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【風、薫る】生まれの呪縛に苦しむ2人のヒロイン。彼女たちの武器「学問」が力を発揮していない理由

毎日が発見ネット

【風、薫る】生まれの呪縛に苦しむ2人のヒロイン。彼女たちの武器「学問」が力を発揮していない理由

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今回は「『学問』という武器」について。あなたはどのように観ましたか?



※本記事にはネタバレが含まれています。



田中ひかる著『明治のナイチンゲール大関和物語』(中央公論新社)を原案とするオリジナル作品で、見上愛、上坂樹里がW主人公を務めるNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第2週「灯(ともしび)の道」が放送された。



まだ出会っていない二人、一ノ瀬りん(見上)と大家直美(上坂)の人生を並行して描くだけに、第1週に続き、今週も展開は超スピーディ。



父・信右衛門(北村一輝)が亡くなり、暮らしが厳しくなったりん(見上愛)は、運送業で財を成す18歳上の奥田亀吉(三浦貴大)に嫁ぐ。"元家老の娘"を嫁にすると家に箔がつくというのが亀吉と義母・貞(根岸季衣)の目論見だが、家の格への劣等感からスタートした夫婦関係は最初から破綻している。



酒癖の悪い亀吉は、りんにお酒を控えてほしいと言われ、面白くない。りんが出産しても関心を示さず、りんに名前の相談をされても「おめえの好きにすればいいべ」。娘・環(宮島るか)が成長すると、女学校に行かせたいとりんは懇願するが、女に学はいらない、早く嫁にやるから必要ないと却下。酔っぱらって寝ている環にからもうとし、りんに止められると、「俺をなめやがって!」と大暴れ。モノを投げつけ、それが行燈にあたり、出火。亀吉は逃げ、呆然とするりんは環を抱いて必死に逃げ出す。



りんが一ノ瀬家に逃げ込み、母・美津(水野美紀)に謝罪、「やめます。私、奥様、やめる!」と言うと、美津はりんに金を渡して言う。
「負け戦を長引かせてはなりません」



美津がりんに東京の信勝(斉藤陽一郎)の家に逃げるよう促したとき、戸を叩く音が。りんの嫁ぎ先の火事を心配して一ノ瀬家を訪れた幼馴染・虎太郎(小林虎之介)だった。りんと環は虎太郎が引く荷車に身を隠し、船着き場に到着。環を抱え、りんの手をとって船に乗せ、船頭にりんのことを丁重に頼み、大きく手を振り、「りん、俺......俺......」。りんを自分にとっての"お姫様"と言い、あくまで自分の気持ちは伝えず、献身的に尽くす虎太郎の深い愛情と健気な思い、互いに思い合いながらも結ばれない二人がもどかしい。



一方、直美はマッチ工場で1日働いてマッチ1箱分の給金を得るだけという日々を過ごしていた。



ある日、工場長から本を盗んだ疑いをかけられ、その本に紙幣がはさんであったことから、クビを宣告される。直美はそれが幼子をおぶって働く同僚のやったことだと気づくが、罪をかぶって辞めることに。



そこから新たな仕事を探すが、生い立ちが障壁となり、仕事は見つからない。英語力も仕事に直結しない時代、器量の良さも「誰かのお妾さんにおさまるか、女郎に」と言われるばかり。生まれや家柄で人生が決まる時代に、身寄りのない直美には結婚話がなく、結婚しないと生きていけないという、人生が最初から"詰んでる"状態だ。



そんな直美の唯一の希望は、この国を出ること。直美は宣教師のメアリー(アニャ・フロリス)にいつかアメリカに連れて行ってほしいと懇願し、英語の勉強を続けながら別のマッチ工場で働き、お金を貯める。だが、メアリーは伝道のため、突然インドに行くことになってしまう。



インドでもついていくと言う直美に、しかしメアリーはやりたいこと・やれることがなければ異国で生きていくのは難しい、それが伝道師としての自分の人生だと言い、こう問いかける。


「直美は逃げることだけ? そこで何をしますか?」



東京に逃げてきたりんもまた、なんとか信勝の家にたどり着くが、信勝の店はつぶれており、家も明け渡すと聞き、家も仕事も自力で探さなければならなくなる。



途方に暮れたりんと直美が街を歩くとき、二人を結び付ける「風」が吹く。環が手にしていた風車が風で飛ばされ、それを拾ったのが直美だったのだ。



環が直美の持つパンに手を伸ばしたのを見て、直美はりんと環に教会の炊き出しを教える。しかし、りんは施しを受けることを躊躇すると、直美は「くっだらない。見栄張って。あんた士族でしょ?(中略) あんた、母親でしょ。恥ずかしくないの?」と問う。そこで、りんは自分の不甲斐なさを嘆くのだった。



りんは直美に環を預け、仕事探しに行くが、働き口は見つからず、落胆してベンチに座っていると、隣に紳士(坂東彌十郎)が座り、チョコレートを差し出す。助けが必要なら力になると言う卯三郎に、りんは明日までに嫁ぎ先を見つけてくれと言うと、卯三郎は魔法で外国に連れて行ってあげようかとおどける。



そこで、りんは笑ってこう答える。
「だったらこの国を女が、ううん男も、双六の目から外れた人も生きていけるように変えてください」



卯三郎は、それを「社会」「ソサエティを試行錯誤して何とか日本語に変えた言葉」と言い、こう示す。


「女のすごろくの上りが奥様だけではない、女も男も、強い人も弱い人もいて、社会」



そして、「瑞穂屋 清水卯三郎」という名刺を渡し、明日訪ねてくるよう言い、去るのだった。



後のバディとなる二人の出会いが描かれた第2週、その出会いは決して甘いものではなかった。



しかも、現時点で住む家も仕事もない二人には、共通点として"学"がある。元士族のりんは父に論語など様々な学問を習ってきたし、直美は教会を転々として暮らす中で英語を学んできた。しかし、りんの父・信右衛門の言葉「学問を怠っては飛んでいけぬ。学ぶことはときに世を渡る翼となり、身を守る刀になる」は、現時点ではむしろ生きづらさ、足枷になっている。



りんにとって「学」は夫のコンプレックスを刺激し、義母にも「面倒」「可愛げがない」と言われる要因になっていて、一方の直美の英語も、相手にぶつけたい怒りを覆い隠す手段になっているだけ。



思えば"クズ夫"に見える亀吉もまた、学のないコンプレックスから自暴自棄になり、妻に八つ当たりしているが、それもやはり生まれや家柄による部分が大きい。



りんも直美も、亀吉や貞もまた、言ってみれば生まれ・家柄の犠牲者であり、その呪縛から解き放たれるための翼となり、武器となるのが、「学問」なのだ。しかし、この時点ではまだそれは十分に力を発揮していない。その理由は「社会」がまだ未成熟だからだ。



本作において非常に重要な意味を持つ言葉「社会」は、りんと直美のバディの成長・絆とは別に、縦軸を走るもう一つの主役とも言える。そう思うと、これから「社会」がいかに根付き、育っていくか、その過程を見守るのも、本作の楽しみの一つと言えるだろう。


文/田幸和歌子

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