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【対談】アザミ×長瀬有花、まさにモノラルタイプな二人が見据える先にあるもの

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長瀬有花 / アザミ

作詞作曲編曲とサウンドプロデュース全てを自身で手掛けるシンガー・アザミ。コンポーザーとしても他アーティストへの楽曲提供も多くマルチな活動を行う傍ら、積極的な対バンでライブにもこだわってきた。そんなアザミと今回対バンを繰り広げるのは、媒体によって自身の露出する形態・表現手法を使い分け、2次元(デジタル)と3次元(フィジカル)の両軸で活動する「だつりょく系アーティスト」を称する長瀬有花。言い得て妙、タイトルについたモノラルタイプを地で行く二人の見据える先にあるものを、本番が迫りつつある中で大いに語ってもらった。

ーーそもそもお二人の対バンのきっかけってなんだったんでしょうか

長瀬:チーム内で「いつか自分たちも対バンとかしたいね〜」と会話をしているときに、アザミさんの名前が真っ先に上がったことが1つのきっかけだったと思います。それからご縁があって、アザミさんチームの方と繋がりができて、そこからはトントン拍子で実施になった感じでした。

アザミ:私もよくチーム内で長瀬さんの話をしていたので、コンタクトをきっかけに意気投合しましたね。

長瀬有花 / アザミ

ーーそもそもなのですが、対バンの選定基準ってあったりするんですか?

アザミ:これと言った選定基準は定めてはいないんですが、今年ツーマンのツアーを2回やっているんですけど、1回目の相手はぼっちぼろまるさんで、バーチャル界隈での繋がりです。そして2回目のツーマンは、バーチャルは関係なく自分が昔から好きだったロックバンドの方々と対バンさせていただいて、ツアー毎にコンセプトを定めて行いましたね。

ーーツアー自体にコンセプトを設けて、対バン相手を定めているんですね

アザミ:そうですね。いろんな方に聞いていただきたいという気持ちが強いので、毎回違うコンセプトの対バンを交互にできたらいいなと思っています。

ーー長瀬さんはなにかありますか

長瀬:自分は対バンのライブ自体が少なくて、ツーマンライブをやるのは今年の8月に行ったSuchさんに続いて2回目なんですね。 理想ではあるんですけど、意外性みたいなものを考えつつ、お互いのファンの方が喜んでいただけるようなアーティスト同士の化学反応が起こるワクワク感のあるライブがしたいと思ってます。

ーーお互いのファンの方の満足度という意味では、対バンを発表した時はファンの方の反応は気になりましたか

アザミ:そうですね。今回対バンさせていただくことを発表した時に、喜んでる人がかなり多かったので、そう考えると、ファン層が被ってる部分がある人と対バンやった方が、イベントとしては成功しやすいかなと思ってます。でも、逆に全然知らないから聞いてみようみたいな反応も嬉しいので難しいですね。

長瀬有花 / アザミ

ーーお互いを知ったきっかけや印象って覚えていますか

長瀬:活動を続けていく中で、周りの人やスタッフさん含めて、アザミさんいいよねという話をよく聞いていました。実際に楽曲を聴いたら本当に格好良くて、ライブもSNSでちょこちょこ見させていただいていました。アザミさんは本格的にバンド音楽をやっていて、自分はバンドアレンジの曲も出したりはしているんですけど、最初は打ち込みがメインの曲を出していたので、感覚的には違う世界にいる方だなという印象を持っていたかもしれません。

アザミ:最初の印象は、楽曲が幅広くて、可愛らしい女性の感じというよりかは、トリッキーな歌を歌っているイメージでした。ちょっとカルチャーっぽいと言いますか。おしゃれでかっこいい印象もありつつ、生身でライブをやるという共通のスタイルだったので、参考にさせていただいた部分もありました。こんなやり方もあるんだって感心することが多かったですし、仲間ができたかもとも思いましたね(笑)。

ーー対バンが決まるまでの間でお二人は交流はあったんですか

アザミ:対バンが決まるか決まらないかぐらいの時に、長瀬さんのライブに招待していただいて、見に行かせていただく機会はありました。それでも偶然にイベントで会ったり、共演したことはありませんでした。なので、本当にしっかり交流をしたのは対バンが決まってからですね。

ーー対バンライブ「モノラルタイプ」について聞いていきたいのですが、そもそもタイトルになっている「モノラルタイプ」にはどういう意味が込められているんですか

アザミ:ステレオタイプの反対語の造語としてイメージしているんですが、実際のステレオタイプという言葉の語源とは少し離れているので、語感重視な側面が大きいです。ネット上のアーティストであり、リアルでも活動している共通点から、お互い固定概念に囚われない、自分だけの活動をしているなと感じたところからインスピレーションを受けて作りましたね。

アザミ

ーーなるほど。お二人ともライブは基本的にバンドで行っていると思うのですが、実際にバンドでライブをやる難しさって何かありますか

長瀬:音源とは違ってライブの時にしか出せないものをどれだけ出せるかをいつも意識しています。なので、リアルタイムでバンドメンバーと呼吸を合わせて、現場の空気を伺いながら、自分も表情を出していくというのが、バンドでしかできないことだなと思っていて、そこが難しくもあり、楽しくもあるなと思っています。あと、バンドメンバーの演奏が本当に素晴らしいので、自分の歌も負けないようについていくのにいつも苦戦しています。

アザミ:私は今までバンドのライブ以外をほとんど経験したことがないんですが、今年は特にライブの本数が多かったんですよ。自分のツーマンツアーもそうですし、サーキットのイベントも多くて。バンド自体も形式じゃなくてサポートを迎えたバンド編成って感じではあるんですけど、ライブを重ねるたびにブラッシュアップをしていくっていうのが大変ではありますし、楽しい部分でもありますね。

ーーワンマンとツーマンで準備だったり、やることって変わってくるんですか

アザミ:変わると思います。個人的にはセトリも変わりますし、対バン相手によって組み方も変わってきます。ワンマンライブはコアなお客さんが来ることが多いので、昔の曲やシングルリリースしていない曲をやったりすることが多いです。MCも対バンの時よりもしっかりやることが多いので、全体通して結構変わりますね。

ーー長瀬さんはワンマンとツーマンで変えてるところはありますか

長瀬:ワンマンは何をやっても許されると言いますか、ある程度は受け入れてくれるものだと思ってやっています。例えば、自分の曲って初見で聞いて乗りやすい曲と、全くわからないみたいな曲があると思っていて、ワンマンはそういう初見ではわからないような曲も詰め込んで見せていくみたいな感じでやってます。ツーマンライブでは、共演するアーティストさんのファンの方にちょっと刺さりそうな楽曲を選んだり、楽しみやすいものを選ぶようにしています。

長瀬有花

ーー長瀬さんは、先ほどほとんど対バンをあまり経験していないとおっしゃっていたので、アザミさんに対バンライブのすすめ的なことや、活動を見ていて何か聞きたいことってあったりしますか?

長瀬:踏んできた場数が全然違いますし、作詞作曲編曲全部やられてるし、本当にすごいと思っていて。 ライブのパフォーマンスもSNSであげられてるじゃないですか。ライブの見せ方が本当に素敵だなと思ってるんですが、何か意識されてることってあったりするんですか?

アザミ:実はあまりライブが得意じゃなくて......。(笑)

長瀬:そうなんですか!全くそういう風には見えないです!

アザミ:あまり性に合ってなくて。レコーディングや作曲って、トライアンドエラーが可能じゃないですか。より良いものを追求していく感じが私は性に合ってるなと思うんですよ。でもライブってリアルタイム性と言いますか、色々準備してきたのに、どんどん課題が増えて、終わらない感じがするんですよね。意識していることって言えば、ライブパフォーマンスは、できるだけ誠実に、平等にという思いでやってはいます。

ーー誠実に、平等にというのは具体的にはどういうことですか?

アザミ:何かを特別贔屓したりしたくないと言うか、演奏する楽曲もそうなんですけど、とにかくフラットな気持ちでやりたいんですよね。

長瀬:平等さって難しいですよね。

アザミ:お客さんが盛り上がる曲は、どうしても私自身も盛り上がってしまうんですよ。でも、私はライブで「声を上げて」とか「手を上げて」って言うのがあまり得意じゃなくて。ボー立ちで聞いてる人にも、最前で盛り上がってる人にも、1番好きな曲ってあると思うんですよ。その楽曲をできるだけ隅から隅まで完璧にやりたいなという気持ちがあるので、なるべくフラットな気持ちで向き合いたいんですよね。

ーー長瀬さんはライブで意識していることって何かありますか

長瀬:自分は、耳でも目でも楽しめるようなライブを意識しています。「本当に長瀬有花って存在したんだ」と言ってもらえることが多いんですが、歌だけじゃなくて、歌に合わせた見せ方も大事だと思っています。雰囲気だけじゃなくて、歌詞の意味も伝えられたらいいなというのは意識していて、そうなってくると所作を含めた表現力が大事なんじゃないかなって思うんですよね。

アザミ:それはライブを見て感じ取れましたね

長瀬:あと実は、やったことはないんですけど、ライブで客席に降りて歌うっていうパフォーマンスがすごく好きなんですよ。さっきの平等の話もそうですけど、ステージと客席の線引きは大事にしたいという気持ちもあるので自分はやらないんですが、常に降りたい気持ちを我慢しながら、歌ってます。

アザミ:長瀬さんが降りたらネットニュースになっちゃいますよ。(笑)

長瀬:でも、転がってみたいんですよ!絶対楽しいと思うんです。

アザミ:怪我しちゃうかもしれないからダメですよ。気持ちだけね、気持ちだけ。

長瀬:気持ちだけ転がります!

長瀬有花 / アザミ

ーー逆にアザミさんから長瀬さんに聞きたいことってあったりしますか?

アザミ:私は自分の曲を自分で作っているので、ある程度自分の範疇、引き出しの中にあるもので勝負をしている感覚なんですね。自分って1人しかいないのに、いろんな人の曲を歌いこなしているシンガーさんって本当にすごいと思っていて。どんな楽曲でも、長瀬さんという表情を出せているっていうのが羨ましいなと思うんですけど、楽曲に対する解釈だったり、何か意識していることってあったりするのかなって。

長瀬:曲をいただいた時に、歌詞を読み解くことは自分なりにするんですけど、そもそも作ってくださるクリエイターさんの長瀬に対する理解度がすごく深いので、そこまで自分の表情を出すのに困ったことがないんです。曲と歌詞を読んだときに、スッと入ってくると言いますか。

アザミ:自分のパーソナルに近い曲が多いって感じなんですね。

長瀬:そうですね。そこまで頑張って「理解するぞ!」みたいな気持ちにはなったことがないかもしれません。自分的には、いろんな人に曲を提供していて、歌い手側の雰囲気を出しつつも、曲を聞いたときにアザミさんらしさを出してるほうがすごいというか......!逆にどうやったらそんなことができるのかという気持ちです。

アザミ:楽曲提供と自分で曲を出すってゴールが違うと思うんですね。自分で曲を出す場合は、ゴールがリスナーさんなんですけど、楽曲提供って、 依頼してくださった方が「めっちゃイメージ通りです!」と言ってくれるまでがゴールだと思ってます。その中で、自我を出そうという気持ちは基本的になくて。私に依頼してくださる方は、私の曲を聞いて依頼される方が多いので、割と自由にやれることが多いんですけど、実際にはめちゃくちゃヒアリングして、制作することがほとんどですね。でもアザミ節があるねって言われるとすごく嬉しいです。

ーー個人的に聞きたいんですけど、アザミさんがもし長瀬さんに楽曲提供するならどんな曲にしたいですか?

アザミ:そうですね。長瀬さんってなんでも合いそうというか、なんでも歌いこなせると思うので逆に難しいんですけど、バチバチのバンドサウンドでもいいですし、逆にアコースティックな音に乗せるのも面白いかなと思います。日曜の昼間の番組っぽい感じというか。アコギトラックにウィスパーで乗せる感じなんかはリスナーの方は喜んでくれそうだなと思います。個人的にはレーザーがぎゅいんぎゅいんの中にウィスパーで歌ってもらうのをやってみたいですね。それこそシューゲイザーとか、ギャンギャンの音の中にも結構細い音が乗るじゃないですか。そういう透明感のある声なので、周りが騒がしい方が面白いかなと思います。

ーー長瀬さんはアザミさんに楽曲提供だったり、共演するとしたらどんなものがいいですか?

長瀬:自分は、「君より犬のがかわいいな」ってフレーズがめちゃくちゃ頭に残っていて、すごく好きなんですよ。そんな感じで、アザミさんならではのちょっとふわっとしてて、可愛い言葉を並べたような曲を聞いてみたいですし、歌ってみたいなと思います。自分が今までやってこなかったような音楽を一緒にやれたら嬉しいです。

君より犬のがかわいいな / アザミ

ーーお二人の対バンライブ「モノラルタイプ」について見どころなどありましたら聞きたいんですけど、それぞれ何かあったりしますか?

長瀬:個人的なことにはなってしまうんですけど、今回のライブを通して、長瀬はバンドもいけるぞ!というのを皆様に知ってもらいたいなと思っています。これまでは打ち込み音源が多いんですが、「バンドで聞いてもいいね」みたいな。ライブを通して新たな発見があるのが、長瀬の曲の魅力でもあると思うので、そういう側面を自分のリスナーの方に感じてもらって、アザミさんのファンの方にも「長瀬ってやつ、いいじゃん!」と思ってもらえるようなライブをしたいです。ちなみにアザミさんのファン層ってどういう人が多いんですか?

アザミ:そうですね......すごく細い......。(笑)

長瀬:細い......ですか?

アザミ:たまたまこの間熱心な前列の方に細身の人が多いなってなんとなく思って。それはどっちでもいいんですけど、女性のお客さんも熱心な方が多いと思います。基本的にはバンドや音楽が好きな人が多いかな。

長瀬:じゃあちょっと攻めても大丈夫......?

アザミ:全然よさそう。長瀬さんの曲は絶対刺さると思います。

長瀬:じゃあ攻めていきます!

プラネタリネア - 長瀬有花 (Official Live Video)

ーーアザミさん的見どころがあれば教えてください

アザミ:長瀬さんのライブを拝見して、柔らかい感じというか、柔和な感じもありつつ、曲は尖っているんだけど、すごく温かい感じのライブという印象が強いです。なので、自分もそういう雰囲気を踏襲しつつ、長瀬さんのファンの方にお気に召していただけるようなライブをしたいですね。あとは、「モノラルタイプ」に込めた意味にも通ずるんですけど、お互いインターネット界隈のミュージシャンではありつつも、ライブ自体はフィジカルでやっていくので、これぞ対バン!と思ってもらえるような力のあるライブをしたいですね。

ーー今年を振り返りつつ、来年にむけての目標をお聞きしたいです

アザミ:2023年は、とにかく曲をリリースをすることを重点に置いて、今年はライブをひたすらやることを目標に動いてきました。毎年、今年はこういう年にしようみたいな感じで、コンセプトを作って、動くことが多いので、今年は結果としてライブってしんどいなと実感しつつも、バンドとしての完成度はすごく上がったなと、底上げされたなと思えるような1年だったと思います。来年は、ライブの本数自体を落ち着かせて、スキルフルな仕事をしたいですね。もっと楽曲を詰めて作っていきたいなと。

ーー長瀬さんはどうですか

長瀬:今年は本当にいろんな方と一緒に歌ったり、リリースしたり、ライブにもたくさん呼んでいただいたりして、ライブの難しさやライブの楽しさをこの1年で理解できたと思います。いろんなことが刺激になったので、自分のツアーにも臨めているし、生かせているという状態なので、来年は、今回のアザミさんとの対バンもそうなんですけど、全然違う界隈にいる人と共演するライブだったり、外向きに広げていく活動を積極的にやっていけたらいいなと思っています。客層がアーティストごとにガラッと変わったり混ざったりする光景が素敵で、全然違う趣向の人たちが一緒に集まって、音楽を楽しんでるのがすごくいいってことに気づけたので、来年はそういうイベントに出たり、外へ向けて自分のリリースができるように取り組んで、長瀬有花にしかできないことに挑戦していきたいです。

取材・文=森山ド・ロ 撮影=ヨシハラミズホ

長瀬有花 / アザミ

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