【2025年義務化】介護施設の熱中症対策とは?対象条件・3つの義務・罰則まで社労士が解説
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本日のお悩み:介護施設における熱中症対策の義務化について
2025年から施行された介護施設における熱中症対策の義務化について、詳しく教えてください。
はじめに:なぜ今、介護業界で熱中症対策が重要視されているのか
執筆者/専門家
山本 武尊
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/23
近年、日本の夏は、「異常気象」という言葉では片付けられないほどの厳しい暑さが日常化しています。そうした中、2025(令和7)年6月1日より「改正労働安全衛生規則」が施行され、一定の条件に該当する作業における熱中症対策が、事業者に求められる法令上の対応となりました。
参考:職場における熱中症対策の強化について|厚生労働省
■今こそ見直したい介護現場の熱中症リスク
「屋内で空調があるため安心」「訪問介護は暑さを前提にしている」といった認識のまま十分な点検や対応を行わない場合、状況によっては法令上必要な対応が不十分となる可能性があります。また、職員の体調不良や事故につながるおそれもあります。また、最悪の場合、職員の命を危険にさらすことにもなりかねません。
本稿では「熱中症対策の義務化」について取り上げ、介護現場特有のリスクを踏まえながら、施設管理者および職員の方がいますぐ取り組むべき具体策を解説します。
なぜ「義務化」されたのか? 介護業界が抱える潜在的リスク
これまでも、厚生労働省はガイドラインなどを通じて熱中症予防を呼びかけてきましたが、労働災害としての熱中症死傷者数は依然として高止まりしており、特に初期対応の遅れによる重篤化が問題視されていました。
介護業界においては、利用者の体調管理(エアコンの風をいやがるため温度設定を高めにするなど)が優先されるあまり、「支援する側の職員が熱中症にかかる」というケースが相次いでいます。そして、職員が倒れてしまえば、当然ながら利用者の安全も守れなくなります。
こうした状況を踏まえると、「利用者の命を守るためには、まず職員の命と健康を守らなければならない」という大原則を法的観点から補強したものが、今回の法改正だと言えるでしょう。
義務化の対象となる「作業条件」とは?
今回の改正では、すべての作業が無条件で対象となるわけではありません。以下の環境条件と時間条件をすべて満たす場合、「熱中症を生ずるおそれのある作業」として法的義務の対象となります。
法的義務の対象となる環境条件と時間条件
・環境条件:
暑さ指数(WBGT)が28度以上、または気温が31度以上の環境下での作業
・時間条件:
継続して1時間以上、または1日当たり合計4時間を超える作業
介護現場における具体的な危険シーン(例)
・入浴介助:
浴室は高温多湿であり、WBGTが28度を超えやすい環境です。そのため、連続して複数人の介助を行う場合は、義務化の対象となります。
・訪問介護(移動・サービス提供):
炎天下での自転車移動や、エアコンを使用したがらない利用者宅での身体介護・生活援助。
・送迎業務:
炎天下で車内温度が上昇した状態での移動や、屋外での乗降介助。
これらに該当する業務が日常的に発生する介護事業所は、速やかに後述する「3つの義務」を果たさなければなりません。
事業者に課せられた「3つの義務」と実践する際のポイント
法令では、熱中症の重篤化を防ぐために、以下の3点を事業場ごとに定め、徹底することが求められています。
1.早期発見のための体制整備(報告体制の確立)
職員が「少し体調がおかしい」「いっしょに働いている〇〇さんの様子がおかしい」と感じた際、誰に・どうやって報告するのかを明確にする義務です。
<実践ポイント>
「まずは管理者に直接言う」「不在時はサ責(サービス提供責任者)やリーダーに連絡する」といったフローを図式化することが重要です。介護職は責任感が強く「これくらいで休んだら同僚や利用者に迷惑がかかる」と無理をしやすい傾向があります。「我慢は美徳ではなくリスクである」とトップが明言し、体調不良を申告しやすい心理的安全性のある職場環境を作ることが、安全管理の第一歩となるでしょう。
2.重篤化を防ぐための実施手順の作成
熱中症の疑いが生じたときに、現場が混乱せずに対応できるよう、具体的なアクションプランをあらかじめ定めておく義務です。
・作業からの離脱:
どのタイミングで業務から外すか、他の職員へどう引き継ぐか。
・身体の冷却:
どこで休ませるか(エアコンの効いた休憩室など)、何を使ってどう冷やすか(保冷剤で首・わきの下・鼠径部を冷やすなど)。
・緊急連絡・医療処置:
救急車を呼ぶ基準(意識障害がある、自力で水分摂取できないなど)や緊急搬送先リストの整備。
3.関係作業者への周知徹底
上記1と2で決めたルールを、全職員(パート・アルバイト・派遣社員を含む)に周知する義務です。
<実践ポイント>
マニュアルを配って「読んでおいて」で終わらせるのではなく、スタッフルームへのポスター掲示、朝礼での定期的な声かけ、年1回以上、実技を交えた研修などを実施することが重要です。労働基準監督署の調査が入ったときは、単に「書類があるか」だけでなく、「現場の職員がルールを理解し実行できる状態か」が問われます。
サービス形態別・すぐに使える具体的な熱中症対策
介護現場の実情に合わせた具体的な対策を、施設系と訪問系に分けて整理しました。
管理者が知っておくべき労務リスクと法的責任
「人手不足のため、多忙のため対策ルールを策定する時間が確保できない」は法的に通用しません。もし対策を怠った結果、職員が熱中症で倒れて重篤な後遺症が残った場合は、労働安全衛生法違反(6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われる可能性があります。更に、安全配慮義務違反として、事業者に対し多額の損害賠償請求(民事訴訟)が行われるリスクも否定できません。
2025年からの義務化は、「一定の対応が求められる」という国からの強いメッセージです。熱中症対策にかかる備品代や労働時間の調整コストは、「費用」ではなく事業存続に不可欠な「投資」と捉えてください。
職員を守ることが、利用者の安心と生活の質を支える
介護事業においては、「人」が重要な資産となります。だからこそ、「職員が真夏の環境下でも、安心して健康に働ける環境の整備」は、質の高い介護サービスを継続的に提供するうえで重要な条件です。
本格的な暑さが到来する前に、事業所の「熱中症予防マニュアル」と「緊急連絡体制」を見直し、具体策を全職員で共有することで、無事故で夏季を迎えられるよう取り組みましょう。
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