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三つ巴の戦いから見える乙骨の本質――TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第18回:乙骨憂太役・緒方恵美さん

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」が、2026年3月26日(木)に最終回を迎えました 。

放送にあわせ、アニメイトタイムズでは連載インタビューを実施。最終回となる第18 回は乙骨憂太を演じる緒方恵美さんの登場です。

「死滅回游 前編」を振り返りながら、乙骨というキャラクターの本質、そして石流や烏鷺との戦いの中で見えてきたものについて語っていただきました。

さらに乙骨の「誰かのために動く」という生き方や、緒方さん自身の経験と重なる部分についても。「死滅回游 前編」のラストを彩る死闘を、緒方さんの言葉から紐解いていきます。

【写真】『呪術廻戦』第3期 緒方恵美、三つ巴の戦いに垣間見る“乙骨の本質”【インタビュー】

「死滅回游」を振り返って

ーーついに第3期も最終回を迎えました。

乙骨憂太役・緒方恵美さん(以下、緒方):前提として、私は、最初と最後しか出演していないんですよね。だから放送前のインタビューでは「(虎杖を)殺しに来ました」としか言えなくて(笑)。第3期ティザービジュアルも怖い顔で乙骨が描かれていたんですけど、アニメが始まってしまえばいつもの彼でした。私としても、ほっとしています。

乙骨の変化についても、聞かれることはあったんですけど、中身は変わっていないと思います。ただ『劇場版 呪術廻戦 0』から、経験値が加わって人としての深みは増している。しかも、ただの1年ではなくて、普通の人間の10年、20年レベルのことを経験しました。今までの彼にそういった時間が積み重なっているだけであって、本質は変わっていないと思っています。

ーー今回の乙骨の戦闘では、五条先生への気持ちや「死滅回游」に対する覚悟が描かれて、目的が定まったようにも思います。

緒方:肉体的にも精神的にも鍛錬をしたものが上乗せされているので、成長はありますよね。シンプルに技術であったり、人間的なレベルが1つ上がったような状態ではあると思います。

やることが定まったというか、乙骨はずっと「皆のために動く人」ですよね。「死滅回游」の言動も彼らしい感じで、全く変わっていない。「誰かにやらせるよりは、僕がやる」という思いは『劇場版 呪術廻戦 0』の時にもありましたから。

ーー乙骨は今回、ドルゥヴ・ラクダワラや黒沐死、石流 龍、烏鷺亨子と対峙します。バトルロイヤルの要素がある「死滅回游」らしい展開になりました。原作や台本を読んだご感想はいかがでしたか?

緒方:原作を読んだ時点では、「死滅回游」のことがよく分かっていなくて。大まかなルールや、結界(コロニー)のことを大雑把に理解している状態でした。ただ、「大変なバトルが繰り返されているな」「乙骨、ゴキブリ(黒沐死)とキスするのか……」みたいなところを気にしていましたね(笑)。

緒方:凄いことが行われているのは分かっていても、自分の中の腹落ち感はなかったんです。でも収録に参加させていただいて、榊󠄀原良子さん演じる天元がわかりやすく説明してくださった。榊󠄀原さんの声でようやく納得できました。

あとは、アニメの映像ですね。私が出演していない話数を見ていても、本当にクリエイターチームの皆さんのお仕事が素晴らしいと思います。50話では「死滅回游」を説明するエピソードもありましたけど、どんなパワーポイントでプレゼンされるより分かりやすい。しかも、映像としてもすごく面白い演出で引き込まれました。

『呪術』らしさを極限まで引き出すために

ーー続いて、今回戦ったキャラクターたちの印象や魅力をお聞かせください。

緒方:もちろん魅力的なキャラクターだとは思いますが、正直に言うと収録に必死すぎて、そういうことを考えている余裕がなかったんです。「収録をなんとかしなければいけない」という方向に気持ちが向いていて。

ーーそうだったんですね。

緒方:この話数は、脚本の段階までは2話に分けて放送されるプランニングだったようなんです。ただ台本は1冊だったので、スタッフの皆さんに理由を尋ねました。すると、いままでの映像を見ても分かると思いますが、クオリティは半端ないですし、原作の持つ戦闘のスピード感や勢いを大切にアニメで描いている。

そのような作品らしさを損なわないように映像づくりを追求していく中で、絵コンテの段階で「仙台結界」は1.5話数分くらいでまとめるのがベストなのではないか議論になったと聞いています。

監督を含めたクリエイターの皆さん、製作委員会の皆さんが、吟味して話し合いを重ねた上で1.5話という決断をしたんだと。それって本当に凄いことだと思うんです。そこに関わる全ての皆さんにご説明して理解を得ないとできないという普通の作品ではできないことですから。より良いものを求めるためにみんなで話し合い一丸となって動ける熱量がこの作品の底力だと改めて感じました。

緒方:ただ、そういうこともあり、最終的な台本の制作がタイトになり、私の手元に届くのも遅れてしまいました。修正も多く、それを自分の台本に写すのが、とても間に合わなくて殴り書きになってしまったことで自分の字が読めなくなり、声優人生で初めて「すみません、ちょっと今日はダメかも知れないです」と謝りました。

私が声優として大事にしているのは、セリフを喋っている時間よりも、セリフを喋りだす直前の気持ち。何が起き、どう心が動くかが全てで、画が完成していない状態ではト書き(間の説明)が頼り。ですが、全ト書きを読めない状態にしてしまったために瞬間、心が止まってしまう状態になってしまい……。結果的に、もう一度ひとりで録り直しをする機会を頂け、丁寧に修正を写し直す時間がうまれ、落ち着いて乙骨を演じることができました。ご調整いただけて本当にありがたかったし、その裁量ができる現場の熱に、改めてこのチームにいられる幸せを感じました。

「なんで自分なんかのために必死になるんですか?」

ーー乙骨がそれぞれのキャラクターと邂逅したシーンについて、お聞かせください。特に烏鷺との掛け合いは印象的でした。

緒方:わざと怒らせてる? と聞かれますが、そんな器用な子ではないです……(笑)。前回もお話ししましたが「自分のためだけに生きるのはきっといつか限界がくる」と本心で思っていると思うので。

ーー対して烏鷺は「何者かになる」ということにこだわっています。

緒方:そうですね。例えば俳優になりたいと思う人、声優になりたいと言う人がいるとします。最初の段階だと、良い役をやれる人になりたいとか、レギュラーが欲しい、できたら主役が欲しい。有名になりたいって思いがち。自分もそうでしたけど。

私の場合は、声優を始めてからの最初の5年が地獄のような5年だったんですが(笑)、その5年ですべて叶ってしまった。その時に、「この先どうしたらいいんだ」と考えてしまいました。自分のためだけに頑張ることの限界が来てしまったんです。もう誰かのためじゃないと続けられないと思ってしまった。

ーー辛いから、誰かのためというモチベーションがないととても続けられないと。

緒方:ちょうど都合よく実家の問題が起きて、誰かのために続けられたのですが(笑)。今は「楽しんでくれるお客さんのために」続けられています。

なんかそれっぽく聞こえちゃうかもしれないんですけど、本心からそう思っているんです。媚びるということじゃなく、誠実に作ったステージや作品で笑顔がみたい。お客さんが喜んでくれるものを作れば、関係者みんなで喜べる結果になるに決まってますし!(笑)

「"自分なんか”のために……」的な自己評価が低いところは、乙骨と似てるかもしれません。でも、誰かのために頑張る、そうすることで自分も生かしていただいていると思う。そういうところも、彼とはすごくシンクロしてると思います。

ーー乙骨も生きている価値がない、みたいなところから始まっています。

緒方:そうですね。でも、烏鷺が言うことだって理解できる。新人の頃の私もそうでした。やっぱり若かったり、自分が認められなかったり、「何者にもなっていない」時には、卑屈になったり、誰かのせいにしがちですから。私は時間をかけて、そこではないところに行ったけれど、乙骨はもっと短いスパンで、たった1年でそれがわかってしまった。生きていたって仕方ないと引きこもっていたところから、友達や周りの仲間のために動き続けて、今の乙骨になった。

だから、烏鷺のように「自分が〜」と話している人に対する質問として、「なぜそういう考え方をするの?」と聞くのは自然なことで……特に彼は私のような「自分のため」という時間を経由していないから、そういう欲望が全面に出てしまう気持ちは理解できないのかもしれないなと。

石流を満腹にした乙骨

ーー石流も烏鷺とは違いますが、「満たされなさ」を持って現代へとやってきました。

緒方:演出も凄く面白かったです。戦っている最中にキャラクターとデザートが交互に映るみたいな。完成した映像をまだ観てないですが、すっごい美味しそうなデザートが写っていると思います(笑)。

彼も烏鷺と似てますが彼女よりは経験値のある人ですからーーまた私に引き込んじゃいますけど、ものづくりをする人って、自分がやったことにたいして100パーセント満足って、あまりしないですよね。

緒方:だからこそ、反省するし完璧にやりたいと思って、前に進んでいくのかなと。私は音楽もやっていますけど、完璧なステージをやれることなんかなくて。ライブ中にどこかで歌詞間違えたとか。でもちょっと間違えたとか、ちょっとずれたりしたのを戻したり色々する過程の中で、今までなかった音の重なりとか、面白いグルーヴになることもある。生楽器と一緒にやっているからこそ、そこで初めて生まれるフェイク(歌唱の表現方法)とかもあるし。

その中で「あー、ツアーがあと1ヶ所あったらもっとうまくやれたカモなのに」と思うこともなくはない。デザートが欲しいみたいな(笑)。でも、今の自分は、「今日は今日のパフォーマンスであって、今日はこれでよし!」と笑って終われるんですよ。

でも、新人の頃はそういうデザートを求める石流の気持ちに共感してたかもって。烏鷺もですが、パーフェクトを求めてしまう飢えた気持ち。だから私自身は理解できるんですが、乙骨はそうじゃないので。だから「どうしてそんなこと思うの?」って言うわけで。見方によっては嫌なやつですよね(笑)。

ーー(笑)。そういう乙骨がふたりの求めた姿というか。何者かであり、腹を満たしてくれる存在であるというのも面白い構造です。

緒方:でも、きっとそういうものですよね。もはや細かいことは覚えていませんが、私もその折々に、自分にないものを持つ人や、作品や音楽に触れ、解放されてきましたから。乙骨が石流や烏鷺に影響を与えたかどうかはわからないけど、一緒に戦うことで何かを思ってくれたのかなという気はします。私なんかより、奈々ちゃんや東地さんに聞いていただけたらその辺はありがたいのですが(笑)。

ーー水樹さんも東地さんも、一丸となった凄く良い現場だったとおっしゃっていました。

緒方:東地さん物凄く幸せそうに見えました!(笑) とっても楽しそうだった。「グラニテブラスト」を何回言ったんでしょうか(笑)。いろんなバリエーションを聞けて私も満腹、幸せでした(笑)。

ーー最後に、最終回までご覧になった視聴者の方にメッセージをお願いします。

緒方:どんな風に仕上がったのか、まだ観てないのでわからないんですけど、この素晴らしいメンバーが集まったチームで生み出すもの。絶対に面白かったと思いますが、皆さんいかがでしたでしょうか。前編と言うからには後編もあるでしょうから。お互いに楽しみにしていられたらなと思います。ありがとうございました。

[文/タイラ]

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