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「ある意味、仁義の関係」ジェイク・ギレンホールが語る!ガイ・リッチーの即興性あふれる戦争アクション『コヴェナント/約束の救出』撮影秘話

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「ある意味、仁義の関係」ジェイク・ギレンホールが語る!ガイ・リッチーの即興性あふれる戦争アクション『コヴェナント/約束の救出』撮影秘話

ジェイク・ギレンホールが『コヴェナント/約束の救出』を語る!

ガイ・リッチー監督が初めて挑んだ戦争映画である『コヴェナント/約束の救出』は、骨太の社会派ドラマだ。2018年のアフガニスタンを舞台に、自分の命を救ってくれたアフガン人通訳を助け出すため、戦地に戻る曹長ジョン・キンリーを演じるのはジェイク・ギレンホール。このたび彼にオンラインでインタビューを行った。画面越しでもとても柔らかい誠実な人柄が伝わる、ジェイクの声をお届けしよう。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「センチメンタリティ(感傷的)ではないけれど、センシティビティ(感受性)はある関係」

―この映画に出演した大きな動機を教えてください。

アフガニスタンとアメリカの関係についての話を語りたいと、以前から思っていました。そしてガイ・リッチーとずっと一緒に仕事をしたい、とも。実はガイとは15年来の知り合いでもあり、さらにそれ以前から彼の映画のファンだったんです。そして、彼がこの作品を僕のところへ持ち込んでくれた。うまく両方やりたいことが、はまったわけです。

ジェイク・ギレンホール、ガイ・リッチー監督 『コヴェナント/約束の救出』メイキング © 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

―主人公のジョン・キンリーはベテラン軍人ですが、多くの戦争映画に出てくるような鬼軍曹ではなく、どこか心に柔らかい部分を残しているような人です。このキャラクター作りは、ジェイクさんのアイデアだったのでしょうか? それともガイ・リッチー監督ですか?

柔らかい部分というのは、自分の中に元々ある資質なのかな、と思いたいところはありますね。ただ軍隊にいる人がみんな、鬼軍曹なわけじゃないんです。軍人といえども、みんな違う人間ですから。気をつけていたのは、決してセンチメンタルにならないこと。作品自体もそうですし、メインのキャラクター2人もそうならないようにしていました。

重要なのは、この2人はセンチメンタリティ(感傷的)ではないけれど、センシティビティ(感受性)はある関係なんです。お互いが助けあう関係、という意味で。そこはガイ・リッチーが意図していたところですし、ガイは演じる人間の資質を見てキャスティングしているので、やっぱり僕の内面を写し取られたのかな、という気はしますね。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「その人が好きでなくても、人間として正しくなすべきことを」

―その上で、ジョンという人物を演じるにあたり、一番意識した部分を教えてください。

ジョンというキャラクターは軍人なので肉体性が重要で、特に戦うときの動き方が正確であるように、ということを意識しました。そこについては、今までも何度か軍人を演じたことがあるので経験値を活かせたかな、とは思っています。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ガイと早い段階で話していたのは、彼らのコミュニケーションの多くは、言葉ではないということ。そして、どう言ったらいいか……(かなり悩む)、この映画のストーリーテリングとしては、ある方向に行かないように抑制し続けることが、成功の鍵でした。つまり、僕が演じるジョンと、通訳のアーメッドは、お互いのことを好きなわけではない。それって最高だなと思いました。その人が好きでなくても、自分が人間として正しくなすべきことっていうのは分かる。そこを忘れないようにしました。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

―「お互いのことを好きじゃなくても助ける」っていうのは、とても良い考えですね。

そうですね(笑)。アメリカの偉大な作詞作曲家、スティーブン・ソンドハイムの歌に、こういう歌詞があります。

「素敵と良いは違う」(Nice is different than good. ※ミュージカル「イントゥ・ザ・ウッズ」の一節)。

これは色んな意味で、とても興味深いコンセプトだと思うんです。試練に対峙した時、人はどうするべきか。ジョンは大変難しい状況に置かれてしまう。ジョンはアーメッドを助け出すまでは、彼自身も自分の人生を生きることができない。それがまるで釣り針のように彼の心に引っかかっている。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

だから、映画の中での「釣り針が引っかかってるんだ」というセリフが僕はとても好きですし、その釣り針が取れるまで、彼はひたすら、ひたすら戦う。そして、この点においてガイ・リッチーが映画監督としても、人としても素晴らしいのだと言えます。矛盾があるし、とても人間的なんです。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「ガイのチームの一員になったばかりだけど、言われたらなんでもやる」

―ガイ・リッチーと初めて仕事でタッグを組んでみて、監督として何が特別なのかということを教えてください。

ガイは、脚本家であり監督です。それが同時進行できるから、映画を撮っていても新しいアイデアを常に考えていて、どんどんそれを活かそうとしますし、僕らに対してもとてもオープンです。毎日、ガイはその日に撮った映像を送ってくれて、それについて2人で話し合って、それが翌日に反映されるというやり方なんです。

ジェイク・ギレンホール、ガイ・リッチー監督 『コヴェナント/約束の救出』メイキング © 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

―撮影ではかなり即興の演出や、アドリブもあったというふうに聞きましたが本当ですか?

即興やアドリブというよりは、Writing in The Moment、と言うべきかな。その場で書いたセリフを渡される、って感じです。特に今回長めのスピーチが2つあるんですが、これは脚本には元々は書かれていなくて、実はその場でガイが書いたセリフなんです。それを渡されて、すぐに覚えて演じなければいけないという状況でした。大変だけれども、僕はこれがとても面白かったし、ガイ・リッチーらしさだと思います。何ヶ月も準備して、っていうやり方もとても好きなんだけれども。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

―なるほど。その場で考えてセリフを渡すというのはアジアの監督に多いですよね。香港のウォン・カーウァイや、ジョニー・トーとかを思い出しました。

そう、このやり方ができるのは、映画言語をとても理解しているフィルムメーカーだからなんです。そして、それを実現できる素晴らしい人材に恵まれているということでもあるんですよね。ガイ・リッチーのチームは長年ほぼ一緒だから、何をしたいのかがすぐわかる。映画のスタイルがわかっていて、どう動けばいいのかもわかっているから、すぐにその場で新しいアイデアを実行できるんです。とても信頼関係がある。僕はまだその一員になったばかりだけど、ガイに言われたらなんでもやりますよ。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「約束をしたならば、それを最後までまっとうしなければならない」

―アーメッド役のダール・サリム(『ゲーム・オブ・スローンズ』ほか)さんと共演した感想を教えてください。日本ではまだ出演作が多く紹介されていないのですが、とても素晴らしい役者さんですね。

ダールはとにかく心が広い。気持ちがオープンで、何より謙虚なんです。そしてものすごい努力家です。そういう方と一緒に仕事をすると、僕も100パーセントで返さなければって思わされる。彼は本当に最高の人間であり、そして一緒に仕事をしていて本当に楽しかったです。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

―映画の最後に、タイトルでもある「コヴェナント(Covenant)」の解釈として3つの言葉が出てきます。絆(a bond)、誓い(a pledge)、約束(a commitment)という解釈です。ジェイクさんは、ジョンとアーメッドの関係において、この3つの中で最も近いのは何だったと思われますか?

(長く悩んで)……約束/コミットメントかな。言葉であっても、そうじゃなくて無言でもいいけれど、約束をしたならば、それを最後までまっとうしなければいけない、ということ。だからある意味で、「仁義」(HONOR)ということなのかなと思います。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

取材・文:石津文子

『コヴェナント/約束の救出』は全国公開中

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