ロスでナツキさんにお会いした時「GOツアーがアメリカだけである必要はないですよね」と話をしたら、翌年は台湾でも開催されましたし。
ナツキさん「おっしゃる通りです。台湾でGOツアーが開催されたことで、楽しんでいただけたトレーナーさんが多ければ何よりです。本当に決まったレギュレーションは特に無いんですよ」
・初の試み
──わかりました。ではちょっとざっくりになるんですが、今回のシティサファリの見所はどんなところでしょうか?
ナツキさん「はい、公式サイトには載らないことでぜひお伝えしたいことがあったんですが、よろしいですか?」
──ぜひぜひお願いします。
ナツキさん「今回は世界5都市で開催されますが、出現するポケモンを工夫できないかということで、各国の担当者からその地域の文化や歴史に合いそうなポケモンをピックアップしてもらっています」
──へぇ~。
ナツキさん「各地域から3~5種類のポケモンを挙げてもらって、それをブレンドしたものが公式サイトにあるポケモンになっています」
──面白いですね。
ナツキさん「よく見ていただくと出現するポケモンの系統がバラバラというか。もちろんシティサファリならではのポケモンの基準は守りつつ、今回は各地域からポケモンを選出してもらいました」
──なるほど~。
ナツキさん「今後5カ所開催のようなお約束はできないんですが、毎回各地域の意向やリクエストを反映することで、シティサファリの見え方も変わってきて面白いのではないかと思っています」
──じゃあ、例えばゴマゾウがバンコクのリクエストだったりするんですね?
ナツキさん「そうなんです。わかりやすすぎてすみません(笑)」
──確かにそれを聞くと面白いかもしれませんね。ヒマナッツはアムステルダムなのかな?
ナツキさん「正解です!」
──まあ、それ以外はなかなかわからないんですが、そういう見方をすると確かに新鮮ですね。
ナツキさん「ちなみにアーケンはカンクンなんですが、それっぽくないですか? 他にもどのポケモンがどの地域からのリクエストなのか、ぜひ推理してください」
──ピックアップされるポケモンが開催地域よって変化するのは、いい試みですね。開催都市の組み合わせ次第で、色んな可能性がありそうです。
ナツキさん「作り手としても開催都市が決定してからポケモンが決まるので、ワクワク感はあります。それがトレーナーさんに伝わるといいですね」
──ピックアップの基準は我々にはわからないところなので、少なくともシティサファリはそうした基準があるということはとても新鮮です。
ナツキさん「ありがとうございます。シティサファリに関しては、しばらくこの方法を継続していきたいと考えています」
・シティサファリの頻度について
──で、ちょっと話を戻しますが、バンコクについてです。私はリアルイベントは格上げ制というか、ステップアップだと思っています。いきなりGOフェス、GOツアーって無いじゃないですか?
ナツキさん「はい、仰る通りです」
──今回バンコクが開催されることで、大型イベントを開催する挑戦権を得たな、と捉えていますが、そのあたりはいかがでしょうか?
ナツキさん「まずは今回のシティサファリの結果を見てからですが、将来的に大型イベントが開催される可能性もゼロではありません」
──実は開催都市について御社が仰っていることは意外とシンプルで「気候」「利便性」「大きなコミュニティがあるか?」ですよね。2月にGOツアーが開催されるとなると、バンコクと香港あたりも候補に入ってくるのかな、と。
ナツキさん「はい、特に大型イベントを選出する基準はさほど変わりません。次回の大型イベントの開催都市は……ご期待ください、ということで(笑)」
──ちなみにどうですか、シティサファリは年2~3回は開催したい感じですか?
ナツキさん「目標としては1クオーター(3カ月)に1回くらいの頻度で開催したい気持ちはありますね」
──おお、つまり年4回ですか!
ナツキさん「どうしてもGOフェストのシーズンは開催しづらいのはあるんですが、目標としてはそれくらい開催したいですね。ありがたいことにご希望も多くいただいていますので、それにお応えするには年4回できたら理想かなと」
──なるほど。ただGOフェスやGOツアー、ワイルドエリアもあることを思えば、現状でもシティサファリはかなりの頻度で開催されている印象です。
ナツキさん「そうですね、昨年からアクセルは踏めているのかなと思います」
・シティサファリにリクエスト
──ましてや4都市、5都市開催ですからね。あ、そうだ! 今日ぜひお伝えしたいことがあったんですが、よろしいでしょうか?
ナツキさん「はい、なんでしょう?」
──例えば昨年の香港がそうだったんですが、シティサファリ当日に通常のイベントを被せるのをやめてもらえませんか? 香港ではキョダイマックスラプラスが被ってたんですよね~。
ナツキさん「かしこまりました。それはチームに伝えておきます。リアルイベント担当者として “全部こなすのは忙しいと感じる人もいるだろうな” という肌感は確かにあります」
──そうなんですよ。特に遠征してるとそっちに集中したいんですよね。とはいえ、シティサファリ参加者がユーザーの数パーセントにしか過ぎないことも承知しています。
ナツキさん「難しいのが、例えば自治体さんから “チケットを購入していなくても参加できるイベントはないか?” 等のリクエストをいただいたり、シティサファリに参加されている方からも、他のイベントもやりたいといったお声があるんですよね……」
──なるほど。様々な意見があるんですね。ただ個人的には毎回「シティサファリに集中させてくれ!」と思っていますので……!!
ナツキさん「はい、それはチームにお伝えします」
・今後のリアルイベントの展望
──ありがとうございます。ではシティサファリについてはこのあたりにして、今後のリアルイベントの展望をお話しいただける範囲でお聞かせください。まず流れ的にはワイルドエリアが来そうですかね?
ナツキさん「それはご期待ください、ということで(笑)」
──去年ナツキさんにも申し上げましたが、福岡のワイルドエリアは決してゲーム的な満足度が高いイベントだったとは思っていません。ぜひそれを取り返していただけるよう期待しています。
ナツキさん「ありがとうございます。各方面から色々なお声は頂戴しております。GOフェストも回数を経て洗練されていっている側面もあると思いますので、もしワイルドエリアがあるなら進化した姿をお見せできるといいですね」
──ぜひ頑張ってください。で、昨年は12月にもシティサファリがありましたね。この短期間で今年も12月にシティサファリやります?
ナツキさん「それもご期待ください、ということにしていただけると(笑)」
──え! やるんですか!?
ナツキさん「仮に開催するとなると今から走ってないと間に合いませんからね。それも込みでご期待ください、ということで(笑)」
──うわー、やりそうな気配が漂ってますね~(笑)。その後のGOツアーだって、今から手を付けてないと間に合いませんよね?
ナツキさん「そうですね。明言はできないんですが、ご期待を裏切ることはないと思います」
──いやー、ナツキさんもそうですが、トレーナーも大忙しですね。では最後に日本のトレーナー向けなので、バンコクに絞ってメッセージをいただけますか?
ナツキさん「はい、バンコクは非常に魅力的な観光地ですし、例えば東南アジアデビューするにはピッタリな都市だと思います。旅行がてらバンコクにお越しいただけると嬉しいです」
──ふむふむ。
ナツキさん「またバンコクではポケモン社さんのイベント “Pokémon MEGA Festival 2025” も開催予定で、現地では街とポケモンの魅力の両方を味わっていただけると思います。ピカチュウも遊びに来てくれる予定ですよ」
──ほうほう。
ナツキさん「バンコクに限らずシティサファリはリアルイベントデビュー向きなイベントだと思いますので、ぜひみなさん遊びに来てください。よろしくお願いいたします」
──わかりました、ナツキさんありがとうございました!
・ヒィィイイ
ご覧のように超ボリューミーな内容であるが、シティサファリが複数都市で開催される経緯、開催都市が選出される基準等がおわかりになるのではないだろうか?
また今後の「ワイルドエリア」をはじめとするリアルイベントが開催される気配もビンビンする! トレーナー的には嬉しい悲鳴といったところだが、特にシティサファリはそれだけ要望が多いということなのだろう。
なお、ナツキさんの言うとおりバンコクは日本からのアクセスも良く、航空券やホテル代も意外と手頃な価格なので「シティサファリデビュー」及び「東南アジアデビュー」向きな都市である。
出現するポケモンがGOフェス級に激アツでないところが、逆に街の魅力に目を向けられるシティサファリの良さ。個人的にもシティサファリは満足度が高いので、機会があればぜひ参加してみて欲しい。
というわけで、シティサファリに関するロングインタビューをお届けした。最後にナツキさんが仰っていた言葉でこの記事を締めくくろう。「リアルイベントの頻度が下がることはありません……天変地異でも起きない限り」──。ヒィィィイイイ!(嬉しい悲鳴)。
参考リンク:ポケモンGO公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:©2025 Niantic, Inc. ©2025 Pokémon. ©2025 Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.
ScreenShot:『ポケモンGO』 (iOS)