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「自分の信じる100点の味」日本初の背徳スイーツ専門店をたった一人でオープンした女性の後悔しない人生

Sitakke

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「やらない後悔だけはしたくないんです」

やさしくて、どこか芯のある声で話してくれたのは、札幌市北区・篠路にあるクロワッサンオザマンド専門店「necono onaca(ねこのおなか)」のオーナーパティシエ・瑚瑚(ここ)さん。

3人のお子さんを育てながら、店頭に立つ彼女の横顔からは「自分の心に正直でありたい」という信念を感じます。

離婚、再婚、出産、そしてコロナ禍。
さまざまなライフステージのなかで瑚瑚さんが見つけた答えは、「自分が信じる100点の味を作ること」でした。

今回は、ひとりの女性が小さな専門店を営むことになったきっかけと、「後悔しない人生」をどのように歩み、これからを生きていくのかをお届けします。

連載|「私のきっかけ」

夢をつかんだ「きっかけ」、人生の決断をした「きっかけ」、そしてそんな「きっかけ」をつかむために大切にしてきたこと…。

連載|「私のきっかけ」が北海道で働くさまざまな人のインタビューを通じて、あなたの「明日へのきっかけ」のヒントをお届けします。

「自分の思うおいしいを表現したい」

札幌市北区篠路。決してアクセスが良いとは言えないこの場所に、クロワッサンオザマンド専門店「ねこのおなか」はあります。

クロワッサンオザマンドとは、ラム酒やシロップに浸したクロワッサンに、アーモンドクリームなどをのせて焼き上げたスイーツ!
サクサクの食感の生地に、まるでフィナンシェのようなしっとり感が重なり合って、その味わいは幸せなごほうびのよう…!

「クロワッサン専門店は増えていますが、『ザマンド専門店』をうたっているのはおそらく全国でここしかないと思います」と瑚瑚さんはにっこり。

店頭に常時並ぶのは15〜16種類ほど。
定番のザマンドのほかに、季節の果物を使ったフルーツセゾンに、ハニーバター、チーズや生ハムを合わせた惣菜系まで!
これまでに生み出した商品数は、なんと70種以上。
トッピング内容によって、生地の水分量や大きさを調整するというこだわりぶりです。

「ぜんぶ、その子がいちばんおいしくなるカタチで作りたいんです」と語る瑚瑚さん。

そのなかでも、看板商品が店名にもなっているのが「ねこのおなか」。

注文を受けてから、大きめのクロワッサンに、純生クリームをベースにしたディプロマットクリームを入れ、表面をキャラメリゼして仕上げます。

「賞味期限30分」。

サクサクの生地にキャラメリゼした香ばしい香り、バニラとラムがふわっと香るとろっとろのクリーム…その一瞬のおいしさのために、手間を惜しまない姿勢がとても印象的でした。

「ちなみにおいしい分、カロリーも高いです笑!それでもペロリと食べていかれる方が多いですよ」

どうせなら好きなことを

瑚瑚さんがお菓子作りを始めたのは27歳のころでした。

それまではまったく別の仕事をしていて、料理やお菓子づくりは趣味程度だったといいます。
転機になったのは、結婚して子どもが生まれたことでした。

「経済的に安定している状態だったからこそ、収入より自分が本当にやってみたいことを優先できたんです」

どうせ働くなら、好きなことがしたい。

その思いでケーキ店の門をたたき、アルバイトからスタートしました。

仕事にやりがいを感じていた一方で、ケーキ店では『誰が食べても平均的においしい味』が求められました。

でも、瑚瑚さんの胸の奥では、ずっと違和感がくすぶっていたそう。

「平均点じゃなくて、自分が『これだ』と思える100点を作りたかったんですよ」

さらに、毎日どうしても出てしまうケーキの「廃棄」にも、慣れることができなかったといいます。

そのころには離婚を経験し、再婚して3人目の子どもにも恵まれていました。
一方で時はコロナ禍…。思うように働けなくなるもどかしさも感じていました。

「保育園は『できるだけ自宅で面倒をみて』という形で。少し咳をしているだけでも預けられなくて…」

職場に頭を下げながら、休むことも増えました。

「しかたないって周りは言ってくれるけれど、迷惑をかけてしまっている気がして、申し訳なさともどかしさでいっぱいでした」

そのときにふと考えたといいます。

「自分でやっていたら…」

責任も全部自分で、何かがあったときにお客様に向き合って、ときには「ごめんなさい」と直接伝えるのも自分。

季節にピッタリの焼き菓子も、すべて瑚瑚さんの手作り

「自分のお店だったら、もっと自由に、思ったようにできるのに」

夫も、子どもたちも、「ママならできるよ」と背中を押してくれました。

家族が増えたことで生まれた責任感と、自分の好きなことをあきらめたくない思い。
その両方が原動力になり、お店をつくる未来が動き始めたのです。


働くことと暮らすこと、両方をイメージしたこの場所

お店をつくると決めたとき、最初に取り組んだのが物件探しでした。

金銭面はもちろんのことですが、家族との暮らしと、大好きなおいしいものと向き合う仕事。
どちらも大切だからこそ、理想と現実のバランスに悩む日々が続きました。

「子育てと仕事を無理なく両立するためには、自宅と店舗は隣接させたい。できれば大きな道路から少し入った角地がいい…と自分の生活のイメージを大切に絞っていってたどり着いたのがこの場所でした」

札幌市北区・篠路の今の店舗は、公共交通機関からは少し離れているものの、石狩街道から一本入った場所にあり、まさに条件通り。

「ここならできる」と感じたのだそう。

「necono onaca」につまった願い

印象的な店名の「ねこのおなか」。たくさんの願いが込められています。

「ねこのおなかって、見ているだけで幸せになれるんですよね。そんな癒しのお店になったらいいなって思ったんです」

現在も7匹の保護ネコと暮らしている瑚瑚さんらしい、愛情あふれる店名。

さらに看板のイラストも特別です。

漫画作品『くるねこ』(KADOKAWA・全20巻)の作者・くるねこ大和さんによる描き下ろし!
もともと作品の大ファンだった瑚瑚さんが思いきってメッセージを送ると、なんと快く引き受けてくれたのだとか。
看板がきっかけで、全国から訪れるファンもいるというから驚きです。

ちなみに商品にも「ねこのおなか」がありますが、お店の名前を決めてから連想して作り上げたのだそうですよ。


この場所で、新しい店をやる「勝算」を考えた

「necono onaca」Instagram

「無名な私が、アクセスがいいとは言えない場所で新店をやるので集客については考えました」

そう話す瑚瑚さんが始めたのがSNS。実は最初は決して得意ではなかったのだそうです。

店の工事中からすでにアカウントを作り、毎日試作品を投稿していきました。
すると、投稿を見たインフルエンサーがお店の情報を紹介してくれたのです。

オープン日を迎えた日…店の外にはなんと行列が!

「信じられなくて、涙が出そうでした」

きっかけはささいなことだったかもしれません。そして、インフルエンサーの目に止まったことは「運がよかった」のかも…。
だけど、好きなことを成功させるために動き続ける瑚瑚さんの「勝算」がこの未来を引き寄せたようにも感じます。

きょう作りたいものを、残さず

フルーツも、そのときの仕入れと気分で!メニューが変わるからいつ行っても楽しい!

「necono onaca」では、毎日の販売数をあえて決めていません。

「今日つくりたいものをつくる」スタイルも瑚瑚さんらしさなのです。
ケーキ店で働いていたときの経験から、「決して廃棄を出さずに売り切って営業を終える」ことも大事にしているこだわりです。

自分のできる範囲で、丁寧にひとつひとつと向き合って「また食べたくなるおいしいスイーツづくり」を目指していると言います。


起床時間は午前1時…!それでも

「好きだから、楽しく続けられる」

そう話す瑚瑚さんの1日はまさに超多忙!
起床時間は、なんと夜中の1時…!

朝までお店の仕込みをしたあと、3人の子どもたちの支度。それが終わるとお店を開店。
売り切れ次第お店を閉めると、翌日の仕込みと買い出しへ。

子どもたちのお迎えをし、夕食を家族で囲んで、SNSの投稿を済ませながら22時ごろに眠りにつきます。

「家族の支えがなかったら、とても続けられないと思います」

そう語る表情は、忙しさを感じないほど清々しいものでした。

そこには、「無理をしているのではなく、好きなことを楽しんでいる」姿が伺えます。

「支え」になっているのは家族だけじゃなく…

そしてお店にくるお客さんとの出会いも、いつも大切にしているといいます。

「距離がとても近いんですよ。恋愛相談や子育ての話、記念日の贈り物選びをしたり」

恋人同士だった2人が結婚して、赤ちゃんが生まれ、そんなライフステージの変化の中で、お店を訪れてくれることも、瑚瑚さんの楽しみと支えになっています。


やりたいことがあるって、ラッキー

「人生って、本当に限られた時間しかないんですよね。だから、思い浮かんだことはまずやってみたほうがいいと思うんです」

今の自分の立場や環境は、ときに私たちの背中を押してくれることもあれば、反対に「できない理由」になってしまうこともあります。

仕事や育児、人間関係…考えすぎて「今は無理かもしれない」と思ってしまう状況に心当たりがある人は決して少なくないはず。

でも瑚瑚さんは、「やってみたら、意外とできるんですよ。できないかもしれないと悩んでいる時間のほうが、じつはもったいないんだと思います」と続けます。

その瑚瑚さんの前を向く力も、かつての後悔からきているといいます。

「若いころ、いつでも会えると思っていた人に急に会えなくなって…。いつか会えるなんて思い浮かんでも後回しにしていた、その後悔がずっと心に残っているんです」

だからこそ「楽しそうだなと思ったらすぐ動く」と笑う瑚瑚さん。

「先延ばしにすると、チャンスを逃す気がするんですよね」

そしてもうひとつ、印象的な言葉がありました。

「やりたいことがあるって、それだけでラッキー。それを思いつける自分って、すごいんですよ。発想できるという時点で、もう一歩踏み出せているんですから」

たくさんのことを経験してきた彼女の言葉はとても力強くて、背中を押してくれるものでした。

家庭では、3人の子どもたちに「自分で考えて行動しなさい」「自立した大人になりなさい」といつも伝えているそうです。
それは、瑚瑚さん自身が人生で学び続けてきた本質のようにも聞こえます。

あなたの毎日の暮らしのなかで「やってみたい」が生まれたとき、その思いにいいわけせずに受け入れてみること。
その積み重ねが、いつか自分だけの「100点の未来」につながるのかもしれませんね。

【店舗名】クロワッサンオザマンド専門店 「necono onaca(ねこのおなか)」
【住所】札幌市北区篠路8条2丁目1-1
【営業時間】午前10時〜完売次第終了
【定休日】定休日は、Instagramにてお知らせしています
【公式Instagram】https://www.instagram.com/necono_onaca/

文:柏崎直人
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は取材時(2025年11月)の情報に基づきます。

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